大親友
この大学に再入学してから今日は7回目の登校。
女子大学生というものにようやく慣れてきた。
僕のクラスではほとんどが女性で男子は肩の狭い思いをしている。
僕はこのクラスで性転換して入って良かったと思う。
女子が沢山いるしその女子と気軽に話が出来るから。
さて、次の授業は英語。
僕が数学科の時に取った科目でもある。
転科と言うことで僕はこの授業を受けなくてもいい。
だから僕はその時間、ぶらぶらしようと思った。
僕はこの大学が初めてではない。
元々は理学部数学科に所属していた。
そして現在は文学部国文学科に所属している。
文学部のキャンパスは初めてなのだ。
だから1人で探索しようと思っている。
後輩のてんりは英語の授業に出ているから。
ちなみに大学の授業は専門科目と一般科目に分かれている。
1,2年生のうちは一般科目が過半数を占め3年生になってから専門分野にどっぷり浸かるシステムになっている。
僕は理学部で一般科目をある程度履修しているのでここでは免除されていると言うことになる。
もちろん、英語は一般科目。
僕の専門は日本の現代文学や古典文学、はたまた漢文を勉強すること。
去年一年間、余分な勉強をしてきたおかげで余計な単位を取らなくて済む。
その分、専門分野を勉強できる。
とは言ってもそうなると授業が歯抜け状態。
その空いた時間を図書館などに行き有効に使うつもりだ。
でも、今は探検。
しばらく歩いていると会いたくない人物に出会った。
「あれ、ようなじゃない。
こんなところで何をしているの?」
声を掛けてきたのは妹の親友でもあるあきなだ。
いや、大親友と言うべきか。
僕はこの人が苦手だ。
悪い人ではない。
なんとなく苦手なのだ。
ていうか彼女は法学部のはず。
こっちこそ何で文学部のキャンパスにいるのかと聞きたいぐらいだ。
「ねぇ、ような。
無視しないでよ!!」
今度は僕の肩を掴んできた。
僕は小さい声で
「人違いです」
と言った。
彼女は
「何冗談を言っているの。
姿形、それに声にしたってようなそのものじゃない。
そういえば今日は大学休むって話だったけどちゃんと来ているじゃない。
きているんだったら少しぐらい顔を見せないさいよ」
どうやら彼女は僕を妹と勘違いしているみたいだ。
彼女は
「そういえば高校を卒業する時に「入れ替わり症」だって告白されたけれど今の状況と関係あるのかしら」
僕はドキッとし落ち着いた場所で話すことを提案した。
とりあえず僕たちは食堂に行き何を頼むでもなく席に座った。
そして僕は話を切り出した。
「今、僕は妹のようなではないんだ」
「そういえばようなには双子の兄妹がいるって行ってたけどたしか男の子だって聞いた覚えが」
「それが僕なんだよ。
一卵性だから顔も似ているんだけど」
「ていうことはあの有名な男の子でありながら女装をして生活をしている男の娘なの?」
「そういう訳でもないんだ。
詳しく話すと長くなるけど」
と僕はさらに長くなる話の導入を始めた。
「まず、入れ替わり症の話をするね。
これは生まれつきのものなんだ。
一卵性のしかも男女の双子に稀に起こる現象でね。
でも全ての一卵性の男女の双子に起きる訳ではないんだ。
その中でもごく少数の双子に起きることなんだけど。
1日おきにえ〜と、簡単に言うと魂が入れ替わるって言うか何て言うか。
口で説明するのは難しいんだけど元の体と妹の体を規則的に行き来するんだ。
だから明日は元の体で男子学生として理学部に通うことになるんだけど。
妹も僕と同じ生活をしている。
僕が女の時は妹は男。
その反対の時は妹も反対の性別で生活をしている。
そして僕らは性別が変わると趣味嗜好も変わるみたいでそれで勉強したいものも変わっている。
僕の場合は男の時は理学部、女の時は文学部。
妹の場合は女の時は法学部、男の時は理学部。
ちなみに僕と妹は同じ理学部に所属しているけれど違う学科。
人から見ると双子で4つの人格って言う訳さ。
実際は2人の人格しかないけど」
僕がそう言い終わると彼女は
「え〜と、よく分からないけど女子校時代もようなの人格で通っていたしお兄さんの人格で通っていたって事?」
と聞いてきた。
僕は
「そういうことになるけど変な風に取らないでね。
その時は妹の体でしかも女性ホルモンの影響なのか女性をそういう目で見ることはなかったから。
今だってそうだし。
僕は男の時と女の時は性格が大分違うから。
それは妹にも言えるけど。
妹の体の時は心は女性だったし元の体の時は心は男。
人格が2つだって事はバレないようにしてたけど」
彼女は
「その点は大丈夫。
偏見はないから。
入れ替わり症についてもなんか授業でやったの思い出したわ。
今までは身近にいなかったから実感は持たなかったけれど。
いろんなマイノリティがいることは知っていたわ。
それに今はその事に偏見を持つ時代じゃないし」
と理解してくれた。
彼女は
「それにしても腑に落ちたわ。
日によって隠してたようだけど性格がまるで違うしクラスのみんなは影で二重人格じゃないのって噂が出ていたほど。
字だって汚い時と綺麗な時があるし。
今、ノートを見せてもらったけど綺麗な方がお兄さんだったんだって初めて知ったし。
どちらかというとようなの方が男っぽいよね。
それに君になついていた後輩ちゃん。
日によって君に対する態度が違ってたよね。
あれは君の秘密を知っていたから?
それにしても今までの疑問点が全て吹っ飛んだ。
いや〜、スッキリした」
僕はついでに
「そういえば妹は今、僕の体で理学部にいるけど会ってみる?」
と聞いてみた。
彼女は
「それは結構」
と断ってきた。
そして
「男子としゃべれるんだったらとっくに彼氏出来とるわ!!」
と叫んだ。
彼女は彼氏いない歴イコール年齢という人物だ。
うっかり彼女の地雷を踏んでしまったらしい。
ちなみに彼女が文学部のキャンパスにいた理由は友達に会いに来たため。
彼女は全ての学部に友達がいるらしい。
彼女そういった顔の広い明るい性格が僕はちょっぴし苦手です。
でも妹の無二の親友なので仕方なく付き合っているそんなこの頃です。