女子大生
今日から晴れての女子大学生だ。
僕はある意味女子大生に憧れていた。
やっと女子大生になれたのだ。
昨日は男子学生であった僕はこれから女子大生としても通うことになる。
これまでメチャクチャ苦労した。
男子大学生でありながら来年女子として通う文学科の研究室に足繁く通っていた。
文学科の教授には僕が女子大生として通う旨を伝えていて先輩たちにもかわいがられていた。
僕の大学では比較的女子が多く僕は女子にメチャクチャかわいがられた。
もちろん、来年には女子として通うことを伝えていたので「イケメンなのに」と残念がられてもいた。
さて、僕は今一年ぶりのスカートをはいている。
実は女子校にも通っていた僕だったがスカートはそれ以来となる。
僕は高校を卒業して以来カワイイものから遠ざかっていた。
女子っぽいものから遠ざかっていたのだ。
訳あってなのだが。
実は高校時代女子っぽいものは苦手だった。
女子校にも通うのが苦痛だったほど。
妹の関係で仕方なく通っていたのだが。
しかし、女子っぽいものから一年も遠ざかっていると逆に今までよりも愛着が湧くとは知らなかった。
去年一年間は女子の時はほぼ引きこもり状態。
家から出ることすらしなかった。
その点、妹は活発的だったから何かと助かった。
そして決まって妹は
「女の子なんだからもっときちんとしなよ。
髪だってボサボサだし。
困るのは私なんだから」
と決まって怒っていた。
僕はそんな妹を無視していた。
そんな僕だから女子校時代の友達とは会わずに妹が適当に会わせていた。
だから、僕はそんな引きこもり生活から脱するために大学に女子として通うことを決めた。
この一年間、受験勉強もしたし、一応他の学科に在籍していたことから幾分か試験は免除されたがそれでも理系から文系の変更、かなり大変だった。
そういえば僕の学校の後輩であるてんりが僕と同じ学科に合格したって聞いた。
一年間、電話でしか会話していなかったてんりが今はどんな姿なのか楽しみだ。
彼女は女子校で僕の本質を見抜いた人でもある。
そして後輩でありながら良き相談相手でもあった。
てんりは僕の正体を知りながらも女の子として接してくれて非常に心の通じた仲だった。
僕の正体を知っているのは学校の先生たちとてんりだけだった。
学校の先生たちは僕の正体を知りながらも他の生徒には僕のことを知らせず女子として扱ってくれた。
本当に良い学校だった。
その後、引きこもりになったのには申し訳がないほど。
ちなみに僕は女装して女子校に通っていた訳ではない。
ちゃんと性転換して通っていたのだ。
詳しいことは言えないけど。
だから体育の着替えの時に怪しまれたことは一度もない。
女子の友達だっていた。
僕の秘密はしゃべってないけど。
さて、大学の入学に女子として初めて入学する。
実は今日、入学式に参加しなければならない。
男子の時と比べてこれで二度目だ。
女子としてはカワイイ服で臨まなければならない。
と言ってももちろん派手な格好をする訳ではない。
妹に買ってもらったスーツで臨むのだ。
もちろん、カワイイワンポイントを付けて。
男子の時は恥ずかしくて出来なかったことだ。
これで正々堂々と付けることが出来る。
まずは待ち合わせ場所に向かった。
てんりと一緒に行くことになっていたから。
「おんり先輩(僕)、見ない間にさらに可愛くなりましたね」
と声を掛けてくれた。
僕は
「昨日、妹が気合い入れてやってくれたからね。
おかげで今日、何もすることがなかったよ」
と僕は答えた。
2回目の入学式は結構新鮮だった。
だって、女子として出席したのは初めてだったから。
入学式が終わった後、僕は何人かの男子にナンパをされた。
それもてんりと一緒に。
僕は
「男には興味がないんだよね。
僕はこの娘、つまりてんりと付き合っているんだから」
今日日、同性同士のカップルも珍しくもない時代。
そう言うと男たちはそそくさと帰っていった。
このあと、例の研究室に行った。
研究室に行くとみんなに一様に驚かれていた。
教授は
「あなたが本当に世継 温利君(僕)なの?
本当に女の子にしか見えない。
あなたの事情はよく知っていたけど改めてみると驚きの一言だわ」
その後、研究室の女子たちに質問攻め。
かなりきわどいことまで聞かれた。
でも女子校出身でもある僕はそういった女子の性質を知っている。
すんでの所で躱せる質問は躱して躱せない質問は仕方なく答えて。
しかし、女子って男子が思うより下ネタが好きだ。
それも男子よりきわどい下ネタが。
(もちろんダメな人もいるが)
女子校時代からそれ自体は慣れているがついさっきまで僕を男子として扱っていたお姉様方たち(生まれながらの女子としての敬意を込めて)が今ではダークな女子の世界へと僕を誘っている。
ついこの間までの態度とは打って変わった態度だ。
女子って異性と同性に対してこうも態度を変えるのものなのか。
つくづく女子って恐ろしいなと思った。
まぁ、翻ってみると男子も似たようなものなのだけど。
異性と同性に対する態度は。
そういうことで明日は男子大学生としてこの大学に通います。