第七話・本心
結構重要なシーンです。一章終わったらここからのifルート書きたい
「ところで、なんで蒼夜くんはこんなところにいるの?」
夜空は大樹の根に腰掛け、その隣に蒼夜が座る。
「そうだな、俺は逃げてここまできた」
本当は「そんなこと聞いて何になる?」と言うつもりだったのに、口から出た言葉はそれだった。一瞬頭の中をよぎったのは、彼女も特殊な能力を持っているのではという疑問だった。
「どーした?驚いた顔して?」
夜空はこちらの顔を覗きこむように顔をむけてくる。
「いや、なんでもない」
得体のしれない能力に対する恐怖からから、顔を背け、夜空と目を合わせないようにする。
「さては私に近寄られるのとか恥ずかしかったかい?」
夜空は俺の心情も理解せず、頬を指で突っついてくる。俺はその夜空の腕を振り払い、やめさせる。
「俺は、全世界の敵だ。お前を巻き込みたくないから馴れ合わないでくれ」
自分で言っておいてどうかとは思うが、自分に一番刺さる言葉だ。分かってはいたが、自らを世界の敵と認めたことになるからだ。
これで俺は独りだ。夜空には悪いことをした、いいや、これも夜空の為だ。
振り向いた先にいる少女の気持ちは沈んでいるだろう。せめてもの償いに、最後に一言かけてやろうと振り返ると、何故か夜空は笑っていた。
「蒼夜くん、なんだか私と似てるね」
「え?」
完全に予想外だった上に、彼女の言った『私と似ている』が理解出来なかった。夜空は姿勢を正し、俺に向き合って話を続ける。
「自分が悪い、他の誰よりも自分のことを知っているからこそ、人を遠ざけようとする。そうでしょ?でも、そんなことはない。蒼夜くんは悪くない」
「そんなことはない…!
自分が生き残る為に、誰かを助けたいという自己満足の為に、俺は自ら蒼の天使なんてものになっちまったんだ!俺は、最低だ!」
夜空はため息をついて、呆れたような顔で見つめる。
「さっきまでの蒼夜くんと今の蒼夜くん、違うことに気がつかない?」
夜空は蒼夜の髪に触れて、その髪の色が違うことに気がついた。
それは蒼き闇と同じ色をしたものでなく、元の黒い髪であった。
「今の蒼夜くんは蒼の天使じゃない。」
その一言は、あの日から自分の心の中に淀んでいた蒼き闇を払い去った。頬を伝わる熱い液体は、心に溜まっていたものの残骸だろう。
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「どう?気分はよくなった?」
「お陰様で、」
夜空の一言で、蒼の天使の呪縛から救われた。
蒼き夜から俺はずっと蒼の天使に心を乗っ取られ、完全な蒼の天使になるように仕向けられていたということだったようだ。
「私もね、蒼夜くんみたいなことがあったんだよ。その時に似ていたからね」
「だから『似ている』っていってた訳か、さっぱり理解出来なかったよ」
日は既に東の空には無かった。立ち上がって夜空に手を差しのべる。それに夜空は掴まり、飛び上がるように立つ。
「それにしても、随分と無様な姿を晒しちまったな……恥ずかしい……」
「いいのいいの!蒼夜くんが弱味見せてくれるの私にとってご褒美だから」
なんかご機嫌なようだが、こっちからすると妙にムカつく。
「捉え方によるけど、人の弱味見て喜ぶって結構えげつないことだと思うんだけど」
「常に弱味見せてるような状態の私からすると、半分当たり前のような気もするけど……」
「さらっと今結構凄いこと言ったな!常に弱味見せてるってどこがだよw」
「私は世界最弱!うぃーけすとぱーそんの夜空だよ!存在自体が弱味だよ!」
「うん、ツッコミどころが多すぎて、何いったらいいかさっぱり分からん。」
「まあ、要するに最弱ってこと!魔法も武術も全く使えない!
あと、蒼夜くんも味わったと思うんだけど、私と話していて思わず油断して、本当のこと話しちゃうとかあったでしょ?
あれはね、最弱を目の前にしたとき、無意識に本能が安全だと思って油断しちゃうの」
「なんだかそれもはや弱味のレベル越えちゃってない?」
「弱味も転じれば強味となる!これぞ、うぃーけすとぱーそん!ゼロ通り越してマイナスの弱さ!」
なんだか方向性ずれてきたな……
心の中でそう思いながら、行く宛もなく森を歩くのだった
「あ、もう無理動けない……」
つづく?
ハイテンション夜空ちゃんは最弱なのを忘れてうごきまわって力尽きました。次回は反省しているはず……
そんなことはさておき、次回こそ戦闘シーンに入りたいです!