第六話・脱走
蒼夜の能力&重要キャラ登場回です!
「やはり、あなたは敵だった」
金髪の少女は銃をこちらに向けながらそう言った。彼女の禁忌の能力はわかっている。自分では確実に逃げられない。
「待ってくれエリシアっ……!
俺が何をしてそんなに怒ってる?!
クロノスに説得されたんじゃ無かったのかよ」
目の前の殺意に必死の抵抗をみせる
そもそもどういう状況か全く理解出来ない。
(セルシオ!お前何しやがった!)
心の中で、恐らく先程まで自分の体に乗り移っていた人物に問いかけるも、返事はない。
「誰がエリシアに説得したって?」
気がついた時には、自分の首に剣が突きつけられていた。その剣を握っているのは、命の恩人であるはずのクロノスであった。
「なんで……」
頭にはそれしか浮かばなかった。何故俺を殺そうとする?俺は、セルシオは何をしたんだ?
「蒼夜、お前は蒼の天使だ。だから殺す、それだけだ。」
鮮血が廊下に飛び散り、俺の意識は一瞬セルシオの姿を見た後に闇の中へと落ちた。
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「おい、起きろボロ雑巾」
何度か聞いたことのあるようなセリフで横腹を蹴り飛ばされる。
視界の先にいるのは、先程俺を殺そうとした筈のエリシアだ
「なんで、俺は生きてる……?」
「ボロ雑巾、まだ寝ぼけてんのか?」
とりあえず、彼女から逃げなくてはならないと本能が叫ぶ。
心配したようなエリシアを部屋において、俺は逃げ出した。廊下に出て、切り裂かれた首に触るも傷痕は無い。角を曲がったところで、何かにぶつかった
「ああ、蒼夜か。朝早くから元気だな。」
そこにいたのは俺の首を斬った筈のクロノスだった。彼から目は放さずに、一歩一歩後退りする。
「う、うぁぁぁ…………」
悪夢のような出来事がフラッシュバックする。
直後彼に背を向け全力で走り去る。
「おい!どうしたんだ?蒼夜!おい、蒼夜!」
後ろからクロノスの呼び止める声が聞こえるも、気にせずに角を曲がり、廊下を通り、階段を下りて玄関へ逃げ出す。
そして扉を開けて外へ出ようとしたときにあることに気がついた。玄関の横の壁には日付が記されていた。
その日付は紫の天使と対峙したあの日のままだった。
外に出て太陽の位置を確かめると、丁度東から登ってきたところであった。
「もしかして、時間を遡ったのか……」
屋敷から出た後に森の中に入る。
蒼の天使の能力、それが時間を巻き戻すことで
あるなら納得がいく。
紫の天使と対峙した時、初めて時間を巻き戻した。そして戻った時間の先でよく分からない苦痛を味わい苦しんだせいで、自我を失ったと怪しまれたのなら、エリシアやクロノスに殺されても当然だ。
「なんとなく分かって来たぞ……
とりあえず、俺は蒼の天使になった。クロノスやエリシアには恩はあるが、それ以上の仇で返されるのは御免だから、結果的に逃げて良かった。」
ボソボソと一人言を呟き頭の中を整理する。状況の理解の後に考えることはこれからの行動だ。その中で真っ先に出てきたことが紫の天使のことだ。
蒼の天使の能力が攻撃的なもので無いから、ヤツを倒すのは無理だろう。
そんなことを考えていると、前の茂みから何者かが近寄ってくる音が聞こえる。
クロノスかエリシアが追ってきたのか、はたまた獣が襲ってくるのか?と身構えた。
しかし茂みから出てきたのは、それらのどれでも無かった。
「ん?あなたは誰?」
茂みから出てきたのは、どこか見覚えのある一人の少女だった。白い髪に青い混じり毛を持つ髪に付いた木葉を払い、透き通るような青い瞳が俺を見つめる。
「名前は?」
突然の出来事に頭がついてこれず、言葉が出ない。すると、目の前の少女は閃いたような顔をし、
「そっか!こういうのって自分から名乗った方がいいのかな?ねえ、どう思う?」
目の前の少女はにっこり笑って訪ねてくる。
「ああ……どっちでもいい気がするけど……」
「そっか~じゃあ、とりあえず私から名乗っとこうかな」
少女は一歩下がり、改まって続ける。丁度日差しが木々の間にから差し込み二人を照らす。
「私は夜空!東雲夜空です!君の名は?」
「俺の名前は蒼夜……です…………」
「蒼夜君ね!ここで会ったのも何かの縁だね!よろしく!」
夜空という少女との出会いが、これからの蒼夜の運命を大きく変えていくことを、まだこの時は知るよしもない
つづく
夜空はツイッターにてイラストあげてたりします!次回は超重要な分岐になる回です