夢人
「お兄ちゃ~ん」
「なんだい? 妹よ?」
「明日ねぇ、新しい元号の発表でね、もうすぐ変わるって知ってた?」
「えっ!? 嘘?」
「本当」
「ワオッ。知らなかった」
「お兄ちゃん、マジで!?」
「本当に知らなかったね。研究ばかりしていたし、テレビもラジオも無いからね。パソコンもスマホもないしさ。今も、手紙のやり取りがメインだからね。電話は隣に住む婆ちゃんとの糸電話1本だし」
「元号、いよいよ明日で新しくなるんだよ」
「今は『ぺいなり』だよな?」
「はっ!?」
「『ひらなり』だったっけ?」
「お兄ちゃん、今ね『へいせい』だよ」
「あっ、そうだ、そうだ」
「知らなかったの?」
「何気に忘れかけていた」
「ふふっ。忘れていたなら仕方無しだよ」
「あはははは。全然、気にしてない」
「うふふふふ。変なの」
「妹よ、世界で日本だけしか元号を使用していないんだよ」
「ウッソ~!!」
「知らなかったの?」
「知らなかったわ」
「あはははは」
「うふふふふ」
「まぁ、元号があっても無くても地球は回るからね」
「そりゃそうだけどもね。お兄ちゃん、新しい元号は何がいい?」
「『納豆』はどうだい? 納豆元年」
「わぁー、美味しそ~う。大豆だねぇ」
「大豆イソフラボン。大豆は畑のお肉です。とにかく、よくかき混ぜろ、糸が引くまで粘れ、という意味を込めました」
「なるほどね~。他は?」
「『豆乳』はどうだい? 豆乳元年」
「また、大豆じゃん」
「大豆は肌に良いし老化の予防に効果あり。大豆は畑のお肉なんです」
「それ聞いた。他には?」
「『永遠』はどう? フォーエバー元年」
「カッコいいじゃん!!」
「永遠に元号を続けたいならば、今後『永遠』を元号の完成形とみなして確立し、2度と元号の変更をしないで、これで完全に終止符を打ちたい。西暦にした時にこそ、『初めて日本が世界と肩を組んで渡り合える現実が来る』という選択がある考えも、頭の片隅に置くのは悪いことではない。大事なことはね、多様性のある社会、共存共栄が重要なことなんだよ」
「お兄ちゃん、難しくてなんだか分かんない」
「お兄ちゃんもね、よく分からないで言ったけど、結構シビアな事を語っているよ」
「うふふふふ」
「あはははは」
「お兄ちゃん、他に良いアイデアはあるの?」
「『楽園』というのは、どうだい? 楽園元年」
「なんかカッコいい感じだね。映画っぽいよね」
「生きる場所と時間は限られているからね、命がある所が楽園なんです」
「ふ~ん。他には何かあるの?」
「『夢人』「ゆめじん」と言うのは、良いだろう? 夢人元年」
「オシャレな響きだけども、どんな意味があるの?」
「妹よ、よくお兄ちゃんによう、毎晩さ、歌って聞かせてくれるじゃない? 『♪ ゆめぇ~じぃん・うぉ~るぅ・ざぁ・ぺぇいぽぉ~るぅ♪ 』っていう歌さ。その歌をイメージしたんだよ。確かジョン・レモンの『ゆめじん』だよね? 良い歌だよなぁ」
「お兄ちゃん、惜しいけども、レモンじゃないし、『ゆめじん』でもないね。本家の歌は絶対に茶化したり、ふざけたらいけない対象の歌なんです」
「ふざけてないさ。世界の平和を祈る気持ちを込めてね、元号を『夢人』にしてみたんだよ。夢見る力を信じようぜってね。妹よ、その茶化しちゃダメな歌、Imagineを国歌にすれば良いのにね」
「わぁー、それ良いねぇ~!」
「愛と平和を込めた歌詞を国歌にしたらカッコいいし、最高さ!」
「なるほどね~!」
「まあね、新しい元号だろうが、なんだろうが、元号があろうが、なかろうが、形式に囚われずに、物事に動じないで、あまり惑わされずに、たった1度の自分の人生を考え抜き、愛のフィーリングを持って、前を向いて、希望を胸に、愛しい人と、毎日、朝から晩まで愛し合いながら夢を持って生きていきましょうね! 妹よ、わかりまちたか?」
「はぁ~い」
おしまい




