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リザルト画面的な一幕

 胴体を貫かれた神鳥は、

「ケェェ……」

 と切なげな声を漏らした後、息絶えた。


 そしてその強大な魂は空へと昇っていき、

 一部だけは、私の身体へと取り込まれた。


 経験値ゲット!


 なお神鳥の死骸に腕を突き刺したまま、私は高々度から落下中である。


 足を下に向け、ズドンッ、と着地する。


 そして、

「――ぃいったああぁぁぁぁぁ……っ!」

 全身に負った火傷の痛みで、のたうち回った。


 くっそ、魔王城での戦闘訓練である程度の痛みは経験済みだけど、火傷のダメージは初なので慣れてない分苦痛がでかい。

 ……いや、腕とかちょっと見るに耐えない有様だし、この程度の痛みで済んでいるのは脳が苦痛を軽減させてくれているのかも。発狂とかしないように。

 でも痛いのは痛い。

 めっちゃ痛い。

 泣きそうである。


 しばらく悶え苦しんでいると、ふいに痛みが和らぎはじめた。

「……おお」

 見ると手足がうっすら発光し、傷が治りつつある。

 それこそ戦闘訓練で既に何度か見た光景ではあるけど、やっぱり驚いてしまう。


 痛みが引き、見た範囲で肌が再生しているのを確認できるまでに、1分かからなかったぐらい。

 ――この身体を改造手術したってんだから、そりゃ大変だっただろうなあ。


「回復術はいらぬようだな」

 女神レグナストライヴァが、そう言いながら近づいてきた。


「魂の欠片も、うまく奪取できたようだ」

「あ、はい」

 突き刺さったままだった腕を、神鳥の死体から引き抜く。


 魂の一部は、私の胴体あたりに吸い込まれ、全身へと渡っていった。

 私自身の魂には、混ざった様子はない。

 ちなみに、白嶺で何度か他のみんなが経験値を得る場面を見たが、今回私が得た経験値は、それより随分大きかった。

 さすが神の眷属ということか。

 ていうか普通に強かったしな。

 

 どのぐらいステータスが上がったのか、気になるところだ。

 まあ、それを調べるのは魔王城に戻ってからか、人族の世界にレベル測定器が普及してからだね。


「そういえば、神の眷属を倒した者は、地上では『大悪なる強者』などと呼称されているらしいぞ」

「えっ……」

「その死骸から何か勲章でも作ってはどうだ?」

「いっ……」

「ああ、それからその身体を変化させるのに、私の力を注いだからな。レグナストライヴァの名において、サクライオリを眷属と認めてやろう」

「なっ……」

「その証にでもするがいい」

 そう言うと、神様は自分の赤い髪の毛を何本か抜き、私に差し出した。


 ――ただの抜け毛からえっらいオーラを感じるんですけど。


「ではな。ラントフィグシアの不始末はまったくもって謝るしかないが、それはそれとして、面白い降臨だったぞ。また機会があればその顔を見たいものだ」


 そして、女神様は天空へと光を立ち昇らせ、すうっと目の前から消えていった。


 後には、焼け焦げた地面だけが残っている。

 神のオーラが消えたせいで、ずいぶんぽっかりと空いた感じの雰囲気が流れていた。


「……うーむ」

 大悪なる強者とやらに、熱を司る神の眷属……。

 1回の戦闘で2個も称号を入手してしまった。

 前者のはかなりカルマ値高そうだから、人に言わないほうが良さそうだけど。


 さて、レグナストライヴァが結界を張ってくれたといっていたけど、念のため確認しなきゃ。


 まずは祭壇の頂上に登る。

 ――うん、狼は無事だね。

 ……耳から血が出てるのは、私の大声のせいかもしれない。

 またあとでアルテナに治してもらおうか。


 続いて林の奥へ進む。


 草の茂った一角の裏側に、横たわって気絶しているアルテナが見えた。

 そしてその近くに、座禅を組んで目を閉じ、無機物のように気配を消しているカゲヤもいた。


「――ええと、もういいよ?」

 声をかけるが、無反応。

 いわゆる無我の境地というやつだろうか。


 ぽんぽんと肩を叩くと、ぱちっと目を開いた。


 まじまじと私を眺めるカゲヤ。


「あ、ごめん、見苦しいところを」

 私の服はボロボロだ。焦げて黒くなっていたり、焼ききれていたり、溶けて肌に貼り付いていたり。


 カゲヤは、沈痛な表情になった。

「……自刃致します」

「それはいいから!」

 そうくるかもな、という予想はしていた。


「怪我は治ってるし、そもそも私がお願いしたんだし、カゲヤになんの責任もないんだから!」

 と説明するものの、カゲヤに聞く様子はない。

 ……というか、実際に聞こえてない?

 よく見れば彼の耳からも血が流れているし。


 がっ、と両肩を掴んで、はきはきと口を動かす。

「も・ん・だ・い・な・し」

 伝わったかな?


 カゲヤはしばらく苦悩していたものの、やがて首を縦に振った。


 ――背後で、なにかが動く気配。

 あの狼も気絶から覚めたらしい。


 ちょっと待ってて、とジェスチャーで示し、私はまた祭壇に戻った。


 金色の狼は、吠えたり唸ったりせず、行儀よく待ってくれていた。

 ……明らかに、私に対して怯えているけれど。


「ええと、大丈夫? とりあえず私は危害を加えたりしないから」

 開いた両掌を顔の左右に上げ、無害だよと示しながら近づく。


「……ガウッ」

 狼は、立ち上がると祭壇の一角に足を進めた。

 瓦礫が積み上がっている場所。

 そして、その一箇所を前足で何度か軽く叩いてみせた。


 ――ここほれワンワン?

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