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改造されがちな主人公

「イオリが帰還するための装置が故障中、と……。なあラントフィグシア、お前からそんな報告は誰も聞いていないと思うのだが?」

 アイアンクローをかましたまま、レグナストライヴァはシアに語りかける。

「そんな、報告する以前に私もそのようなことは知りませんっ」

 シアは両手でそれを外そうともがいているが、熱を司る神の右手はびくともしなかった。

 やはりシア、戦闘力はないか?

 私でも勝てるか?

「そうか、知らなかったのか」

「はい、もちろんです」

「それは余計に悪いだろうが!」

 ぶん、と怒れる女神の腕が振られ、

「あああぁぁぁぁ――」

 吹っ飛んだシアが、どこかに消えていった。


「……本当に、つくづく、あの馬鹿が申し訳ない」

 うわ、神様が頭を下げてきた。

「いえ、あの、まあシアが直接壊したわけじゃないですが……」

「いや、定期的に下界へ降りて状況を確認するよう、奴には言っておいたのだが……。イオリ、この世界でラントフィグシアは何度お前の前にやってきた?」

「今日が2回目ですけど」

 それもこっちが呼んでのことだ。

「わかった。1回奴を殺しておく」

「いやいやいやいや!」

 そこまでしなくとも。

「安心しろ。すぐに蘇る。死に伴う苦痛を浴びるだけだ。高熱で骨まで溶かすか熱病でじわじわ苦しめるか、どちらがいい?」

「ですから刑罰とかはいいですって! ――それより、さっき言った私が強くなる方向、融通効かせたりできませんか?」

「なるほど、返報より利を取るか」

 女神様は不敵に笑った。


「そうだな……、どうするか……」

 少し悩んだ後、

「では、お前が殺めた相手の魂は、その一部をお前の身体に宿すように細工するとしよう」

 と言った。


「えーっと、それは普通となんか違いが……ああそっか、私の魂じゃなくて、この身体にってことですね! 私の魂には混ざらないし、この身体はこの世界の魔獣とかが元になってるので大丈夫ってことですか」

「そのとおりだ」

 満足そうに女神は微笑む。

「……でもそれって、どうなるんですか? 結果的に、強くなれるんでしょうか」

「もちろん、その身体の元となった生物の魂は既に天へ戻り循環しているから、通常の強化は望めない。術式の威力や効率の強化、身体変化への熱量利用、頭脳の活性化、精神の深化などは無理ということだな」

 ……普通のレベルアップって、色々できるんだな。

 いや、そうか、知力とか精神力とかのパラメータもアップするもんだしな。普通の言葉にされると随分すごい成長に聞こえてしまう。


「では、どのあたりが強化されるんですか」

「単純に、身体能力だな」

「……なるほど」

 どうやら私の脳筋キャラ設定は、後から変更できないらしい。

 いわゆる『取り返しのつかない要素』らしい。


 うん、いやいやまあまあ、パラメータ固定の成長なしよりはずっといい。

 

「それでは少しそのままで待て。今降臨するからな」

「え?」

 私が尋ねる間もなく、女神様はふっと消えてしまった。


 そして、


 ――ゴゴゴゴ、的なプレッシャーがはるか上空から、

 ――荘厳な光の柱を天から降らせながら、

 ――『畏怖』という感情を物質化したような気配を纏わせながら、


 女神レグナストライヴァが、形ある存在として、私の前に降り立った。


 ……なにこれ、レベルいくつよ。

 少なくても確実に魔王クラスだ。


 ――なるほど、『投影体』ね。


「先ほどまでは、天にいらしたまま、その影のようなものを地上に映されていた、ということでしょうか?」

「……なんだ、そのあたりも奴は説明していなかったのか」

 呆れたように女神は額に手をやる。

「まあ、そういうことだな。あの状態は会話しかできないので、直接的な接触が必要な場合、こうして本体を降ろす必要がある」

 そこで女神は、軽く目を細めた。

「ところで、熱くはないか?」

「ええ、多少」

 レグナストライヴァの身体からは、後光とか威圧とかオーラとかそんなものと一緒に、かなりの高熱も放たれている。

 じりじりと、空気が焼けている。

 ……気絶してるアルテナたち、大丈夫かな?

「多少、で済むか。やはりなかなかの身体だな」

 女神は微笑み、そして私の方へ近づいてきた。

 熱波が押し寄せる。


「――少し、我慢しろよ」


 細い腕が伸び、私の心臓辺りにその手が触れた。


 ――あっつうううぅぅっ!!


 強烈な高温が、私の体内へ一瞬で広がった。


 それこそ、骨まで溶けるような。

 一瞬で身体が蒸発してしまうような。


 意識が遠ざかり、

「――よし」

 そして、急激にその熱が引いていった。


 歪んでいた視界が戻り、さあっと吹いた風が汗に濡れた額を涼め、知らず知らず崩れ落ちていた私は、ふらふらと立ち上がった。


「なにか異常は感じるか?」

 女神様の声に、私は自分の手足を見下ろす。

 外見は変わりないし、感覚も問題ない。

「特に、なにも。大丈夫だと思います」

「そうか。では試してみるとしよう」


 レグナストライヴァはにやりと笑い、ぱちんと指を鳴らした。


 するとその隣に、空間を裂くようにして、1匹の鳥が出現した。

 両翼の長さが2メートルぐらいあり、朱と白の混ざった羽毛を纏った、明らかに強そうな鳥である。

 ……おかしいな、レベルがカゲヤと同じぐらいあるように見えるぞ?


「私の眷属だ。1匹お前に潰させてやろう」


 女神の眷属。

 ……それって、いわゆる神獣とか神鳥とか呼ばれる存在では?


「では、いけ」

 女神の声とともに、推定レベル1000のモンスターが襲いかかってきた。

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