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女神✕2とのコミュニケーション

 ひととおりシアの文句を聞き流してから、私は女神レグナストライヴァとの会話を再開した。


 どうして私はレベルアップできないのか。

 経験値を得られないバグを保有しているのか。


「そうだな……」

 熱を司るという女神は、顎に手を当てた。

 ――しっかし、シアもそうだけど神様って美形揃いなのか?

 レグナストライヴァは、ハリウッド女優のなかでも日本人に人気の出そうな顔立ちである。スカ○ハとかそっち系。……この伏せ字だとケルト女神にも読めるな。


 女神は、どこのリップ使ってるのか聞きたくなる唇を開いた。

「まずお前は、魔族だろうと人族だろうと、殺してもその魂を己の力に換えることはできない」

 そして、さらりと断言した。


 ――ショックである。

 経験値を稼げない戦闘なんて、なんの意味があるのだろう。

 RPGではなくアクションだったとしても、スコアぐらいは稼げるものだ。


「……それは、この身体が造り物だからでしょうか?」

「いいや、その身体の問題というわけではない。単に、この世界がそうあるようにできているからだ」

「ええと?」

「つまりだな、イオリは地球から来たわけだ。お前の魂はそちらで生まれたもので、いずれは向こうへ帰る。この世界においては異物で、やがて去ることも決まっている」

「はい」

 現在、その帰るための装置は絶賛故障中ではあるけど。

「仮に、お前が他者を殺めてその一部を奪うことが可能になってしまうと、それはお前の魂に混ざり込んでしまう。そしてお前が地球へ帰るとき、奪った魂もお前に隷属して、地球へ行ってしまう。結果として、この世界にあった魂の総量が、目減りするというわけだ」


 ふむ……。


「ああ、なるほど。――魂っていうのは有限の資源なんですね」

 私はそう解釈した。

 女神は、少し眉を動かした。

「……理解が早いな。イオリお前、地球では一般的な生命体なんだよな? 魂の管理をする存在が身近にいたのか?」

「いえ、そんなことはありませんでしたが、まあ地球にもマナとかソウルとかアルタナとか似たような概念はあったので」

 2次元の中にね。


「そうか。……まあ、そんなわけだ。お前がこの世界で強くなるということは、この世界の資源を食いつぶすという結果に繋がってしまう。もとからこの世界に属する魂の持ち主であれば、死後はこの世界のなかで循環するから総量は増減しないが、お前はそうならない。仮にお前がこの世界で死んだ場合、その魂は地球へと向かうことになる」

「あ、そうなんですか」

 役に立たないことを全力で願う豆知識だけど。

「ああ。そういった理由で、お前の魂はこの世界の構造の適用外になっている。こればかりは、どうしようもないな」


 うーん、困った。

 報酬のない戦闘をこなすほどバトルマニアじゃないし。

 でもこの身体になってから、少なからず戦闘欲求があるんだよなあ。

 大学にいる体育会系の友人が「身体を動かさないと気持ち悪い」とか信じられないことを言っていたけど、あれに近い感覚なのだろうか。


「なにか裏技とか抜け道とかありませんかね?」

「なんだイオリ、そんなに強くなりたいのか?」

 意外そうに女神は言った。

「ええ、まあ、魔王様に協力してる関係上、この先も戦闘は何度もあるでしょうし、うかつにこの世界で重傷とか最悪死亡とか避けたいですし」

「ああ、それは理解できる。だが今の状態でも相応の戦闘力を持っているようだが?」

「上には上がいますし」

 魔王様とかね。

「それに、少なくとも2年は帰れませんし。私の身体って一般的な成長がないので、その間身体に変化なしって、生物として違和感覚えそうなんですよ」

 あと、ぶっちゃけ飽きそうですし。 

 パラメータ固定のキャラを長らく愛せるかどうか、自信がない。

 やっぱり自分の時間を投資して育成できないとね。


「――今なんと言った?」

 

 女神レグナストライヴァの目つきが鋭くなった。

 あれ? なんか地雷踏んだ?


「……申し訳ありません、何か気に触ることを言ってしまったでしょうか?」

「いや、すまない、そうではない。……帰れない、と言ったな?」

「あ、はい」

「なにか支障があったのか?」


 ――これは、押していいタイミングか?


「その、地球に帰るための装置が壊れてしまいまして。――正直、とても困っているのです。こちらの2年は、地球よりずっと長いですし、その間に生じる本来の私の生活における影響が大きそうで……」

 例の、地球との時間の速度差やオマケに持ち帰る質量で生じる時差などは省く。


 ギロリ、と赤髪の女神は隣でふてくされているシアを睨んだ。


「な、なんですか……?」

「無事に帰す段取りはついている、とお前は説明したよな? あのとき皆に囲まれて半泣きで」

「泣いていませんっ、あれは皆が恐ろしい形相だったから冷や汗をかいただけです! まったくあのときは、寝るときも耳鳴りがして大変だったのですよ? 目を瞑るとお説教を無意識に思い出してしまって寝付きも悪かったのです」


 がしり。


 おぉーっと、女神レグナストライヴァが女神(仮)シアに流れるようなアイアンクローを決めたぁっ!

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