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from persona

 目が覚めたら強化人間になっていました。


 ふっ、これで私も上位ランカーへの道が開けたか。

 移動キャノンやブレード光波が撃てるように……。

 面妖な、変態技術者ロゼルめ。


 ――いかんいかん、脳がコ○マ汚染された妄想してる場合じゃない。

 にしてもあれはもう続編出ないのだろうか。

 魅惑の未来ゲーム時空にシリーズ10作目ぐらいまで並んでたら狂喜するんだけど。

 ……1本もないことを知って絶望する可能性も高いな……。


 

 冷静に考えてみれば、この戦争真っ盛りな世界で強くなるのは、まったくもって悪いことじゃない。

 なのになんで、私はあんなに取り乱したのか。



 ――おそらく魔王は地球の私を知っているので、私の本体というか本質みたいなものはあくまで魂にあり、この身体は単なる器だと考えている。

 ゆえに器の性能が向上することは良いことだと。


 ――サーシャは、私のことを心配してくれている。……彼女なりに。


『イオリの旅について行きたがっていた。しかし他ならぬイオリ自身から、我への忠義の証としてあの一人称を授かったばかりだからな。この城を離れることは断念したらしい』


 魔王が、ちょっと前にそんなことを教えてくれていた。

 だから同行できない代わりに、私自身を強くしたいと望んだのだろう。

 自分の班からカゲヤを志願させてくれたのも、もしかしたら彼女の後押しがあったのかもしれない。


 モカはロゼルの企みを却下する権限を貰ってはいたものの、サーシャの指示を断るのは難しかったと思うし、共に人族の土地へ潜入する仲間が強くなるのなら文句をつける筋合いでもなかっただろう。


 うん、理解できるし、納得できる。

 ではなぜ今もなお、私は内心で多少の不満を持っているのか。



「――つまりですね魔王様、今やってるそのRPG、自分が知らないうちに誰かが同じデータで遊んで経験値稼いだりしてたらどう思います?」

「……礼を言うべきところなのかもしれぬが、どうも不快だな」

「そう! そういうことなんです」


 改造手術が終わり、身体の調子を確かめ、自室で休んだ翌日。

 私は魔王の部屋で自分が感じたことを説明していた。


 ――どうも魔王様も、表面上は隠したつもりの私の不満を見抜いていたらしい。

 あの場でそれを問い詰めると、くたくたになるまで働いてくれたモカたちにも悪いし、監視役のサーシャを貶めることにもなる。私自身も率直に話しづらいだろうと判断し、まずは私ひとりと話をしたいと呼び出されたのだ。


「なんていうんでしょう、私にとってこの身体って、あくまで借り物というか、本当の身体ではないのはたしかな事実なんですけど、それはそれとして私の意思で操作できますし、ずっと一緒ですし、なんだかんだ愛着とか湧いてるんですよ。それこそ苦楽をともにしたキャラクターのごとく! なのに知らぬ間にレベルアップしてたら戸惑うと思いませんか? なんの過程も経験せずに『あ、やっときました』でパラメータが上がるとかスキル習得するとかいうのは、無断で自室の引き出しを探られて整頓されたような感じなんです」


「うむ、非常によくわかった」魔王は重々しく頷いた。「次回からは事前に取り決めた内容だけの施術をすることとし、仮に何か良い案を思いついても、それは目が覚めたイオリに伝えた上で、日を改めて執り行うという点を徹底しよう」

「はい、それで大丈夫です」


 インフォームドコンセントは大事だよね。


「今後はそれでゆくとして、今回の件はすまなかった」

 魔王が頭を下げた。

「責任を持つのは我だ。……できればサーシャたちは責めないでやって欲しい。ロゼルを除き、善意で行ったのだ。詫びとして我から何か贈らせてもらおう」

「あ、それは、はい。サーシャにもモカたちにも、何も言うつもりはないですよ」

「そうか。助かる」

 魔王は頭を上げた。


「……ていうか魔王様、そんなに頭下げたりしていいんですか? 王様なんでしょ」

「部下に対してであれば控えるがな、イオリは我が招いた客人だ。立場の上下はない――むしろ我がイオリに請うている身だ」


 私はそこでふいに疑問を抱いた。


「魔王様って、生まれたときから魔王なんですか?」

「む、急にどうした」

「いえ、そういう私に対するフラットな考え方とか、最初から頂点にいる魔王だったら、そもそも浮かびもしないんじゃないかなー、と」

「ふむ、そうかもしれんが、我とてこの世界の頂点にいるわけではないからな」

「え、もっと強い存在が?」

「神々だ」

「……あー」


 そっか、いたね、そういうのが。


「神様って、魔王様より強いんですか」

「不敬なことをさらりと言うな……」


 魔王が引いている。

 そっか、この世界ではリアル神々がいるから、信仰心が強いのか。


「ところでイオリ、貴様に伝えておきたいことがある」

 話を変える魔王。

「なんです?」

「ちょうどバランもおらず、ふたりきりだからな」 


 えっ、急に告白フラグ!?


 たしかに手術が無事に――無事に……? ――まあ、終わったので、私の見た目は普通に人間になってるけども。

 ちなみに新たな私の外見は、顔立ちや髪の色などはもとのオートマタとあまり変わっていない。でも肌や関節を皮膚で覆い、血色みたいなものまで再現しているので、とにかく凄まじいナチュラル美人さんになっている。

 いや、もとのオートマタも美人ではあったけど、人形めいた気配がなくなったので私的には【カリスマ→魔性の男】ぐらいの進歩に見える。――性別が違う? だってP3だと名称が大げさすぎて……。【可憐な天使】とかさすがに自称できません。あれはハ○子の愛嬌あって為せる技だ。


 いかん、コ○マ汚染が残っている。


 そう、告白フラグの件だった。


「――そろそろ説明しておくべきだと思ってな。我が人族に討伐されたい、真の理由を」


 ですよね。

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