それじゃあメンバーを紹介するぜ
今日は、この城内で久々に新たな場所へ向かうことになった。
転送装置で見知らぬ通路の端にあるテラスへ移動し、そこから回廊を通っていく。テラスからの眺めは自室と別の方角を向いているようで、鬱蒼とした森が地平線まで続いていた。
先頭はサーシャ、その後ろに私と魔王が並んで歩いている。
「5名が合格したとのことだ」
と魔王が言った。
「イオリを合わせて、6人のパーティだな」
「ちょっと多めですね。ああ、でも戦闘に出せるのは4人ぐらいで、残りは控えならむしろ少なめかな……」
「我がゲームで違和感を覚えるのはそこだな」
魔王が軽く口角を上げた。
「戦闘専従の割合が多すぎる」
それにしても5人か。
たしか最終選考手前で20人残ってたとバランが言ってたから、そこからさらに倍率4倍……。
最終面接というのは社長や役員に内定者候補を実際に見せて、問題ないことの判断をもらうという形式的な面もあるから、1次や2次よりずっと通りやすい――
なんてことを先輩が言っていたけど、日本の企業とは様子が違うらしい。
でも先輩自身はあっさり内定取ってたから、たまたまその会社がそうだっただけかも……。
いかん、就活のことを考えるとどんどん帰りたくなくなっていく。
他にも色々面倒なことが降りかかりそうだしなあ。
回廊の最奥には、大理石みたいな質感の巨大な扉がある。それをサーシャが軽々と開けた。
「――魔王様がお入りになります」
部屋の中から、バランの声がした。
気負った様子もなく、魔王が部屋に足を踏み入れた。
私はどうすればいいのか一瞬悩んだけど、扉を押さえているサーシャが目配せで『入ってOK』みたいなサインをくれたので、その後を追う。
部屋の中は、高校の教室を縦横とも倍にしたぐらいの広さだった。
壁にはきれいな布飾りが設えてあり、部屋の奥には別の小さな扉がある。
私達が入った扉側は1段高くなっていて、そこだけ真紅の絨毯が敷かれてあった。
室内にいるのはバランの他に5名の男女。
皆、跪き頭を垂れている。
魔王は、体表に漂う光の靄――魔力を普段より多めに放っていた。威厳を出すためなんだろうか。ていうかコントロールできるんだあれ。
それに当てられて、跪いている人たちは魔力も、体内の光る水――魂も乱れていた。
これが、噂に聞く圧迫面接……!
私が魔王の斜め後ろに立ち、サーシャが扉を音もなく閉めてから一呼吸空けて、
「拝謁を許す」
と魔王が低い声を出した。
5人が顔を上げる。
全員、こちらの世界における礼服を着ている。ゆったりして身体の線が出にくく、黒を基調にした服だ。
けれどひとりひとり髪の色が違うので、雰囲気はそれぞれだいぶ違って見えた。
「名前と所属を順に」
バランがキビキビした声で言う。こちらも普段の柔和な口調から変わっていた。
あらかじめ順番は決めていたようで、一番左の女性が口を開いた。
「モカトガクと申します。技術部門――ロゼル班に所属しております」
赤髪を背中まで伸ばした、生真面目そうな女性だ。小柄だけどスタイルがいい。そう、ゆったりした礼服を着てもなおわかるほど。……すげえな。
レベルは、30ぐらい? あの大荒野で戦争してた兵士たちよりちょっと上に見える。
なおロゼル班と言うときに一瞬すごく緊張していた。
そりゃまあ、ちょっと前に大事件を起こした子の部下だもんね。
「リョウバルスラムと申します。第三軍別働隊『空追う牙』の副長を務めております」
続いて大柄な男性。明るいオレンジの髪を逆立てている。
わりと男前で、私の視線を捉えたらしく目だけでほんの少し笑いかけてきた。……良く言えば優しそう、悪く言えばちょっとチャラそう。
……まあバランが選んだんだし、大丈夫だろう。
レベルは、アルザードの倍ぐらいある。400ってところ? かなり強い。
「シュラノナード、研究部門魔導科」
真ん中は線の細い、白髪の男性。――なんというか、特徴がない。視線を逸らしたらもう顔を忘れてしまいそうな勢いである。やばい、ちゃんと覚えないと。
レベルはアルザードのやや下かな? だから150ぐらい。
「エクスナリレイです。暗部所属。よろしくお願いします」
その隣は金髪をポニーテイルにしている女の子。なんだか元気良さそうな印象。笑顔で自己紹介してるし。見た目は十代半ばぐらいだけど、実年齢はどうなんだろうか。
レベルは、5から10ぐらい? このなかで一番低い。
あ、バランを除いてね。
でも魔王のプレッシャーに対して、一番平然としてたのもこの子。
ていうか暗部って何? 怖いイメージしかないんだけど。
「カゲヤミトス、管理部門侍従科サーシャ班に所属しております」
最後のひとりは、黒髪の男性。
……これはまた、生真面目かつ暗そうな雰囲気の人だなあ。
他の4人と違って、1度も私に目線を向けてこないし、……仲良くなれるだろうか。
しかし、サーシャ班? 侍従科? じゃあこの人も側仕えとか執事的なことをするの?
それにしてはこの人、レベルが5人のなかで最高なんだけど。体内の光がけっこう眩しい。これは1000をつけてもいいんじゃないかなってぐらいの強さ。
この5人がパーティメンバーというわけですか。
……ところどころ濃さそうだなあ。




