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キャラが少ないときに複数チーム編成求められる感じ

「実際イオリ様の仰る通り、勝てばいい勝つしかない負けたら破滅……、というわけなのでとにかく戦力を整えて戦略を練りましょう。それで、出られるうちの最大戦力カゲヤなわけですが」


 気を取り直したエクスナがそう述べながら当人を見る。


「……ぶっちゃけ、うちらの中だとハズレ寄りなんですよね今回の戦争みたいな舞台では」

「否定はしません」


 心なしか普段よりさらに仏頂面でカゲヤは答えた。


「え? だって一番強いのに?」


 そう、実際私はステータスで上回っているけれどカゲヤに勝てるイメージが持てない。

 ……というか状況次第じゃリョウバやシュラノにも完封されると思っているし。


「いや強いですよ? その通りではあるんですけど、カゲヤの強さって要するに――1対1ならそれこそ400連勝しかねない男ですが、800人がごちゃまぜになる戦場を支配できる強さではないんですよ」

「今回の戦争は味方が倒されるのを防ぐのも重要ですから。最後にカゲヤひとりが立っていたとしてもそれは単なる1点です。死者の数次第でこちらが敗北となってしまう上に、カゲヤの攻撃力を思えばそうなる可能性は無視できません」


 エクスナの説明に、そうリョウバが補足を重ねた。

 

「……ああ、そっか。極端な話だけどカゲヤ以外の敵味方が全滅して、たとえばこっちの死者が1人、向こうが2人なら――」

「こちらは生存1点殺害マイナス6点、向こうは生存0点殺害マイナス3点、結果私たちの負けとなります」

「なるほどね。相手を殺さず、こっちは倒されず、速やかに戦闘不能にしていくのが大事だと」

「はい。で、先ほど申したようにカゲヤは正面の相手を倒すことにかけて超一流ですけど、戦場の端から端まで味方を守りつつ敵を制圧していくというのは苦手分野です。そうした状況下ならリョウバやシュラノの方が効率よくやれます。アルテナさんだって自動回復で多少の無茶を通せますし有名人かつ人気者ですから自軍の士気も上がりますし、カゲヤより役に立てますよね」

「あっ、いえ、私はそのような……」


 恐縮して肩を縮めるアルテナだけど、エクスナの説明にも納得できる。


「なあカゲヤ、お前実は遠距離攻撃とか範囲攻撃とかできないか?」

「残念ながら。槍を投げたり薙ぎ払ったりが精々で、しかもそれらは力加減が難しいため死者が増えます」

「だよな……。というかお前そもそも手加減自体が苦手だろ」

「はい。自分は訓練も実戦も、そのほとんどが格上との1対1でしたので」

「まあ、精々が槍を持たず素手で戦うってところか」

「それですと間合いが狭くなり余計に時間がかかるおそれが」


 互いに難しい顔になっているリョウバとカゲヤ。


「んー、でも……」私も悩みつつ口を開く。「カゲヤが強いのは確かなんだから、開戦までにできるだけうまい戦い方をみんなで考えようよ。作戦が良ければ、カゲヤは絶対それをこなしてくれるでしょ?」


 そう言うと、カゲヤは一瞬だけ目を大きくしてから深く力のこもった声で

「もちろんです」

 と答えてくれた。


「さっすが、信頼されてますねえ」

 ニヤニヤするエクスナと、

「くそっ、あの厄介なルールがなければ……」

 歯噛みしているリョウバ。

「あなたせっかく恩寵取ったばかりだってのに披露する絶好の場を失いましたからねえ。あれ? そういえば肩書も軍事統括だったと思うんですけど? 戦争出ないんですか?」

「やめてくれ、致命傷だ」


「……ともかく、最強の単騎が出場できるのですから決して悲観するものではありません。お姉さまの仰るように戦略を練るのが我々の仕事ですから、まずは軍勢を整えることから始めましょう」


 賑やかに言い合っている2名をスルーしてフリューネはそう話をまとめた。




 ――というわけで、軍勢を整えるためには何よりもまず一番人数の多いところを訪問する必要がある。

 私とカゲヤ、リョウバにエクスナというメンバーで向かったのは領主館から街の中心部を抜けた先にある兵団基地だ。

 領主館とその周辺は警備隊がガードしているので普段はあまり顔を合わせないけど、この兵団に所属する人たちが領内全域の治安維持に努めてくれている。


「お越しくださり感謝致します領主様」


 基地の入口には10人ほどの兵士が並んでおり、その真ん中から一歩出てきたのが団長のコウエイさんだ。

 口ひげをたくわえた30後半の男性で、穏やかそうな表情だけど目や口が大きくて顔に迫力がある。

 この人はステムナ大臣が悪政を敷いていた頃から兵団にいて、当時は副団長だった。完璧に大臣寄りだった先代団長と甘い汁を啜っていた団員たちから軽く睨まれつつも、できる範囲で領民を守っていたという善人にして苦労人である。

 領内の一斉清掃を済ませて人数がガタ落ちした兵団の団長になってもらった今も、王城から借りている近衛兵との対応に苦労したり周辺諸国から色々目をつけられてるので国境警備に苦労したりいきなり現れた領主以下謎のメンバーから降ってくる大量の仕事に苦労したりと、誠に大変な日々を送っているそうな。


『あの方にはとても親近感を覚えます』

 とフリューネが言っていたけどなんでだろうね。

 まあせめてものねぎらいに給与はけっこう奮発している。


 コウエイさんに連れられて基地の中へ。建物はなかなか大きいけれど、そもそも人数不足な上に警備で領内各地へ出払っているため基地内はわりとガランとしている。

 応接室で彼と向き合い、あらためてリョウバが今回の戦争について説明をした。


「……最大で340名、やはり今のところそこは変わらずですか」

「ああ。だがいくつかアテはあるので数日以内に連絡する」

「承知しました。当日の領内警備についてですが」

「そこは現在フリューネ様が調整中だ。隣接する国内他領には領境の警備を厚くしてもらうよう依頼し、概ね了承を得ている。こちらは国境沿いに穴がなければそれで良い」

「ああ、それは誠に助かります。となると――おそらく中堅以上から150名は出せるでしょう。他は申し訳ありませんが警備体制をまとめるなかで選出させて頂ければと」

「それで構わない。こちらも早々に必要員数を決める」

「ありがとうございます」


 リョウバとコウエイさんがテンポよく話を詰めているのを横に、私は窓から訓練中の兵士を眺めていた。

 今いるのは30人ぐらいだろうか。レベルは10から20といったところが過半数だ。……正直に言ってしまうとこれまで各地で見てきたり相手してきた戦力と比べれば低いけれど、皆真面目に訓練しているし上がってくる報告でも警備中に問題を起こしたりすることなく領民からの評判も前大臣の頃より遥かに良くなっているとのこと。

 戦闘に参加できない私にできることは、領主としてできる限り死者や怪我人を出さないように作戦を決め資金を捻出し戦意を鼓舞することだ。


 応接室での打ち合わせが終わった後は、そうした訓練中や内勤中の兵士のところを訪れ、「頼りにしています」「全力で支援します」「いつも感謝しています」などと最近めっきり被り忘れている王女様モードで声をかけまくった。ガワは作ってるけど伝えたことは本心だし、それなりに効果はあったように思う。こらリョウバ、嫉妬の目を向けるんじゃありません。


 その後はエクスナの案内で特殊軍本部へ向かい、こちらは既に選出済みのメンバーへ同じように語りかけ、スピィも交えて打ち合わせを済ませ、そこからまた領主館の方へと足を向けた。


 本日最後の訪問先はおなじみの警備隊だ。


「というわけで貴様ら念願の戦争だ喜べ。当日は40人が参戦。残り20人は前日夜から戦争翌日の昼間まで通しで勤務。戦争で死んだり重傷を負わなかった奴らで昼以降の勤務をまわす。質問はないな。よし解散」

「色々待てやこのクソ隊長!」

「おいどっから突っ込みゃいいんだこれ!?」

「どうする逃げるか?」パキュン!「ぎゃあぁっ」


 このやり取りもおなじみである。

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