断章:男たちは次の一歩を
◇◇◇バストアク王セイブル27世の死より3日後
バストアク王国の王城と城下町を有する地域、その北に位置するのは、死亡したステムナ大臣の治めていた土地であった。
王城からまっすぐ北上すれば、整備された町並みと、王城より規模こそだいぶ小さいものの、内装の豪華さでは決して見劣りしない領主館を見渡すことができる。遠目に見れば、そこは豊かで管理の行き届いた領地と言えた。
ステムナ領のさらに北は、他国との国境である。バストアクの名物とも言える、起伏に飛んだ地形のため、崖や山である程度は区切られている。しかし一部はステムナ領から平原が続いており、そこから攻め込まれないための防波堤という『名目』で、長く頑丈な防壁が築かれていた。
今年で14になる少年、ジギィは、その防壁の向こう側で生活していた。
ありていに言えば、貧民街。人口でいえば領主館のある側の町より3倍程度の規模だが、その所得は4割にも達しないだろう。
ステムナ領の防壁と国境に挟まれた、その逃げ場のない吹き溜まりのような町で、身を寄せるようにして妹とふたりで暮らしている。
防壁近くの広場の少し手前、路地に転がったぼろぼろの樽に座って人並みを眺めていたジギィは、耳慣れた、しかし慣れたくはない音を捉えた。
防壁にいくつか設置されている仰々しい扉が開く音。
それは、決まって良くないしるしだった。
たいていは、まず武装した兵士が入ってきて我が物顔に町をまわり、おそらくは年齢や容姿の条件に合致した者たちを広場に連行していく。
もちろん、刃向かえる者などいない。
いや、年にひとりふたり、そうした者が出てきはするが、その末路は思い出したくもない代物になるのが決まりきっていた。
そうして広場に並ぶ数十名から、毎回数人が防壁の向こう――ステムナ大臣の治める悪徳の都へと連れて行かれる。
選ばれる基準には、いくつかの種類があった。
あるときは、豪華な馬車から降り立ち、いやらしい笑みを浮かべた男ふたりが、舐め回すようにして並んでいる人たちを見ていき、美しい少女だけが連れて行かれた。なかにはまだ10歳に満たない女の子までいた。
あるときは、ひとりずつ細い針で脇腹や太ももを刺された。「いい声で鳴く」と喜んでいたのは、やたらと太ったひとりの老人。彼が選んだのは、男女ふたりずつ。そしてそのときは、老人とは別に暗い雰囲気の男もおり、逆に悲鳴や鳴き声を上げず、じっと耐えていたひとりの少年を選んで連れて行った。
あるときは、体格の良い青年たちが10名以上。
あるときは、双子が3組。
あるときは、妊婦ばかりが7名。
そんなことを続けていたらあっという間にこの町から働き手や若者がいなくなると思うだろうが、連れて行かれるのよりやや少ないぐらいの頻度で、この町に流れてくる者もいた。
彼らは軽い犯罪を犯した者だったり、他領で食い詰めた者だったり、あるいは一度この町から連れて行かれ、戻ってきた者だったりした。出戻りしてきた者は、たいてい別人のように性格が変わっていたり、心を壊したりしていたが。
そして、この町では子供を産むことと、その子供が『選ばれる』ことに報奨金が出る制度があったため、住民の数は安定していた。
糞のような仕組みだ、とジギィは思う。
だから彼は普段から間抜けそうな表情や素振りを演じ、髪を溶かさず、灰を練って顔に痣を装い、あるいは樹液でわざとかぶれさせ、防壁から来た連中に殴られれば醜いうめき声を上げた。それら偽装のいくつかは、妹が考えたもので、妹もそれを実践していた。
そうして14歳まで、どうにか無事に生き抜いてきた。
今日もまた、防壁の扉が開く重々しい音が聞こえ、近くにいた住民たちの空気が凝固した。前回が17日前だったことを思うと、間隔としてはかなり短い部類だ。ここ3回ほど対象を免れた南東の集落あたりが危険だが、多くても5人ぐらいまでで済みそうだ、などと自然に推測し、思わず唇を噛む。
慣れや油断は破滅への助走だ。
そして扉が全開になり、一拍置いて大勢が立ち入ってきた。その人数と様相に、心臓が大きく跳ねる。いつもとは明らかに違う流れだった。
大半が兵士なのは普段と同じだが、あの連中よりもかなり上等な集団に見えた。あいつらよりも武具や鎧が高級そうで、槍の穂先などが濡れたように輝いている。立ち居振る舞いにも数段上の風格があった。
そして、普段の兵士たちが守っているのはろくでもないステムナ大臣かサレン局長の子飼いたちだったが、今日は見たことのない顔ぶれだった。白い衣装に身を包んだ、清潔そうな集団。さらにその中心にいるのは、服装や雰囲気から異国の人間のように思える3人だった。
燃える夕日のような、橙色の髪を逆立てた背の高い男。やや沈んだ赤い髪を背中まで伸ばした女。明るい金髪を結んだ、同年代ぐらいに見える少女。決して貴族や高官には見えないが、集団の中にあって最も堂々と――より正しくは飄々としているように見えた。3人を囲んでいる連中は、明らかにその3人に意識を向けており、警戒しているようにすら思えた。
白衣の集団からひとり出てきた壮年の男が声を張る。
「この付近で流行病が発生した! ここに住む者たちにも感染の恐れがあるため、全員の検査を行う。また、体力低下が感染の確率を高めるため、臨時の炊き出しも実施することとなった。検査を終えたものから配給するので、これから告げる区域ごとに並ぶように。全員分あるため、決して騒がないよう。特に体調が悪いものは、個別に対応するので申請しなさい。以上だ。各区域の代表者は私のところへ来なさい」
ざわざわと、住民たちがどよめき、互いに顔を見合わせる。
ジギィは、男が話している途中からさり気なく路地の陰へ下がっていき、目星をつけてある建物の屋上へ駆け上り、粗末な塀越しに広場の様子を観察し始めた。
「はい君、いちばーん」
ぽん、と肩を叩かれ、ジギィは飛び上がった。
振り返れば、そこには先ほど集団の中心にいた金髪の少女がにこにこと笑っていた。
喉まで来ていた悲鳴を噛み殺し、少女に目を合わせたまま、視界の端を使って周囲に目を配る。
「説明するね」
少女は満足そうにしながら、てきぱきとした口調で喋る。
「ステムナ大臣は死んだ。風向きが変わった。この町も変える。君には一緒に働いてもらいたい。肯定なら検査と配給を済ませてから広場に残って」
脳裏に様々な疑問が生じる。
どんな変化なのか――どん底の今より落ちることはないだろう。
大臣が、なぜ――どうでもいいことだ。知ったことで厄介事が増える危険のほうが大きい。
どうして自分を――つまりは、場の読み方や身のこなし、あるいは判断の方向か速度を評価されたのだろう。
誘いを否定したら――聞いても仕方ないことだし、目をつけられた時点で今まで通りにはならない。
生じた疑問を自分で潰していき、どうしても必要な、疑問ではなく条件を、たったひとつだけ口にした。
「妹がひとりいる。頭は僕よりいい」
「わかった。連れてきて」
それで話はついたとばかりに、「じゃっ、私は2番目以降の声掛けに行くから」明るく言い残して、少女はまるで消えたかのようにその場を離れた。
広場に視線を向ける。
検査を終えた人たちの雰囲気が暗くなっていたりはしないし、配給へと進んでいった人数にも増減はなさそうだった。
そして、配給された食事をとっている人たちの表情。
「……腹は、減りっぱなしだしな」
独り言をつぶやき、ジギィは立ち上がった。
◇◇◇◇◇5日後
「はいじゃあ次、医局のコアキさん」
「ぐっ……、待て、有能な医師を引き抜かれると国民の生活がだな」
「治療の場にはあんまり出ない研究肌だとモカから聞いております」
「くそ、パ――いやちょっと待った」
「え? 『パス』ですか? あと1回ですけどいいんですか?」
「だから少し待て! ったく、次から次へとよく調べて来やがったな……」
国王の執務室。その窓際にある文机ではなく、中央に置かれた長机に向かい合っているのは叔父のファガンに対してレイラ姫とフリューネ姫。先ほどから旧ステムナ領へと移籍させる人材の交渉に熱が入っていた。例の『9人まで自由に引き抜けるが、2回まで拒否可能』という交渉条件で、彼女たちが勝ち取った権利だった。
カザンは部屋の入口近くにある事務官用の机で、先代王である父、それにステムナとサレンの亡き後を埋めるための膨大な仕事を進めながらその様子を眺めていた。
3日後には父の国葬が控えており、その準備もある。父が死んだ5日前より今日まで、カザンもファガンもろくに眠れていなかった。
――もっとも、カザン自身については、単に仕事量だけが不眠の原因ではなかったが。
怠惰で無能な王だとばかり思っていた父。
その父を弑して自分が王になり、この国を変えようと固く決意していた。
そのために長く大荒野で過ごし、自身を鍛え、頼れる戦士たちも仲間にしていった。自分ひとりの戦闘能力は、兵士ひとりの標準をさほど上回るものではないという自覚はあったが、ナナシャをはじめ規格外と言える者たちと連携しての総力においては、それなりの自負を持っていた。
しかし実際に行動へ移さんと、まずは最も自陣に引き入れたい人物であるファガンを助けに向かった先で、彼は目にした。レイラ姫と、その一行を。
彼らの異常とも思える強さに、衝撃を受けた。
巨大昆虫の群れ、サレンが差し向けた集団、そして、神の恩寵を発動した父。
半ば無我夢中でその戦についていったが、その最中でも大局を見据えていた叔父と、おそらくはそれに追いついていたフリューネ姫、その思考の速度と深さに、また別の力量差を思い知った。
さらには王城に戻ってから今日までに処理していった大量の仕事。その溜まり方と振り先の少なさから、今は亡き父の政治手腕や仕事ぶり、それどころか単に排除すべきと捉えていたステムナとサレンの持っていた利用価値まで、痛感することしきりだった。
「えーっと次は、税務官のマリエットさんね」
「……なんだ、あいつでいいのか? 他の奴と勘違いしてなきゃいいがな」
「え? 数字を独自の感覚で捉える恩寵持ちで、ステムナ大臣どころか先代王様の裏金まで密かに把握していた優秀な人のことですけど、勘違いしそうな誰かが他にいるんですかー?」
楽しそうなレイラ姫の言葉に、叔父が天井を仰いだ。
「兄貴、どうしてこいつを倒してくれなかった……」
「あ、ひどい。っていうかいいんですかそんなこと言って? こうやって前に決めた条件通りに交渉してるのがこっちの善意だってわかってますよね? 別に構わないんですよ条件ぶん投げてもっと強引に引き抜いちゃっても。ねえフリューネ?」
「そうですね。なにしろ『バストアクの王様』は、お姉さまに――あら? なんでしたでしょうか?」
不思議そうに頬に手を当て、叔父を見るフリューネ姫。
対する叔父は、地の底を這うような声で、
「……絶対服従、だったと思うぞ」
「ああ、そうでした」
音を立てずに両手を合わせ、優雅に微笑むフリューネ姫。
「あくまでも口約束、だったけどな。証文も保証人もないんじゃ、破棄するのは簡単だ」
「ええ、仰るとおりかと」まったく動じた様子のない彼女は、流れるように言葉を継ぐ。「口約束が有効であるためには、主に信頼関係か、力関係が重要となります。――是非とも、前者に依るかたちであり続けたいものですね」
「ああ、まったくだな……」
叔父の視線が、壁際の隠し棚に向く。入っているのは武器などではなく、秘蔵の酒だ。やけ酒にでも逃げたい気分なのだろう。
風を司る神、この国の王に恩寵を与えた守護神、ジスティーユミゼンがあのとき自分ではなく叔父を選んだことに、今となってはなんの異存もない。あの瞬間には、選ばれなかったことへの落胆をそれなりには感じていたが、その感情はこの数日で消化されていた。
「ところで今視線を向けたとこからすごくいい香りがしますけど?」
「誰かが香水でも零したかな……」
「あ、じゃあ掃除しちゃいますね」
「待て待て、後で誰かに命じるから――うわ壊しやがったな!」
「へえ、隠し戸なんですね。……ほうほう、これはまた高そうなお酒が」
「あら、色々と揃っておりますわね」
「……フリューネ、こないだから随分飲んでない……?」
――そして今この光景を目にしていると、叔父への同情や自分が王位につかなかったことへの安堵が、自嘲交じりに滲んでくるようだった。
少しだけ仮眠を取ろうと、部屋を出て廊下を歩く。
「あ、王子様、辛気臭い顔ですね」
包帯だらけのナナシャが、出窓に腰掛けて果実酒の瓶を片手に干し肉を食べていた。
カザンの部下のうち、最も怪我が重かったのに一番早く病院を抜け出し、外に落ちかねない座り方で窓から身を乗り出し、毒で内臓も少なからず痛んでいるところに酒と固形物を入れている。
……そんな様子を注意することは、既に大荒野にいた頃から諦めていた。
「寝不足でな」
「悩んだり苦しんだり悲しんだりする顔は好物ですけどね。途方に暮れてる表情で楽しめるほどの包容力はないですよ、私には」
適当にごまかしたカザンの言葉は、ナナシャには一切通じなかった。
「……そんなふうに見えているのか、私は」
「向かう先が見えなくっても、踏み出す気概は忘れちゃいけませんよ」
それだけ言って、ナナシャは酒に視線を戻してしまった。
同情する素振りや相談に乗る様子を見せず、ただ指摘だけをする彼女は、カザンの眼に清々しく映った。
「忠言、感謝する」
返事は、ひらひらと振られた片手だけだった。
自室へ向かう通路の少し手前には、弟妹たちの部屋へと続く分かれ道があった。弟ひとりと、妹ふたり。3人ともまだ幼いので、別棟で一緒に生活している。――幼いとはいっても、弟はあのフリューネ姫より少し下、という程度にはなっていただろうか。
ふと、父が最後に残した言葉が脳裏をよぎる。
少し悩んでから、眠気を噛み殺してそちらへと足を向けた。
驚きを隠す側仕えたちの反応に、これがどれほど珍しいことなのか自覚してしまう。自分が父を理解していなかったように、おそらく弟妹たちはほとんど顔を見せない自分のことを理解できていないだろうと苦い思いが走る。
側仕えに尋ねると、3人は遊戯室にいるということだった。先触れを出し、ゆっくりとそちらへ向かう。
てっきり遊んでいるのだと思っていた弟妹は、机に向かい勉強をしているところだった。自分がこの部屋にいたころは、名前の通り遊具ばかりで、飾り程度に本や勉強道具があったようなものだったが、今はいつのまにか本棚が増え、部屋の中央には白木の大きな机が置かれていた。
「兄様!」
妹ふたりが椅子を飛び降りる。駆け寄ろうとしたところを、弟が制した。はっとしたようにふたりも姿勢を正し、仲良くこちらへ歩いてきて礼をする。
「勉強していたのだな」
「はい。小兄様に教えて頂いてました」
一番下の妹――マァルが答えた。
「そうか」弟のレニスを見ると、どこか不安そうにこちらを見返してくる。「――偉いな」そう言うと、ほっとしたようにレニスの表情が緩んだ。
カザン自身は、レニスに対して勉強を見たことなどない。
『弟妹を、よく見てやれ』
父の遺言。
それについても、自分は弟に負けていた。
まったくもって、誰も彼にも負け続けだ。
苦笑するカザンを、3人が不思議そうに見上げている。
父の死を知ったとき、どうしただろう。泣いただろうか、まだ、よくわからないのだろうか。
――5日間、ろくに思い出しも気遣いもせず、放置していた自分に心配する権利はないだろう。
だから、これからだ。
「よければ、私も混ぜてもらえるか」
「――はい!」
目を丸くし、遅れて嬉しそうに笑うレニスと、その様子を見て楽しげに笑い合う妹たち。
まずは、できることから。
カザンは側仕えに茶を頼み、妹に背を押されるようにして低い机に腰掛けた。
◇◇◇◇◇◇◇7日後
バストアク王国の南東、人がどうにか歩ける程度の森をジガティスはひとり歩いていた。
ひとり――ではあるが、単身というわけではない。
彼の周囲には大小様々な昆虫が群れている。
とはいえ、イオリたちが戦ったような巨大型はおらず、最も大きいもので猫ぐらいの甲虫がいる程度である。
「移動用ぐらいは、作っておくべきだったかな……」
顔の周りを飛び交う、手のひら大の蚊に似た昆虫へ語りかけるように、軽く息を切らしながら彼は呟いた。
実を言えば、巨大昆虫はひどく運用が難しい代物だった。
生み出し、育て上げ、維持するための燃費が最悪なのだ。
ステムナになかば強要され、ファガンを監禁するための兵力として10匹を用意したが、それだけで人間の兵士400人を雇えるほどの費用がかかっていた。最初の3匹ぐらいまでは作るのも面白かったが、巨大化の方法をある程度確立させた後は、ただの重労働でしかなかった。
天然の巨大虫が巣食うジュイメーヌ巨大樹林があるというのもこの国に腰を据えた大きな理由であったが、そこの調査も芳しいものではなく、巨大化に関する研究はほぼ頭打ちの状態だった。
そして、そうしたあれこれもバストアク王国の資金を潤沢に使える立場だったからできたことであって、現在の逃亡する身には過ぎた代物と言えた。今連れている虫たちも、最低限の護衛ができ、かつ移動経路で狩れる果実や小動物だけで保たせることのできるよう厳選した数だった。
なにより、
「大きく、強くする方向では、あれらには敵わないよなあ……」
と今度は左の前腕に巻き付いてじっとしている黄色のムカデに話しかける。
神の恩寵を行使したバストアク王。
体積にしては重量の少ない昆虫では、限界まで大きくできたとしてもあの風に吹き飛ばされるだけだろう。
そして、ラーナルト王国の姫だというあの女性。
ファガンを抑えていたあの10匹を倒したというのも頷ける戦闘能力だった。いったい、どんな身体のつくりをしているのか。彼女の解剖ができれば、昆虫の強化にも目覚ましい改善が望めるかもしれないが、当分の間はアレに近づく気はしなかった。
「いや、期待していないわけではないよ……。要は、方向性と、適性と、案配と、尖らせ方だ……。あるいは君の子供が巨大化に最適な種へなってくれるかもしれないしね……」
足元を這う平べったい蜘蛛に笑いかける。
――バストアク王国、セイブル28世即位における大政変、通称『カディス平原の乱』。
その渦中にあって、目的の達成度合いという観点における勝者は2名。
新たな国王を支配下に置き、実質的に国盗りを果たした女、サクライオリ。
そして、先代国王と高官2名を相手に己の要望を通し、かつ彼らを死に追いやった原因であり、さらにはサクライオリの脅威を計ったうえで、その手が伸びる前にこの国から逃げ切った男、ジガティスガディア。
政変の火種とも言える2名の片方は、
「さて、次はどこでどんな虫を作ろうか……」
前方に見えてきた国境の山脈を見据え、楽しそうに目を細めた。