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■■譚  作者: 古風
3/7

三日目。

 ビビ、ビ、ビ、とざらついた低音が頭に響いて目が覚める。


「…………ねむい」


 目蓋をこじ開けてみれば、カーテンがきっり閉まっているのが見える。

 そこから影が窓を覆っているのを確認して、なお耳障りなアラームを鳴らし続ける目覚まし時計の頭を叩いて、叩いて、叩いて、叩いて叩いて叩いて止める。


「ああ、こんな時間か…」


 アラームを設定したのは自分だが、もう少し早い時間にしようかと考え、目まぐるしく変わっていく五桁の時間を前に、二度寝を諦めて布団から身体を起こす。


「ふああ…」


 欠伸をしつつ、流しに置きっぱなしにしていた薬缶に水を入れ、溢れてくる水に手を濡らしつつ、台所横にある二つ並びのコンロに火をつけて、置く。

 もう片方に置きっぱなしのフライパンへ、油をひいて火をつける。生暖かい風が吹き込んでくる冷蔵庫を開く。


「……ふああ」


 手を伸ばして初めに掴んだ肉を、フライパンにぶちまける。ついでに塩コショウを取り出して二度、三度と振りかけておく。

 油塗れの換気扇が、時折逆回転するのを横目に、開いた箪笥からはみ出た服を取り出して着替える。


「ふああぁ」


 漏れ出る欠伸を噛み殺しながら火を消す。肉が焼けた臭いが充満する。冷蔵庫から買い置きしているパンを取り出して、その上に焼けた肉を乗せてテーブルに置く。

 薬缶の火を止めて、カップを取り出して、中にインスタントコーヒーを入れて薬缶から湯を注ぐ。

 洗い物も減らしたいし、と金属製の鍋敷きをテーブルの上において、空となったフライパンを置く。


 適当な上に適当な、いつもの朝食を食べつつ、テレビをつけて赤い雲と青い太陽で覆われた天気予報と映像が乱れがちなニュースを流す。


 ゆっくりしたいところだが、時間がない。


 食器代わりにしていたフライパンを洗って、乾燥機において蓋を閉める。

 電球が明滅する鏡の前で歯を磨き、生温い水で顔を洗えば、眠気が飛んでいく。

 カーテンの外で影が動いているのを確認して、靴を履きつつ部屋を見回す。異常なし。


 荷物を持ってやや重い錆びた扉を押し開け、外に出る。

 引きつった音を立ててゆっくり扉が閉まり、錆びた鍵穴に鍵を差込み、何度か捻り、回す。


「さてと。今日も頑張るか」


 ぬめりを帯びた階段を慎重に下りて、出かける。

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