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■■譚  作者: 古風
1/7

一日目。

 ピピピピ、ピピピピ、と甲高い音が頭に響いてきて、目が覚める。


「ん…もう少し…」


 落ちそうになる意識をかき集め、目蓋をこじ開けてみれば、カーテンの隙間から陽光が差し込んでいる。

 その眩しさに目を細めながら、なおアラームを鳴らし続ける、デジタルの目覚まし時計の頭を叩いて、止める。


「もう…こんな時間か…」


 アラームを設定したのは勿論自分だが、割と余裕のない時刻を表示している時計を見つめること数秒。

 変わらず進んでいく時間に、仕方ないと二度寝を諦めて、布団から身体を起こす。


「ふあぁ……ねむぃ」


 欠伸を何度も繰り返しながら、流しで逆さにしていた薬缶に水を入れ、シンク脇にある二つ並びのコンロに火をつけて、強火にして置く。

 もう片方のコンロの上には、戸棚にしまっていたフライパンを置き、油をひいてから冷蔵庫を開く。


「あー…油入れたし、これでいいか」


 先に冷蔵庫の中身を確認してから、油をひけば良かったと後悔しながら、寝起きだからしょうがない、と自分に言い訳しつつ、卵とウインナーを取り出してフライパンに広げる。

 手を伸ばし、一応掃除はしたが、どうにもならなかった油塗れの換気扇。脇に垂れ下がっている紐を引いて換気扇を回して、火をつける。


 その間、適当に突っ込み過ぎて服がはみ出してる箪笥から、服を取り出して着替えていく。


「ふぁああぁ」


 なおも漏れ出る欠伸を噛み殺し、火加減も焼き加減も確認せず放置していたフライパンの火を消す。隣で湯気を噴いていた薬缶の火も止める。換気扇はしばらく付けておかないと、臭いがこもるので放置。

 冷蔵庫から買い置きしているパンを取り出し、そこで皿を出し忘れたことに気付いて、考えること数秒、パンを焼けた卵とウインナーを乗せたフライパンの上に置く。

 食器棚からカップを取り出し、インスタントコーヒーを入れて薬缶から直接湯を注ぐ。

 洗い物も減っていいし、とまた言い訳しながら、金属製の鍋敷きをテーブルに置き、その上にフライパンを乗せる。


 こうして出来上がったのは、適当な上に適当な、いつもの朝食。

 熱いところと冷たいところがあるウインナーを噛み締めつつ、テレビをつけて太陽が一面に並んだ天気予報とニュースを流す。


 ゆっくりしたいところだが、時間がない。


 食器代わりのフライパンを洗って、とうに壊れて物置と化している乾燥機に置く。

 磨いてるはずなのに、一向に綺麗にならない鏡の前で歯を磨き、冷たい水で顔を洗えば、眠気が飛んでいく。


 窓の鍵がかかっているのを確認して、靴を履いて振り返り、部屋を見回す。異常なし。


 荷物を持ってやや重い扉を押し開け、外に出る。甲高い音を立てて扉が閉まる。

 鍵穴に鍵を差込み、回す。


「さて、と。今日も頑張るかあ」


 階段を下りて、出かける。

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