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確信と決意

 高い天井の半分は削られ、曇った空を上に。

 みんなは倒れた。左右に見える雑草群に、僕は根性を分けて貰い。

 破壊された床を、しっかりと踏み締めた。


「おお――!!」 


 びきびきと鳴る血肉の叫びを無理矢理抑え、灼熱の連撃を叩き込むッ!

(めちゃくちゃ痛ェッ!涙が出んぜッ!!)

 休み無く、攻め続けろっ!!

(怪物が、なんぼのもんだってんだよッ)

 関係ねェッ!!んなことっ、知るかッ!!

 こいつはみんなを殺そうとして、実際に傷付けた!そんな奴を許せるかァッ!!

「おるアアァ――!!」

 怒りを燃やせ。憤怒を増して、まとめて奴にぶつけてやるっ。

「やるなッ!!貴様ッ!!」

 敵は僕の攻撃を受けて、堂々と正面から立ち向かう。

 斧の圧力はがっしりと揺るがず。しっかりと建った、強固な砦を連想させる男。

(斬り崩すッ!!)

 身の程なんて知ったことかよっ。落ちこぼれの僕には、色んな事が分不相応だ!

 それでも磨いてきたのが、この力!

 怪物相手だろうが、怯む事なんてありえねぇッ!!

(絶対に、打倒するッ)


「――ではッ!!もう少し力を出そうかッ!!強者よッ!!」


 ばかなっ!?

 奴の動きが更に上昇したっ。

「っ!?」

 一瞬前より、確実に速い身化・強力な武強っ!

 斬撃が当たらない!?

(まさかとは思ってたが、こいつは)

 今まで、僕達に合わせて戦っていたのか……!

 そんなことが、あってたまるのかよっ。

「気付いたかッ!そうだッ!!その通りッ!!【弱者いじめ】は、欠陥だからなァッ!!」

 そんな理由で、手加減してやがったのかっ!?

 まさか、あの短期防御も同じ理由で。

「そして私の完璧な防御ッ!!無駄な消費を抑えた、素晴らしき形ッ!!これぞッ!!パーフェクト・バトルゥッッ!!」

 自分に酔ってるように、怪物は高らかな声で肯定した。

(これほどの怪物に、勝てるのかっ)

 否だ。考えを間違えるなよ。

(ぜってぇ!!勝つッ!!)

 気持ちで負けてどうする、それじゃあ尚更勝てなくなるっ。

 僕の武器を、最大限に発揮するんだ!

「良い目だッ!!それだけは認めるぞッ!!欠陥者ッ!!だがだがッ!!」

 敵は斧を機敏に振りながら、お節介にも自らの意見を伝えてくる。

「いくらなんでも不格好すぎるなッ!!なんだッ!!そのフラフラな剣筋はァッ!!最初の勢いはッ!どうしたッ!!」

 うるせえなっ。言われなくても、分かってるよっ!

(体が上げる悲鳴は、どんどんと加速していた)

 少し動いただけで、突き刺すような痛みが襲ってくる。

 呼吸をするのすら苦痛な状態。狙いも上手く定まらない。

(だからってッ!!剣を止めたらよオォッ!!)


【そんなに怒るなって!悪かったよ!ジョークじゃないんだろ】

【おいらが見定めてやろう!資格があるかどうかを!】

【不思議な人だね。ロインは。そんな理由であたしを助けたの?】


(失うなんてっ、嫌なんだよっ!!)

 動けよ腕、もっと働けよ足。ポンコツ共がッ、情けねぇぞっ!

 そうしないと。勝てない・負ける・失う。


【まさか……あれ見てたのかッ!?】


「ああアッ!!」

「ぐっ!!これはッ!?貴様ッ!!」

 絶対に御免だ!そんな結果はッ!!

 だから僕がこいつを倒してッ。


【泣かないで、ロイン。もう大丈夫だよ】


「アアああアあァッー!!」

(大切な人達を、守るんだ!!)


「――気力だけで勝てるかァッ!!足りんわァッ!!」

 残酷な事実を叩きつける一撃は、そんな幻想なんて容易く砕いた。

「ぐッアッ!!?」

 肉体に響き渡る衝撃と、後方に流れていく刃の欠片。

 粉々に砕けた相棒。

(特質武器が、なくなった)

 それが意味するのは。絶対敗北。

 勝機の喪失だ。もう勝ち目なんて……。

「――ま、だまだッ」

 壊れた剣を床に投げ捨てる。

 あきらめねェ。

 拳一つでも、立ち向かってやるッ。


「――いや。結末ピリオドだッ!!!」

 

 命を刈り取るべく、上から黒い刃が迫り。


「させないッ!!」

 雷光を纏った盾によって、それは防がれた。

「ぬおッ!?まだ戦えるか!!貴様も!!」

 とても見慣れた後ろ姿。思い出と重なる彼女。

「メイッ!?なにをっ!?」

「決まってるでしょう!!ロインは退がっててっ」

 必死の姿勢で、怪物の攻撃を受け続ける大切なメイ。子供の頃から変わらない、僕等の一欠片。

「何言ってんだッ!!馬鹿ッ!!そんなボロボロでっ」

 見える腕と足は、痛々しく傷つき。

「ロインはそれ以上でしょっ!!――そんな辛そうに涙と鼻水だらけでッ!!なに言ってるのッ!!バカッ!!」

「なッ!!」

 逆に怒られたッ!?本当のことだがっ、ふざけんなっ。

「くそ!まだ戦える!」

 僕はメイと共に、怪物に立ち向かう。

「!?そんな体でっ」

「うっせェッ!!じっとしてられるかっ」

 敵をメイ一人に任せるなんて、そんなこと許せるかよ!たとえ、お前がそれを望まなくてもっ!いやでも体が動いちまう!

「おらあッッ!!」

 がたがたの拳で、怪物に殴りかかる。

「ごばッ!?」

 当然の如くよけられ、左のカウンターを食らって。

「……固いな。貴様ッ!またッ!強くなったかッ」

 受けた衝撃を壊れかけた両足で止める。自分でも驚くほど、底力が湧いてくる。

「ふんッ!!小癪ッ!!」

 怪物は、少しひび割れた己の手甲を確認。

「ロインッ!……なんでそこまでッ!!」

 殴られ、少し空いた間にメイが割り込む。一切の迷いない行動。

(お前がそういう奴だから)

 僕は必死になれるんだ。ここまで強く戦える。そのボロボロな姿を守りたいと。

 あの日から、僕にとってのメイはそういう存在なんだ。

 愛する者。だから。

「――僕の人生にお前がいてくれたから!!救われたんだッ!!」

 だから絶対に守る。失うなんて許容できない。

「変わることなくッ!!お前を愛してるッ!!それだけだッ!!」

 はっきりと言ってやった。当たり前のことではあるが、強い想いを込めて。

「……ッ」

 隣で戦うメイは、今にも泣きそうな表情で盾を構えている。

「戦闘中に告白とはッ!!余裕だなッ!!」

 余裕なんてねェよ!その愛する人を、今にもてめぇに奪われそうなんだからよ!

「てめぇはッ」

 絶対にぶっ倒す!!

「気合いではッ!!純然たる力量差はどうにもならんぞッ!!」

 奴の斧は更に力を増し、僕とメイに襲い掛かる。


「ならば、純粋に力で埋めるとしよう」


「なにッ!?――があッ!?」

 怪物の右頬に拳が突き刺さった。

 横から放たれた、雷光撃。

「マルスさんッ!!」

 戦士・マルスが、復活を果たした。

(いや、凄いダメージだっ)

 復活と言うには、体に見える傷は痛々しく。今にも倒れそうな外見。

「そんな状態でェッ!!どうにかできるとッ!!」

「やるしかない。そんな二人の姿を見たらっ」

「ならばッ!!さっさとくたばれッ!!見苦しいッ!!」

 怪物の一撃が、力を使い果たした戦士に向く。

「!?これはっ」

 向いた攻撃を防ぐ壁・ディフェル。見覚えのある、灼熱の盾が発生する。

「すまないな。大人がこの様でっ」

 僕達を庇うように立つ、ギザギザ髪の男は。

「ルドー!助かったっ」

「気にするな!それよりクルトを止めるぞ!」

「貴様らッ!!まだッ」

 にらみ合う戦士達。

 怪物・クルトが、苛つきながら斧を振り上げ。

「大人げないわよ!クルト!」

 細長い鎚が、がら空きになった背中に命中した。

(また、一人)

 長い金髪の女性戦士、アンさん。

「きっついが、こうなったらっ!」

 最後の一人も加わり、クルトを止める為に戦う。庇ったせいでダメージは深い筈、なのにっ。

「邪魔だァッ!!ゴミどもがッ!!」

 それでも尚、奴の勢いは止まらない。

 ならばと、その体に掴みかかる影があり。

「――ゴミをなめんなァ!!」

「根性見せたらァッ」

 あのアホ友二人っ!?なんて無茶を!

「ぐぐッ!!貴様ら!!どれだけ無様をッ!!潔く倒れろ!!」

 やばいぞっ!斧が、動きを抑える二人にッ!?

「――オレも同感だぜ、おっさん」

 斧を止める斧。激しい金属音と共に、頼りになるクソ野郎も現れた。

「……ナイスッ」

 身体はやせ我慢状態で。顔はどこか嬉しそうに。


「だがな、そういう人種は死ぬほど厄介だぜッ!本当に気に入らねェ!!」

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