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割り込み御免

【マックスドラゴンの特徴その一。息撃ブレス・ショットの際、大きな不快音を口から発する】


「……」 


【しかし、身動きできない程ではなく】


「――むしろ、対応に利用できるってな」

 右前方から放たれた攻撃は、木々を破壊して僕達に襲い掛かった。

 だが、僕の黄色い上着には傷一つ見当たらない。

「みんな。怪我はない?」

 僕の横から瞬時に躍り出たメイ、彼女が前方で展開しているブレードの派生技・防壁ディフェルの守りによって。

(構えた盾から……電光を発する、半透明の青白い――エレキの盾)

 消えていく防御、どこか美しくも思えるそれを見ながら、手足を動かし始める。

 足は攻撃の発射地点へ、手は背中にある剣へ。

 ジン太とメリッサも、先を行く。


(倒れた木々の中、そこに)


 白い体を持つ四足歩行生物、ワニのような奴はいた。

 倒れた樹木に足を引っ掛けないようにしつつ、急いで接近する。

(赤い目と斑模様――また、一点特化型か。任せたジン太!)

 ジン太は即座に、リュックから出した瓶を投げつけた。

 また、奴の肩から虹色の輝きが見えた気がする。

「ッ!?ギャッ!!」

 瓶はワニ野郎の顔に命中して割れ、中に入った液体が鼻を覆う。

 それで、奴は錯乱した様子を見せた。

(動きは中々厄介。なんで、動き封じのポーションってな)

 乱れた動きを逃さずに、次の行動。メリッサは黒を基調にした弓を用い、接近しながら矢を放った。

 それはいくつもの十字模様を浮かばせ、才獣の脳天に向かう討伐クロス武強ブレード

(が、しかし)

 がきぃんと音を響かせ、矢は弾かれてしまう。

(【相性が悪い】。だけじゃなく、【鉄鋼鎧】)

 特性の一つ、己の皮を尋常じゃなく強化する。

(メリッサの矢を弾くほどの強度――特化されている!)

 ワニ野郎は大きく口を開け、再びの不快音を響かせた。

 息撃ブレス・ショット・――二撃目!


「撃たせねェがな」


 ぐさりと・炎突がワニ野郎の頭から生えた。

「グ、ルァッ――!?」

 マックスドラゴンの頭に放った突きは、容易く【特性】を貫き、勝負を決める。

(一点特化による特性強化は、それによる穴まで特化してしまう)

 今回の場合は、鉄鋼鎧に対する陽炎ソルの一撃。

 特化させられた弱点によって、ワニ野郎は地に伏せた。

「……にしても、こんなにあっさりか」

 強くなったことを実感しながら、引き抜いた剣を見る。刃の先端に付着した、緑の血は。

(マックスドラゴンの血は、錆びやすいって聞くが……まっ、【習熟度】で耐久力を上げてるしな!)

 僕は、後ろのジン太とメリッサに顔を向けた。

「こらっ!きちんと確認しなさいなっ!ロイン!」

 いきなりメリッサに怒られるだと!ご褒美か!

「大丈夫だって!きっちり仕留めた!OK!」

 親指を立てて勝利宣言。手応えあったし、問題なし!

「もうっ、ロインはロインね。いつか後ろから刺されるわよ」

 言って、才獣に警戒しながら接近する彼女。心配性な奴だ。

「……いや、お前が過信し過ぎなんだ」

「うお、心読むなよ」

「やれやれって顔、してるぞ」

 やれやれという感じの横目で、ジン太に言われた。

 なんだよ、二人揃って。

「ふう……小物くさいぜ、ダチ公よ。疲れないか?」

「お前の不用心ぶりにな、ダチ公」

「不用心って!大物なんだよ!僕はっ。言い直せYO!ちゃんと勉強だってしただろ!」

「してた癖に侮りすぎなんだ。脅獣を舐めるな」

「舐めちゃあいない!純粋な姿勢だ!……だいたいお前だって、油断する時とかあるだろ」

「そんなこと……なくもないがっ」

 ジン太は横に立ってる木を見遣ると、小さくため息を吐いた。

「……とにかくだ、今回は上手く行ったが。またとは限らんし、瓶の数もそこまで多くない」

「はいはいよ。……お前が持ってきた才物、助かったぜ」

「礼ならキャサリンに頼む。あいつに貰った資料を元にして、フィルと一緒に作ったんだ」

「それならフィルさんにも」

「喜ばない。むしろ渋い顔するぞぉ。ははは」

 見透かしたような笑みを見せて、フィルさんのことを語るジン太。きちんと理解してんだな、彼女のこと。

「……うん、ちゃんと仕留めたようね」

 お、メリッサは確認を終えたようだ。

「おおーい!お前さんたち!怪我ぁないかっ?」

 オッさん達が追いついたか。……ちょっと驚いたが、難なく倒せたな。

「ロイン!無事っ!?骨折れてないっ?打撲はっ?」

 心配そうに駆け寄るメイ。彼女は僕の体を触って、怪我の有無を確かめる。

 僕って、そんなに頼りなく見えるのかYO!?

「だってロインのことだから……油断して、不意打ち喰らって、【なにィィ!?しまったぁっ】とか言って倒されるんじゃないかなって。ポーションは用意してあるよ!」

「具体的なイメージありがとうっ!ちくしょうっ!」

 そんな三下小物みたいな台詞言うかよっ。うん?ジン太君どうした?

「しかし、凄いな坊主達っ。あの脅獣を!」

「ええ、見事です。ボクの【才奥】を使う場面はありませんでしたね!」

 オッさんとマルスさんは、倒したマックスドラゴンを驚きの目で見ている。

「脅獣には、戦士団の戦士でも手こずるというのにっ!」

「一人ならだろ。三人いれば僕達でも」

 ワニ野郎の特徴、その二。複数人で一斉に掛かれば、混乱の為か数秒動きが固まる傾向あり。

「がはは!言うなっ、坊主!さすがにスカイ・ラウンドの優勝者は言うことが違う!」

「優勝者っても、ほどんどフィルさんのお陰だしなぁ」

「……それよりも、念の為ここから離れましょう。他の奴が来るかもだし。倒れた木に気を付けて……」

 

 ――敵意を伴った疾風が、僕達に向かって吹いた。


「なっ!?」

 僕が状況を認識した時には、事態が進行していた。

「――何者。……など、聞く必要はありませんか」

「……!!」

 鋭いナイフを受け止める、マルスさんの鍛え抜かれた左腕。体全体から流れる波動は、雷の証。

「……」

 ナイフを持ち、緑色のスーツを纏った人物。フードと黒いマスクを被っている為に顔は分からないが、体つきから言って野郎か。

(こいつは、もしや)

 正体を考える間にも、二人の強者による打ち合いは行われ。

「っ!やりますねっ」

「――ちィッ!」

 舌打ち混じりに後退する襲撃者と、怯まず応戦するマルスさん。

 僕の目には、マルスさんの方が優勢に見える。

(……まずいな、こりゃ)

 マルスさんは、戦闘に優れた第一団の戦士だぞ?それも新人ではなく、【殿堂入り】クラスの力を持った戦士の筈。


(それと互角並――と思われるのが後三人!)


「……」

「……」

「……」

 僕達を囲む様に、同じ格好の者達が姿を現す。

 近くの木々に隠れていたか?だとすると、こちらの手の内がばれているか。

(なのに、敵の力は不明って……)

 少し、やばくね?僕でこれなら、ジン太君はかなりびびってるんじゃね?

「なん、なのよ……!?」

 メリッサが不安気に呟き、弓矢を構える。

「ま、マットンの一味かっ!?」

 彼女だけではなく、全員が警戒を強めて緊張状態。

 いつ爆発しても、おかしくはない。

「に、追加かいっ」

 更に、一人の姿。

 だが、こいつは雰囲気が違う。

(フード付きの黒いマントを羽織い、白い仮面を被った)

 なにより違うのは、そいつの右腕に。


(――引き摺ってるのは、緑色の人間)


 どう考えても、襲撃者の仲間であり。

 見える鼻から血を流し、気絶しているようだった。

「……!?」

 動揺を見せる襲撃者達。

 この場の全員が、そいつに注目する。


「――去れ、儂の気が変わらん内にな」


 圧倒的な威圧感を与える声が、僕の耳に届いた。

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