表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/161

流せる男

「遅刻、遅刻~!遅刻しちゃう四!」


 三階、西校舎。

 教室から出た僕は、黒や白などで彩られた、静かな廊下を走っていた。

 廊下に描かれた模様は大きな黒い花の様なもので、多数のそれが、廊下の向こうまで等間隔で並んでいる。

 毒々しい感じがして、あんまり好きじゃねぇんだよな……。

 あっ、僕個人の感想ね。決して、自分の価値を押し付けてるわけではないんよ?

 昔は、この花の上から落ちたら負けゲームとかやってたな。別の校舎だけど。

(あの頃は、若かったな。自分を、世界を滅ぼせる何かだと思っていた)

 今考えると、恥ずかしい。

 僕なんて、ちょっと隠れた力を秘めているだけの、ただの人類なのによ……。

「あの時があるから、今がある」

 全ては無駄でなく、繋がっているのだ。

 それこそが僕等の歴史、人類の歩んだ道。とても、価値があるものなんだ。

 だから。


「――刻まなきゃ、新たな一歩」

 僕は、歴史に残る一歩を踏み出そうと――。


「ストップだ。どあほ野郎」

 した所に、顔面目掛けて強力な一撃が入った。

 走る痛み。

「ぐぎゃああっ!?」

 後方に吹き飛ぶ、僕の体。そのまま床に吸い寄せられる、僕の後頭部。

 このままだと、頭を強打!?


 ――身化ストロング。発動!!


 それによってパワーアップする、僕の肉体。

 強化される、三要素。


 攻撃上昇。パンチの威力が上がったりする。


 防御上昇。体が丈夫になったりする。


 速度上昇。めっちゃくちゃ速くなっる!


「ほああっ!!」

 床に両手をつき、そのままグルッと後方回転。

 見事に着地する、僕の両足。

(75点って感じ。僕の身化(ストロング)の総合評価は【サンド】。つまり普通だからな)

 両手をつける時の声がダサいな。ほああ、ではなく、ふんっ、とかの方が……。こんなんじゃ、メイに嫌われるかも。

(んなわけ、ないな!)

 杞憂だと考えながら、正面に仁王立ちで立つ襲撃犯に目を向ける。

 廊下左側の教室内で、待ち伏せてやがったな。

「ゴンザレス!」

 その男は、刈り上げた赤髪、人相悪すぎ、僕より高い身長、前を開いた紺色の男子制服、といった外見で、廊下に立ち塞がってやがる!

 前開いて腹筋見せつけて、気色悪いわ!野郎の体とか、誰が得!?

「いきなり殴りかかるとか、どういう教育受けてんだテメェ!」

「……」

 びきりと、ゴンザレスの額から音が鳴った気がした。

「おめぇに言われたくねぇよ。校内裏ランキング、ウザいやつ部門一位さんよ」

「はい?」

 校内裏ランキング?ああ、あったなそんなの。別に興味ないから忘れてた。

 メイを一位にする為に票操作しようかと思った時もあったけど、そんなことして彼女を狙うライバルを増やすの嫌だし、自力で一位になれるだろうし。

「どうでも良いわ。そんなん。僕には、愛するハニーがいるからな」

 他人の評価とか、正直どうでも。

「愛するハニーねぇ……」

 くっくっと、笑いやがるゴンザレス。

「なにが、おかしい」

「おめぇとあいつじゃ、釣り合わないだろ。どう考えてもよ!メイは校内上位に位置する優等生、おめぇは校内の底辺!落ちこぼれ!」

「……」

 その通りではある。僕は確かに落ちこぼれで、他より生まれつき劣っているだろう。隠されし力も、まだ目覚めてくれないし……。

 ただそれは、生まれ持った力がそうだというだけの話。

「いつの話をしてるんだ。お前は」

「……あんだと」

 僕は、ある日を境に決意した。

 その強い決意は、僕を落ちこぼれから引き上げてくれたんだ。

 その甲斐あって、今では学内で、そこそこの強者になった。

 これに秘めし力が加われば、世界征服もできるかもしれない。僕は平和主義者なので、そんな野望は持たないがね。

「……本当、目障りだぜ。なんで、おめぇはよ!!……水の波動っ!!」

 

 ――苛立ちの言葉と共に、ゴンザレスの肉体から青い霧が発生した。


「!!、武強ブレードミストか!しかも、肉体の強化!」

 青い霧の、武強。

 武強で底上げされる、主な二つの要素。

 

 武強の攻撃上昇、よく斬れるように。

 

 武強の防御上昇、頑丈に。

 

 ブレードにはいくつか種類があって、強化できる武器のタイプによって、ソードスピア弓矢アローシールド等に分けられる。

 中でも、肉体ボディのブレードは、【習熟度】が早く上がるのが特徴だが。

「いつの間に!結構、苦手じゃなかったか。ていうか、無断で才力を使うのはアウト!先生にいってやろ!」

「オレにかかりゃ、こんなもんよ!さあ、かかってきな!おめぇは素手だからな!先手はくれてやんよ!雑魚が!」

 両拳を戦闘状態にしながら、ゴンザレスは僕を挑発する。

 なんでイチイチ、お前さんの相手をしなければならないのか!本当に、傍迷惑な野郎だぜよ!

「いやだ!僕は、早く授業に行くんだよ!どきやがれ!」

「はっ!どうした!びびってんのか!?腰抜け!!」

 右拳を何度も突き出しながら、挑発を続けるゴンザレス。纏ったミストが、揺れ動く。

 やれやれだ。安すぎる。

 流せる男な僕に称賛を。

「今度の大会で、あの糞金髪女もぶちのめしてやるからよ!まずは、おめぇだ!この糞底辺――」


「上等だっっっ!!!ボケええええええええええええぇぇぇっっっ!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=142239441&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ