第十六話 ていうか、エセ関西弁登場。
「この紋所が目に入らぬか!」
どぅわああああん!
「ここに居られる方を何方と心得る!? 恐れ多くも元女王、サーシャ・マーシャ陛下で在られるぞ!」
「ええ!?」
「ま、まさか……」
「じょ、女王陛下……!?」
「皆の者。陛下の御前である。頭が高い、控えおろう!」
「「「は、はああ!」」」
うーん、まさかこれを空港でやることになるとは……。ま、どちらにしても私達はこのままだと火星から出れない状態だったから、この事件に紛れて宇宙船にさえ乗れれば……あとはニーナさんが何とかしてくれる。
『……これにて一件落着!』
ん? 桜吹雪の奉行が混じったかな?
火星でかなりの悪代官……代官じゃないけど……を裁き、そろそろ行く場所もなくなってきた。
ちなみにホントのマーシャンは。
『…………まだ時間かかるそうよ。漸く10%くらいだって』
……だそうだ。マーシャンも作業に集中してるみたいで、最近は紅美にちょっかいを出してこないらしい。
『毎回返り討ちにしてるから大丈夫だけどね。お陰でガンブレードの練習にもなるし』
……毎回マーシャンは紅美にメッタ斬りにされているようだ。
「おい、女王達はどこだ!?」
「まだ近くにいるらしいぞ! 捕まえろ!」
あらら、私達を追ってきてる連中が紛れ込んだか。騒ぎが大きくなってきたから、こういう場合は。
ポイッ ゴトッ
「ん? 何か落ちて……そ、総員退避! 退避ぃぃぃ!!」
……どっかあああああん!!
「「「うわわわわわっ!?」」」
よし、足が止まった。次は。
ひゅ〜……ゴトッ
「ま、また爆弾だああ!」
「うわあああ! 逃げろおおおっ!」
ところがどっこい。
…………………………ポポン
「へ? ポポン?」
「こ、これ……ただのクラッカーですぜ!?」
「ふ、ふざけやがって……!」
いい感じに頭に血が上ったところで、えい。
ひゅ〜……ゴトンッ
「ま、また落ちてきた!」
「クラッカーと同じ形だな」
「どうせまた偽モノなんだろうよ」
ところがどっこい。
……どっかあああああん!
「「「ぎゃあああああああああっ!!」」」
よし、増援は叩いた。あとは合流するのみっと。
「う、ううう……や、やられた……」
「いてえよ〜。いてえよ〜」
「何や何や、雁首揃って殺られたんかいな!」
……んんっ!?
「し、死んでませんよ、俺達は!」
「死んだも同然や。そないな怪我しといて、どうやって戦うねん」
あ、あのエセ関西弁は……エリザか!
「しゃあないな、あんたらは一旦退がっとき。後はウチが引き受けるで」
「も、申し訳ない」
あっちゃあ〜……エリザが出てきちゃったか。これは厄介ね。
「…………さーて、周りには誰も居らへん。出てきたらどうや、サーチ」
……サーチ……か。サーチんとは言わないってことは、エリザも敵か……。
スタッ
「……久しぶりね、エリザ」
「久しぶりやな。まさかこうやって違う立場で向かい合うとは思わなんだで」
「そうね。その点に関しては同意するわ」
「……少し前に、元仲間を散々痛め付けたそうやな。元とはいえ仲間やったヤツに刃を向けるとは、どういう了見や」
「……誰に聞いたの?」
「ヴィーや。それがどないしたんや?」
そーか、ヴィーか。なら。
「あいにく、あんたと長話してるヒマはないからね。一瞬で決めさせてもらう」
「一瞬でって……随分とナメられたもん……や…………なっ!?」
「そろそろ効いてきたみたいね。どうかしら、無味無臭の痺れ毒。効果抜群でしょ?」
天井裏から降りてくる前に、≪毒生成≫で作って撒き散らしておいたのだ。
「う……ひ、卑怯やで!」
「卑怯で結構よ。今は手段は選んでられないから」
「人でなし! 冷血女! 最低やで!」
はいはい。
「貧乳! ペチャパイ! 洗濯板!」
……っ。
「あ、あいにくと、今の私は貧乳には該当しないのよ」
「何言うてんねん。ウチより小さいくせに」
ぶちぃ
ジャキン! ダダダダダダダダダダダダ!!
「うわわわっ!? う、動けんヤツにマシンガン向けるなや!」
ダダダダダダダダダダダダ! ビスビスビス!
「あだ!? いだだだだだだだ!! 当たってる! 当たってるって!」
ひゅ〜……ゴトッ
「え゛。マ、マジで死ぬってえええええっ!!」
「あんたのことは忘れないわ……さようなら」
「ちょっ! 堪忍や! 堪忍していや! 誤解で殺されるなんて嫌やあ!!」
はい、ゲロッた。
……ポポン! ポンポン!
「あああああ…………あ?」
「やっぱりね。あんた、私を殺す気なんかさらさらないんでしょ?」
「へ? ど、どういう事なん?」
「だから……あんたもリファリスも、私を狙うつもりはさらさらないってわかってるっての」
「………………誰も居らへんな」
「ええ。あんたが追い払ったし」
「ふはぁ……ならええか」
エリザは私に向けていた殺気をサッと引っ込めた。
「ウチらは現状がようわからへんのや。突然ライラが陛下やサーチんの命を狙い出した聞いた時は、何が起きてるんかサッパリやったからな」
「……リジーは?」
「ライラの異変の後、突然行方を眩ませたわ」
……リジーもか。
「なあ、何が起きてるん? リファリス様もウチもサーチんらが突然指命手配されてから、軍を動かせって責っ付かれとるんや。今は適当な理由ではぐらかしとるんやけど、いつ強制的に動く事になるやもしれん。なあ、何があったんや?」
……今はリファリスとエリザを信じるしかないか。
「実は……」
「……つまり、マーシャンのやろうとしている事に反対してる〝飛剣〟が、サーチん達を孤立させるん為に、≪万有法則≫っちゅー反則技使った……って事やな?」
「まあ、大まかに言えば」
「何や、自分達のパーティの揉め事を宇宙規模で巻き込んだだけやん。あっほくさ」
まあ……そうやって言っちゃえばそうなっちゃうわよね。
「わかったわ。ならウチからリファリス様に説明して、サーチんが逃げやすいようにしたる」
「あ、ちょっと待って。リファリスに言うのは待って」
「へ? 何でや?」
「そのね……リファリスは一番院長先生になついてたから……」
「…………ああ、そやな。リファリス様がサーチんに味方するいう事は、〝飛剣〟と敵対するに等しい事やもんな」
「そう。だから……」
これは私がしなければならないことだろう。同じ先生に育てられた者として。
「……私が、話すわ」
例え、これで道を分かつことになろうとも。
次回、リファリスと対談。




