表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
992/1883

第十四話 ていうか、火星中で鬼ごっこ。

 連日ナイア達に追いかけ回されるハメになった。


「居ませんわね……」

「どこに逃げたの!?」


 ふーい、危ない危ない。段々とこっちの動きを把握し始めてきたわね。


「……仕方ない、今回は諦めて次の町へ行きましょ」


「へ? いいんですか?」


「あのね。ヴィー達の目を逃れながら温泉に浸かるなんて器用なマネ、私は絶対にイヤだから」


 ゆっくり浸かってこその温泉なのに、ササッと入るだけなんてムリ。それくらいなら入らない方がマシだわ。


「ナイア達が気づく前に町を出るわよ。ほら、早く!」

「あ、はい」


 私達はチェックインしてた旅館を急きょキャンセルし、徹夜で次の町へ向かった。



「……もう着いているはずですわよね……」

「いないね、サーチ」


 く……! 夜通し歩いてきたのに、もうあいつらいるし……!


「空飛べるナイアがいるんだから、そりゃ早いわな」


「まあ……ね。空と陸とじゃスピードが違いすぎる……」


 町の入口で張り込まれたんじゃ仕方ない。


「みんな、悪いけど前の町に戻るわ」


「「『…………へ?』」」


「食料もそれそろ調達しないとマズいし、何より……」


 震える左手を見せる。


「私の身体が温泉を求めて止まないのよ!」


「「『温泉中毒!?』」」


「もう一週間以上も温泉に浸かってないのよ!? もう身体の温泉成分が抜けきって、関節を蝕み始めてるわ!」


「「『そこまでなの!?』」」


「さあさあ、前の町まで走るわよ! 遅れるヤツは見捨てるからね!」


「「ひ、ひええっ!」」



 ……結局有言実行し、私達はずっと走り続けて前の町に戻った。



「はあ、はあ……つ、着いた……さ、さあ、温泉よ……!」


「ひい、ひい……ちょ、ちょっと待てよ」

「かひゅー……かひゅー……」


 倒れたエイミアを介抱してるリルを無視して、銭湯に駆け込む。


「大人一枚!」

「はいどうぞ」


 代金を払ってロッカーのカギを受け取るけど、移動しながら脱ぐ。脱いだ服は全部魔法の袋(アイテムバッグ)に放り込む。


 ダダダダダ! ガラッ


「むっはあああ! 温泉よおおおっ!」


 ばっしゃああん!


 誰もいないのを確認してから、やっちゃいけない飛び込み。ていうか、身体を洗ってから入りましょう。


「ふはああああぁぁぁぁ……五臓六腑に染み渡る……」


 しばらく蕩けていると、脱衣場で慌ただしい声が。まさか。


「誰か居ますわ! サーチではありませんの!?」

「でもロッカー使ってる形跡はないね」


 ちぃぃっ! もう嗅ぎつけてきやがった!


「リルさん達はどうしますの?」

「ヴィーに頼んだ。今ごろ捕まえてると思う」


 ガラッ


「……居ませんわね」

「もしかした湯船に潜ってたり……しないか」



「ああ、もう……!」


 素っ裸で路地へ飛び出す。どうにかナイア達の目を誤魔化して脱出したのだ。


「サーチ!」

「ヴィーが追ってきてます!」


 私を見かけたリル達が駆け寄ってくる。


「ヴィー相手によく逃げてきたわね!」


「エイミアが全力の≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)をブッ放したんだよ。ヴィーも無事からいいが……」


「……ま、大丈夫でしょ。それよりこの町から脱出よ!」


「それより服着ろよ! 余計に目立つんだよ!」



 無事に温泉成分を補充することに成功した私は、そのまま火星の荒野へと姿を消すことにした。


「食料は心許ないけど、節約すれば何とかなるし」


「ま、現地調達できるしな」


 火星には元実験生物の植物モンスターが蔓延ってるからね。

 え? 全身真っ黒な人間みたいなのはいないのかって? いるわけないでしょ。


 …………ィィィィ


 ん? この音は……?


「……何か……飛んでくるな」


 リルも気づいたようだ。飛んでくるなら間違いない。


「ニーナさん、見えなくなる結界ってある?」


『ありますよ……≪不可視の囲≫』

 ぱきぃん!


 私達の周りを結界が広がる。


 ……ィィィィイイイイィィィィ……


 ……おお、ドップラー効果。


「……これは……完全に読まれてるな」


 ま、ヴィーもナイアもいるからね。私の行動を予想してるでしょうよ。


「だったら予想外なことをするまでよ。予定変更、もう一回町に戻るわ」


「へ? 町に?」


「で、戻る途中でUターン。再び荒野に向かう」


「……?」


「で、行ったり来たり行ったり来たりを繰り返し……最終的に町に戻る。あとは隙を見て内湯……じゃなくて宇宙に向かうわ」


「内湯って……温泉成分が切れかかってません?」


 ん〜……ヤバいかな?



 作戦を決行して三日後。


「う〜……温泉温泉……お・ん・せ・ん……」


 ヤバい。きた。


「ま、まさか温泉中毒の禁断症状か? マズいな……」


「な、何か手は無いんですか!?」


「ん〜……いつもなら飲む温泉を持ち歩いてるんだけど……」


 補充するヒマがなかったのよね……。


「ど、どうしましょう!」

「何か代わりになるモノはないのかよ!?」


「代わりになるモノなんて……そんな簡単に」


 念のため、魔法の袋(アイテムバッグ)内に温泉ボトルが残ってないか探すけど……ない。


「ど、どうしよう……ん?」


 こ、これは……私の目に止まったのはダウロの温泉の源。要は入浴剤だ。


「こ、これなら温泉成分満点だろうけど……」


「ん? 温泉の源か! それだ!」


 そう言って私から奪い取る。


「ちょっと! 何すんの……よ……ていうか、その漏斗は何よ?」


「エイミア、いいか。緊急事態だ、本気でいくぞ!」

「は、はい! ≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)!」

 バリバリバリ!

「しびびびびびびびびびぃ!!」

「よし、サーチの動きが止まった! 口に漏斗を!」

 がぼっ!


 もがっ!?


「水と温泉の源を流し込みます!」

 どぼどぼどぼっ!

「がぼぼっ! ごぼぼぼっ! ぶごぉ!」


 な、なんつーことを……! く、苦し……!


「おらおらおら、手を緩めるな!」

「リル、顔が笑ってますよ?」

「エイミア、お前もだぞ?」


 お、覚えてなさいよおおおっ!



「げほげほげほ! ごほごほっ!」


「大丈夫か〜? サーチ……ぷぷ」


「リル、笑うと悪いですよ……クスクス」


 あ、熱い……身体の中が……熱い!


「ぅぅぅ……ぅぁぁぁあああ……」


「? サーチ?」

「な、何か様子が……」


「あぁぁぁ……ああああああっ!!」


 わ、私が私じゃなくなって……ダ、ダメ! 抑えられない……!


「ああああアあアああ…………ガアアアアアアアアアア!!」


「サ、サーチの足に……爪が!?」

「背中に羽が……ま、まさか!?」


「アアアアアアアアアア!! グァアアアアアアアアアア!!」


「サ、サーチが……≪獣化≫(アーマード)を……!」

サーチ「私の理性が残っているうちに、さっさと逃げるんだ!」


リル、エイミア「「それは違うヤツ」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ