第十話 ていうか、賞金稼ぎ♪
「ほら、見てください! 応援メッセージが次々と入ってきてますよ!」
「あはは、この似顔絵って私達かな? ちっちゃな子が書いたんだろうけど、よく書けてるぜ」
世直し旅が始まってから一週間。火星だけでも汚職は相当数あったみたいで、もう四人はブタ箱にブチ込んでいる。しかもそれを面白おかしく伝えるメディアもあり、私達の人気はジワジワと上がっていた。
で、そのことが私達に新たな危機をもたらしつつあった。
カチャカチャカチャカチャ
計算機を叩く音が響く。
カチャカチャカチャカチャ……バァン!
「ひぇ!?」
「な、何だよ!」
「…………ない」
「は?」
「……足りない。足りない足りない足りなああああああああい! お金が全っ然足りなああああああああい!!」
「そ、そうなんですか?」
「そりゃそうよ! 支出ばかりで収入0なら、赤字になるに決まってるでしょうが!」
世直しなんてお金にならないのが普通なんだよ!
「そ、そんなこと言われたって……前に売りさばいたレアメタルのお金は!?」
「この船の改装費で全部飛んでったわよ」
「サーチが攻略したスライダーの賞金は?」
「だから、船の改装費で全部飛んでったわよ」
「ま、待てよ! 軽く五億エニーはあっただろ! それが全部なくなったってのか!?」
「当たり前じゃない! 船を改装するのにどんだけかかると思ってんのよ!」
「うぐ……ニ、ニーナさん、そうなのか!?」
『はい。見積書から領収書まで確認させていただきましたが、間違いありませんでした』
「そ、そうか……ニーナさんがチェック入れてるんだから、間違いないか……」
「そういうこと。ちなみにだけど、エイミアが助けた人達にお金を渡したりしてなければ、もう少し何とかなったと思うんだけど」
「ひうっ!? ご、ごめんなさい……」
……まあ、エイミアのおかげで救われた人達がいるんだから、あまり責めることはできないけど。
「……なら収入面を何とかするしかねえな。また海賊するか?」
気軽に海賊らないでください。
「あのね、ニーナさんと一緒に顔を晒しまくってるあんた達が海賊ったら、たちまち評判が悪くなるわよ。それこそブラッディー・ロアの思うつぼじゃない」
隙を見せたらとことん追い詰めてくるわよ。なんせ相手は院長先生だからね。
「な、ならいい考えでもあるのかよ?」
「……一番顔を晒してない私が動くしかないでしょうが」
みんなとは別行動をする。
「とりあえず手っ取り早くお金を稼ぐには、賞金首が一番だからね」
この周辺で指名手配されてる凶悪犯をピックアップし、キュアガーディアンズじゃなくても賞金が貰えるエリアもピックアップする。
「よし、まずは覗きと痴漢の常習犯、〝尻撫〟のプロイかな」
微妙に私の〝闇撫〟と被ってるところが気に入らない。
「えっと、こいつの行動パターンを端末に入力して……次回行きそうな場所を予測っと」
最近は「名探偵アプリ」なんてモノがある。要は犯罪者の行動を予測してくれるアプリで、正直な話「需要あるのかしら」って思ってたけど、案外バカにできないわ。
「かなり本格的なソフトなのよね。要は一般人が犯罪者から逃れるためのアプリなんだろうけど」
案内してくれるマスコットキャラクターが、頭脳が大人な子供探偵なところも◎。
「……ふむ、この女子寮が一番怪しいか。からこの辺りで張り込みして……」
「きゃああああああ! チカンヘンタイゴーカンマーーー!!」
どごっ!
「へぶぅ!?」
膝が鳩尾に刺さり、〝尻撫〟のプロイは昏倒した。
「よーし、一人目ゲット」
手錠で拘束すると、借りてきたトラックの荷台に放り込む。
「あと、この周辺で捕まえられそうなのは……連続強盗犯と組織のボスくらいかな。特に組織のボスは賞金額がハンパないから、絶対に押さえないとね」
私は再び「名探偵アプリ」を起動した。
ドサン!
「いってええ! もう少し丁寧に扱いやがれ…………って、何だこりゃあ!?」
トラックの荷台に転がされた組織のボスの周りには、同様に拘束された部下達と悪名高い犯罪者で溢れかえっていた。
「ボ、ボスもやられたんですかい」
「リ、リックもか! まさか組織の構成員全員か!?」
「そのまさかでさあ。一エニーでも賞金がかかってるヤツは根こそぎでさあ」
「く、くそ、ダンバルの旦那は何してやがる! こういう時の為に常々賄賂を送ってたってのによ!」
「ダンバルの旦那ならボスの隣でさあ」
「え……ま、まさかダンバルの旦那まで!?」
私も世直しに貢献しなきゃっと思って、捕まえておきました。悪いことしてた証拠は山のようにあったしね。
「お、お前は何なんだよ! 一体何が目的なんだ!?」
「ぶっちゃけ金。あんた達を突き出せば、かなりの額の賞金が貰えそうだからね」
「金か!? 金なのか!? だったらいくらでも払うから、見逃してくれねえか」
「あー、つまり結構お金を持ってるわけね。ならそれもいただこうかしら」
「はああ!?」
「ほら、ちゃっちゃと金の在処を吐きなさい」
「だ、誰が喋るかバーカ!」
「でしょうね。だったら……えい」
ぷすっ
「深爪いやあああああああああっ!?」
「ほーらほら、指はあと十九本あるわよー。ついでに」
ぼぐっ!
「ぎぃやあああああああああああっ!!」
「【ぴー】は二つあるわね。さあどうする?」
「は、話します! 話しますから堪忍してええええええっ!」
「……はい、確かに賞金首いただきました。これが賞金ね」
「あざーっす!」
全部で二千万エニー! 儲かった儲かった!
「それにしてもキュアガーディアンズじゃないフリーの賞金稼ぎなんて珍しいね。どっから来たんだい?」
「あ、それは〜……あ、あはは、ちょっとキュアガーディアンズで本部と揉めちゃって」
「ああ、なるほどね。よくあることだ」
「あはははは〜……深く聞かないでもらえると」
「わかってるよ」
……キュアガーディアンズと距離を置くエリアがあって助かった……。
そのあとに組織の隠れ家を急襲して資金を強奪。
「ち、ちくしょう……がくっ」
「うっわ、億近くあるじゃない! 儲け儲け」
よっし、これで財政難は脱出だぜぃ!
次の日。
『賞金首がまとめて捕縛される!』
『西エリアを牛耳っていた犯罪組織が壊滅!』
『これも女王陛下の世直しの一環か!?』
新聞やテレビにはいろいろな憶測が飛び交っていたけど、ただ私達の懐が寂しくなってただけです。
『女王陛下、今度はダンバルエリア議会議長の不正を暴く!』
ついでに隠れ蓑の世直しも絶好調です。
どう考えてもお銀。




