第二話 ていうか、キュアガーディアンズ除名されたから、海賊に私はなる!
エイミアが味方でいてくれた。これがどれだけ心強かったか。
「サ、サーチ、そ、その……」
「……ぐすっ……ご、ごめんね」
「……いえ。鬼の目にも涙ですね……痛」
うるさい! こういう感動的なシーンなんだから、茶化すんじゃないわよ……!
「……サーチ、良かったです。無事に合流できて」
「……うん」
「サーチ、私キュアガーディアンズから除名されちゃいました」
「……奇遇ね、私もよ」
「そうなんですか。気が合いますね」
「……エイミア」
「はい?」
「私と一緒にいるってことは、果てしない棘の道でしかない。今ならまだ戻れるわよ?」
「……サーチ、さっき言ったじゃありませんか。私はサーチに絶対に味方するって決めているって」
「……エイミア……」
「〝知識の創成〟の時も、七冠の魔狼の時も、サーチが私を助けてくれました。だから、今度は私がサーチを助ける番です」
「……エイミア…………もう、仕方ないわね」
おもいっきり笑顔を向ける。
「エイミア、また二人だけに戻っちゃったけど……また二人から始めようか?」
「はい! リルはいませんけど、もう一度竜の牙折り再結成です!」
私とエイミアの手が合わさる。すると。
「おいおい、冷たいな。私は仲間外れかよ?」
「!?」
「その声は……!」
柱の影から姿を現したのは。
「「リル!!」」
とりあえず船に戻り、詳しい事情を聞く。
「……まずはリル、念のために確かめるわ。敵……じゃないわよね?」
「ああ、違うよ。エイミア、お前から私が敵じゃないってわかるだろ?」
「……はい、違います。それは間違いありません」
……? どういうこと?
「サーチは見てないんだな……急に敵対した連中は全員、額に妙な模様が出てる」
「模様?」
「ああ。ターニャもそうだったから」
タ、ターニャちゃんまで!?
「いつも通りにご飯食べさせてたら、急に額に模様が浮かんでな。何だろうと思って艦橋に行ってみたら、ヴィーもナイアもエカテルも同じだった」
ナイア……エカテル……。
「で、ついさっきお前らの船に攻撃を始めたからさ、これは変だと思って止めたら……」
リルは右手を見せる。そこにはくっきりと歯形が残っていた。
「……ずいぶんと早い反抗期だ」
「……リル……」
「サーチ、こうなった原因はお前なのか? 一体何が起きてるんだ?」
……私は目を閉じて……決心した。
「……全部話すわ……」
軽蔑されたとしても……真実を伝えなければならない。リルも当事者なのだから……。
「……それじゃあ……ヒルダさんが……」
「……ええ」
リルに向かって正座し、頭を下げる。
「サ、サーチ!?」
「ホントにごめんなさい! 私が何も考えずに行動したもんだから、リルは……ターニャちゃんに……!」
「……サーチ、頭を上げな」
ゆっくりとリルを見上げると。
ぽかっ
「痛」
「バーカ。誰もお前を恨んでねぇよ。つーか、マーシャンを見捨てなかったのは当たり前のことだ」
「リ、リル?」
「今回の一件で一番悪いのは、どう考えてもヒルダさんだろ。いくら分が悪いからって、やっていいことと悪いことがある。今回のはとびきり悪いヤツだな」
「……うん」
「だからサーチ、私はお前には悪いがヒルダさんを……いや、ヒルダを一発ぶん殴らないと気がすまないんだ」
「サーチ、それは私も同じです」
「…………リル、エイミア、悪いんだけど」
「「…………」」
「私はね……殴るだけじゃ飽き足らない。私が一番大事にしてる仲間を踏みにじった行為……どんなことをしても許すことはできない」
「「……!」」
「私は……院長先生を……いや、〝飛剣〟を……殺すわ」
「……そっか。サーチがそう言うなら……止めないよ」
「今回は……私も止めません」
「……リル、エイミアにも言ったけど、私と来るのは棘の道よ。それでも……いい?」
「愚問だな。私も娘を操る真似をしてくれたクソヤロー、絶対に許さない」
リルも決心してるようだ。なら。
「それじゃここに竜の牙折り再結成を宣言します!」
「おお!」
「はい!」
「そして、仲間をブッ飛ばしてでも正気に戻して。必ず〝飛剣〟のヒルダに復讐してやるんだから!」
「「おおーっ!!」」
こうして。
私達は〝飛剣〟のヒルダと。
世界と決別した。
「ていうか、紅美も無事だったのね!?」
「ああ、マーシャンもいました!」
「やべ。すっかり忘れてたな」
「……そうですか、サーチ以外だとエイミアさんとリルさんだけですか……」
エイミアに連れてきてもらった紅美は、少しやつれたように見えた。ま、ムリもないけど。
「みんなはどんな状況だったの?」
「私はコーミちゃんと一緒に逃げ出して、一隻だけ空いていたキュアガーディアンズの船に乗って脱出しました」
「まずはヴィーさんに連絡したんだけど……」
みなまで言うな。
「……で、いろいろあって……この廃コロニーに隠れていたら、サーチの船の反応があって」
「私が念の為に遠隔操作で船を動かして……」
ヴィー達の船に攻撃したってわけか。
「リルは?」
「さっきも話したけどよ、攻撃を止めようとしたら反撃されて、防戦一方でよ。どうにか脱出ポッドで逃げ出すのが精一杯だった」
ていうか、ヴィーとナイアとエカテルの攻撃をよく耐えきったわね。
「で、サーチの船が光ったと思ったら……目の前にこの廃コロニーがあった」
私達の強引なワープに巻き込まれたのか……っていうか、よく無事だったな!
「ま、そういうわけだ。私も後戻りはできねぇんだよ」
「ですね。母さ……サーチ、私も含めて四人全員キュアガーディアンズから除名されたし、全員指名手配された」
「指名手配までしてくるか」
「容疑は海賊行為だそうよ」
海賊っすか……。だったら。
「いいじゃない。海賊になってやるわ」
「は?」「え?」「サ、サーチ?」
「ここまでやってくるんなら、私達だって手段は選べない。表立って仕事はできないだろうから、他の船から物資を強奪してでも生き延びてやる……!」
「「「……サーチ、いつもやってるじゃん」」」
うるさい!
「さあ、反逆よ反逆。〝飛剣〟のヒルダに、ブラッディー・ロアに、キュアガーディアンズに、そして……世界に!」
「「「おおっ!」」」
「ここに! 竜の牙折り海賊団の誕生よおおおっ!!」
航海士、紅美。
砲撃士、エイミア。
操舵士、リル。
そして……船長は私、サーチ。
ここに私達の反逆が始まったのだった。
「……妾なんて、妾なんて……」
あ、忘れてた。
雑用係、マーシャン。
麦わら帽子はかぶってない。




