表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
978/1883

EXTRA しばしの休息。

 何か複雑な結果ではあったけど、≪万有法則≫(コトノハ)を手に入れることに成功した。


「……っていうか、あれ? アカデミコが使った≪万有法則≫(コトノハ)ってニセモノだったんじゃなかったっけ?」


「おそらくな。しかし本物に近づくには最も有効な手段ではあるのじゃ」


「? どういうことよ」


「簡単な事じゃよ。偽物の≪万有法則≫(コトノハ)で本物の≪万有法則≫(コトノハ)を顕現させれば良いのじゃ」


 げ。そんな反則技ありなの?


「ありなのじゃよ。結果として成功したのじゃからな」


 成功したって……マ、マジで!?


「うむ。何度か試したが間違いないようじゃ」


「……でもそれって、何のデメリットもないの?」


「無い事は無いが……妾には無いのう」


 何じゃそりゃ。


「そ、そうなの? なら……エイミアが偶然(・・)裸踊りしちゃう……なんてのもあり?」


「……偶然の出来事では無いじゃろが」


「それでも、できるの?」


「無論じゃよ…………愚者の願いを叶えたまえ、≪万有法則≫(コトノハ)


 マーシャンの詠唱と同時に、見たことがない文字が浮かび上がって……霧散する。すると。


 ……バタバタバタ

 フィーン


「サーチ!」


「ん……ていうか、エイミア!? 何てカッコしてんのよ!」


 タオルを一枚巻いただけのエイミアが、焦った様子で私の部屋に入ってきた。


「シャ、シャンプーが無いんです!」


「シャンプーがないって……私と同じヤツでしょ? 私の使えばいいじゃない」


「それも無いから来たんです!」


 あ、そうだったっけ。


「なら……ほい」


 私は魔法の袋(アイテムバッグ)から自分のシャンプーを出して投げる。


「え、わ、きゃ」


 エイミアはそれを取り損なって床に落とす。


 ごんっ びちゃ


「あああ! ちょっと!」


「す、すみません!」


 その拍子に容器が割れてしまい、床にシャンプーが広がる。


「ふ、拭かなきゃ……きゃあ!」


 焦って拭くモノを探したエイミアは、つい溢れたシャンプーを踏んでしまい。


 つるっ


「きゃ!」


 つるつるっ つるっ


「わっ! ひゃ! いや! ひえ! あひゃあ!」


 つるるるるるるるるっ つるつるつるっ


 コケないように必死のエイミアは、当然のことながらタオルは落ちてしまい、その見事なバストを揺らしまくっているわけで……。


「……見事に偶然の裸踊りね」

「うむ、偶然の裸踊りじゃな」


「ちょ、ちょっとおおお! 眺めてないで助けてくださいよおおお!」



 シャンプーをゲットして戻っていくエイミアを見送り、シャンプーが溢れたあとを掃除する。


「……これでデメリットなしって……逆に怖いわね。とんでもない快楽主義者や反社会的なヤツが手にしたら、どんなことに使うのやら」


「ま、余程の者ではないと使えぬから安心せい」


「え、何でよ……って、マーシャンにはデメリットじゃないって言ってたヤツ?」


「うむ。一応魔術に近いらしくての、かなりのMPを消費する」


「MP消費……その時点で使えるのは魔術士に限られるか」


 ていうか、使える人が限られるのはありがたい。


「妾が使えるのも週に二度程じゃな」


「そうなの!? ていうか、その貴重な一回を裸踊り(あんなの)に使って申し訳ない」


「いやいや、良いモノが見れたわい。本望じゃよ」


 さいですか。


「じゃあもう一つはまだ使えるのね?」


「うむ」


「じゃあさ……できれば、なんだけど……」



「ふはあああ! きっもちいいわ〜!!」


 湯の中で全身を伸ばす。今日の露天風呂はダウロの湯♪


「まっさかこんなのが可能だなんて。≪万有法則≫(コトノハ)様々だわ〜♪」


 まさかこんな手でホントにダウロの温泉になっちゃうとは。


「んんんっ……疲れた身体には最高♪」


 一人で楽しんでいると、脱衣場に複数の気配。みんな来たわね。


 ガラッ


「サーチ、ダウロの温泉だって!?」

「私、もう一回入りに来ました!」

『背中を流させて頂きます』


 ほーら、やっぱり。


「さっきは『へ〜』とか言うだけで、全く興味がないって感じだったけど?」


「いやいや、興味あるよ。温泉は古傷には最高だからさ」


 そういやナタって古傷が多いわね……主に背中に。


「そうです。古傷には最高ですよ」


 エイミアは見事なまでに傷跡はない。ていうか、ホクロもない?


『そうですね、傷を癒すには温泉が最高です』


 ライラちゃん、アンドロイドには古傷なんてあり得ないと思うけど。


「「『せーの』」」


 ざっぱあああああん!


「ぶはっ! バ、バッカモオオオン!! 身体を洗ってから湯船に入らんかぁ!!」


「「『……すいませんでした』」」



 ぐわしぐわしぐわしっ


「あいだだだだだだだ! ライラちゃん、痛いって!」


『そうでしょうか? 私はこれくらいでも何も感じませんよ?』


「ライラちゃん、自分と同じレベルで洗わないでよ!」


 ライラちゃんが背中を流し、ナタは悲鳴をあげる。美しき友情に乾杯。


「サーチはこれくらいで大丈夫ですか?」


「うん、ありがと」


 エイミアが私の背中を流してくれている。こんなにゆったりとした時間は久しぶりな気がする。


「……サーチ、いよいよなんですね」


「ん〜? 何がぁ?」


「ブラッディー・ロアとの最終決戦です」


「……ああ、エイミアは知らなかったのね。はい、これ」


 私は袋から指輪を出して見せる。


「へ? 何ですか、これ?」


「んっふっふー、覇王の指輪」


「…………………………はい?」


「いやね、よくよく考えたら≪万有法則≫(コトノハ)ってジョーカーがあるんだからさ、使わない手はないじゃない」


「……そうですね。だから温泉を出したんでしょ?」


「へ? 温泉? これはただダウロの温泉の源を入れただけよ」


「は!?」


「私が願ったのは『ブラッディー・ロアが持っている覇王の指輪を、今ここに取り寄せる』ってのよ」


「じゃ、じゃあさっきの指輪は本当に!?」


「ええ。今ごろ大騒ぎでしょうね」



「くそ、やられた!」

「さーちゃん……やってくれたわね……!」



「……あ」


「何?」


「この脇腹の傷跡……」


 ああ、それね。私の身体にも少なからず傷跡はある。


「エイミアが寝ぼけて電撃を放ったときの火傷ね」


「え……こ、これは?」


「あんたが料理に初挑戦したとき、すっぽ抜けて飛んできた包丁が刺さった跡」


「こ、これは?」


「あんたが剣の素振り中にすっぽ抜けて……っていうか、私の傷跡全部あんた由来じゃないの!」


「いひゃい! いひゃい! いひゃみょーーーんんんっ!!」


「……よく伸びるねぇ」

『よく伸びますわねぇ』


「みょーんんん! みょみょみょーーーんんん!!」


 ……だけど。

 全部あんたとの思い出だから……後悔はしてないわよ。



「みょーーーんんん!」

みょーーーんんんっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ