EP19 ていうか、勝手にコンプリート?
『ZZZ……』
「全く反応ないわね」
覇王装備が残り四つになったはいいけど、ブラッディー・ロアが押さえている以外の三つの行方は、一ヶ月経っても全く掴めなかった。
「地球・月・火星・コロニー。これ以外に可能性があるのは?」
「う〜ん……他には思いつかないなぁ」
ナタも頭を抱える。こう見えても意外と頭脳明晰なんだけど、流石にこの状況を打破できないか。
「……サーチ、何か失礼なこと考えなかった?」
「気のせいよ」
鋭いな。
「エイミアはどう?」
「ちんぷんかんぷんです」
やっぱりエイミア、何も考えてない。
「……サーチ、失礼な事を考えたでしょ」
「いーえ。やっぱりエイミアはエイミアだなあ、って思っただけ」
「……それって失礼じゃないですか!」
「かもね。ライラちゃんはどう思う?」
ぎゃーぎゃー抗議してくるエイミアは放置する。
『可能性としては……太陽系以外の場所にある、とか?』
「そうなっちゃうと手の打ち様がないのよね」
太陽系内からは人類は未だに出ていない。ワープ技術も実験段階だから、実用化は数十年先だろう。
つまり、もしホントに覇王装備が太陽系以外の場所にあるなら、手に入れるのは不可能に近いのだ。
「だからとりあえずは太陽系内にあるもの、として考えましょ。それを踏まえてライラちゃん、他に可能性は?」
『…………どの状況でミニマーシャン様が反応しないか、一度陛下にお伺いしても宜しいのでは?』
あ、そうね。それがわかれば、探す範囲が狭められるかも。
「なら……マーシャン召喚」
「きゃあ!」
突然エイミアのスカートをめくる。
「ふむふむ、淡いピンクじゃな」
よし、マーシャン出現。
「エイミア捕獲して!」
「え? あ、はい。≪蓄電池≫」
バリバリバリ!
「んぎゃああああああああああ!!」
よし、ほどよく動けなくなったわね。
「マーシャン、聞きたいことがあるんだけど」
「こひゅー……こひゅー……」
あかん、虫の息だ。
「うりゃ」
「きゃあ!」
今度はエイミアの胸をマーシャンに押しつける。
「め、女神様じゃ。女神様が妾に……辛抱できぬわぁぁぁぁぁぁ!!」
「きゃああああああ!」
あかん、エイミアを押し倒した。
「ちょっと待って、マーシャン落ち着いて」
「ふんがー! ふんがー!」
完全にスイッチ入っちゃったか。なら少し痛い目に……。
バリバリバリ! ズドォォォン!!
「しびびびびびびびびびびぃ!?」
あ、私が何かする前にエイミアが。
「こほ……ぐふっ」
「はー、はー……あ、危ないとこでした……」
乱れた服を直しながら、エイミアが立ち上がる。そして。
「サーチ。覚悟はいいですか?」
「へ!? わ、私も悪いの!?」
「私が悪いの、じゃありません! 元凶はサーチでしょうが!」
ヤ、ヤバい。これは黄色いお花畑に届きかねない展開。
「かくなる上は、奥の手!」
きゅっ
「はあああああん!?」
よし、エイミアが腰砕け!
「な、な、何するんですかあああああ!」
バリバリバリバリ! どがぁぁぁぁぁぁん!
「ふぎゃああああああああ! や、やぶ蛇だったああああああ!」
「……何でボク達の会議って毎回脱線するのかな?」
これが私達のパーティの伝統なのよ。
「飲む傷薬で全快したので再び会議を始めます」
「……エイミアもエイミアだけど……毎回瀕死に追い込まれてるんだからさ、サーチも学ぼうよ」
返す言葉もございません。
「それでマーシャン、さっきの質問の答えは?」
「うむ、可能性は二つじゃ。一つはあまりにも距離が開いてしまっている場合。もう一つは……まずあり得んじゃろうが」
「……何?」
「……魔法の袋のような異空間を使用したアイテム収納に保管されている場合、じゃな」
「…………何であり得んって言えるの?」
「この世界で魔法の袋を使っている者など、まず居ないじゃろうが」
「はい」「はい」
「…………そうじゃな。サーチとエイミアは自分のモノを持っておったな」
ヴィーとナイアは私と共用だから関係ない。となると、自分の袋を持っているのは……。
「……私とエイミア、リルとリジーね」
「……其方等の袋の底に眠っている、という可能性が高いの」
マジか。
早速リルとリジーに連絡を取り、魔法の袋の中身を確かめてもらう。
『……これか?』
リルが袋から小手を取り出したとたん。
『ぐるぐるぐーる! あっち! あっち!』
「リル、それ。あとでアイテムポケット便で送ってちょうだい」
『わかった。何だろうとは思ってたんだが、まさか重要アイテムだったとはな』
そして、リジー。
『これ?』
「違う」
『それじゃ、これ?』
「……反応ない。違う」
色々と袋から出すけど、やっぱり全部呪われアイテムだ。
「全部違うわね。もう眠っているモノはないの?」
『あるけど……ゴミと思われ』
「一応出してみて」
『うい』
リジーはもう一つ魔法の袋を……って、もう一つ?
「リジー、あんた二つ魔法の袋持ってるの?」
『サーチ姉が以前くれた容量の小さいヤツ』
…………そんなことあったっけ?
『今はゴミ専用』
もったいない使用法だな!
どさどさどさっ
うわあ、出てくる出てくる。折れた剣にひび割れた鎧、ボコボコにヘコんだ盾……。
『ぐるぐるぐーる! それ! それ!』
「え、あったの!?」
『どれでござる?』
『ぐるぐるぐーる! その赤いの! 赤いの!』
赤いのって……………………ま、まさか。
「あのボロ切れ?」
『それ! それ!』
『……これは……どこかのダンジョンで、守護神を焼却した時にドロップしたマントの燃え残り』
マントか!
「リジー、それよ。早めに送って」
『OK牧場』
……何で知ってるのよ。
「これであと一つ。まさかとは思うけど、サーチの袋の中じゃないよね?」
「まさかあ。私はきちんと整理してるわよ」
念のために袋の中身の一覧を開く。
「………………ないわね……あら?」
種類別の「重要アイテム」の欄にアイコンが?
「何かしら…………げっ!」
「ど、どうしたの?」
「な、何で私の袋の中に“覇者の王冠”が!?」
これって新大陸の旧帝国の国宝のはずよね!?
「……どうやら覇王装備は一つに集まりたがっているようじゃな」
勝手に集まってきてるっての!?
これであと一つ。




