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EP12 ていうか、でしょ!?

「いやあ、たっぷり買いました」


「……買いすぎじゃない?」


 まさか四時間ぶっ通しで買い物するとは。


「そうだ、お腹空きませんか?」


「そりゃ空いてるわよ。お昼抜きで散々歩いてるんだから」


 何回も昼ご飯に誘ったんだけど、全てスルーしやがるヤツがいまして。


「え、あ、いや、その…………ひゅーひゅひゅー♪」


 鳴らない口笛で誤魔化すな。


「エイミアの奢りだからね」


「そ、それは勿論! そ、そういえばサーチは何か買ったんですか?」


「私? 薬局で飲む傷薬とか、炸裂弾の最新式とか、予備の投げナイフとか」


「………………女の子らしいお買い物はしないんですか?」


「失礼ね、ちゃんと買ったわよ。もうすぐアレだから、生理用品を」


「サーチ、そういう意味での女の子っぽさじゃなく、ファッションとか、スイーツとか」


「あ、そういうこと。だったら」


 私はさっき買ったジャケットを見せる。


「このジャケットさぁ、あちこちに武器を装着できる優れモノのコンバット仕様なの。でもたくさん武器を身に付けても消音性を保てるっていうアサシン仕様でもあるのよ♪」


「ちょちょちょちょっと待ってください。それが何故女の子っぽいんですか!?」


「え? ちゃんと女性用のサイズよ?」


「そういう意味じゃなくて……! あ、ならスイーツはどうなんですか!?」


「スイーツ? ああ、これはどうかしら」


 私は魔法の袋(アイテムバッグ)から新発売の携帯食料を取り出して見せる。


「それが……スイーツ?」


「これはタピオカティー味、これはパンナコッタ味、これは栗きんとん味。全部スイーツの味のシリーズなのよ♪ タピオカティー味とかパンナコッタ味なんて、どうやって再現してるか気にならない?」


「気にはなりますけど! 女の子っぽさとは何か違うと思います!」


 ……そうかな?



 某有名ハンバーガーチェーンで、セットを二人で分け合う。エイミアはハンバーガー、私はポテトで十分。


「サーチ、ポテトだけでいいんですか?」


「これで十分よ。それにさっきの携帯食料を試してみたい、てのもあるし」


「あ、それは私も気になります」


「あの携帯食料の会社ね、過去にこのハンバーガーチェーンとコラボして、ハンバーガー味ってのを出したことがあったのよ」


「ハンバーガー味!?」


「それにフライドポテト味とか、チキンナゲット味とか」


「……その二つは普通にありですけど、ハンバーガー味って……」


「まあ、ハンバーガーの味ではなかったけど、美味しかったわよ。正直この三つは定番にしてほしかったわねー」


「そうやって言われると食べてみたい気がします」


 ふっふっふ、でしょ?


「なら店を出てから……試してみる?」


「……はい?」



 店を出てすぐ、魔法の袋(アイテムバッグ)から携帯食料を三本出す。


「はい、ハンバーガー味とフライドポテト味とチキンナゲット味」


「へ!? も、もう売ってないんじゃ!?」


「んっふっふー。あまりにも美味しかったから、売り切れちゃう前に買い溜めしたのよ。箱単位で」


「箱単位って……サーチ、相当気に入ったんですね」


 そう言いながらもエイミアは、フライドポテト味の包装を破って口に運ぶ。


「はむっ……あ、美味しい♪」


「でしょ!?」


「あむあむ……でもフライドポテト味ってこの携帯食料にはぴったりですよね」


「そうなのよそうなのよ♪ 次のチキンナゲット味も試してみて」


「あ、はい……むぐむぐ……あ、これも良い♪」


「でしょ!? でしょ!?」


「もぐもぐ……な、何でこれを定番にしなかったんでしょうか。それくらい美味しいです」


「うんうん、そうよねそうよね……さて、最後はお楽しみのハンバーガー味よ」


「はーい。さくさく………………ん? むー……美味しい……美味しいんですけど……ハンバーガーでは無いですね」


「でしょ!? でしょ!?」


「でも……美味しいです。謎なんですけど、とっても美味しいです」


 ハンバーガー味なんだけど、肉の味を前面に出しすぎたって感じかな。


「というわけで……いよいよ最新のを試してみたいと思います!」


「わ、私も興味が出てきました」


「でしょ!? でしょ!? では早速、タピオカティー味から!」


 半分こしてエイミアと一緒にパクッ。


「……………………」

「……………………」


 メチャクチャ微妙な顔をするエイミア。私も同じ表情だったろうな。


「…………甘」

「…………甘いですね」


 メチャクチャ砂糖を入れまくったミルクティー。それだけ。


「ていうか、タピオカ感全くないんだけど?」


「サーチ、携帯食料でタピオカ感を出すのは至難の技では?」


「確かに……って、ちょっと待って。携帯食料に黒い斑点が付いてるけど、まさかこれが……」


「タピオカ代わり、ですか」


 詐欺だよ! 単なるミルクティー味じゃん!


「あ、でもタピオカみたいな味はしますよ」


 ……ま、エイミアがそう言うならいいか。


「次はパンナコッタ味か」


「どうやってパンナコッタを再現したのでしょうか……」


 イヤな予感しかしないけど、とりあえずパクッ。


「………………」

「………………」


 ………………。


「単なる砂糖の固まり」

「奇遇ですね、私も同じ感想です」


 よくこれを売り出そうと思ったな。


「……もう買わない」

「私も買いません」


 今日はよくエイミアと意見が合うわ。


「最後は栗きんとん味ね」


「これは普通に栗きんとんでしょうね」


 うん、安心して食べられそう。パクッ。


「……あっま」

「甘いですね」


「……でもパンナコッタ味よりはマシよね」


「はい。あれは再現ができなくて、とりあえず砂糖いっぱいぶち込んどけって感じでしたし」


 うん、これはちゃんと栗きんとんしてる。


「いやはや、甘いのもありね。これなら箱買いしてもいいかな」


「……サーチ、この携帯食料のシリーズが好きなのですか?」


「うん、大好きよ。豆腐味の再現度の完璧さに感動してから」


「結局豆腐から入るんですね」


 当然。私の身体は豆腐でできている、とまでは言わないけど。


「でもやっぱ定番には敵わないわよ。鉄板はさすが鉄板って感じね」


「何味があるんですか?」


「私が好きなのはサラダ味とたこ焼き味。あ、でも明太子も捨てがたいな」


「……たこ焼き味や明太子味はわかりますけど、サラダ味って?」


「サラダ味のサラダはサラダ油のサラダ。要はサラダ油をからめた塩味ね」


「へ、へええ」


 それにしても、昔よく食べたお菓子が、この世界では携帯食料になってるとはね。


「サーチ、商品名は何ですか?」


 言えません。

英語だとデリシャスバーかな?

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