EP9 ていうか、覇王の宝玉。
いんふぇるの呼称問題も片づいたので、これで心置きなく覇王装備の件に集中できる。
「では集めた覇王装備を出してもらおう」
マーシャンの指示によって覇王の宝玉の生成が開始された。今まで集めてきた覇王装備が並べられていく…………ん?
「ちょっと待って。こんな鍋が覇王装備?」
「へ? 普通の座布団じゃない、これ?」
「この箸を出したのは誰ですか!?」
『な、何という破廉恥な下着……!』
「……其方等、どのような基準で覇王装備と判断したのじゃ?」
基準って……。
「ミニマーシャンだよね」
「ミニマーシャンだよ」
「ミニマーシャンですね」
『ミニマーシャンですわ』
「む!? ま、まさか……」
ていうか、マーシャン。あの覇王装備探索機械の言うことに従っただけだからね、私達は。
「ま、まずは鍋じゃの。これは?」
エイミアが手をあげる。
「何処にあったのじゃ?」
「何処も何も、このステーションにありました。ステーション内の粗大ゴミを集めていた時に、突然ぐるぐーる警報が鳴り始めて」
ぐるぐーる警報って……。
「それで集めた粗大ゴミを一つずつ確かめていったら、その鍋に行き着きました」
「ではこの鍋に反応したのは間違いないと?」
「それは間違いありません」
「む……そうなのか、ミニマーシャンよ?」
マーシャンの問いかけに返ってきたのは。
『ぐるぐるぐーる! バーカバーカ!』
「うぬぅ!?」
完全にバカにされてるという事実だった。
「仕方ないわね……どうなのよ、ミニマーシャン?」
『ぐるぐるぐーる! バーカバーカ!』
「さーて、一番近い溶鉱炉はどこだったかな」
『ぐるぐ!?』
「素直に答えるなら、今回は勘弁してあげるけど?」
『申し訳ございませんでした』
「よし。で、間違いないのね?」
『ぐるぐるぐーる! 絶対! 絶対!』
はい、確認できた。
「……まあ良い。ちゃんと言う事を聞くのじゃぞ?」
『バーカ! バーカ!』
「な……!?」
「ミニマーシャン、マーシャン以外にはちゃんと従いなさいね」
『勿論でございます』
「な、何故じゃああああ!?」
日ごろの行いじゃない?
鍋が覇王装備に確定したところで、次は座布団か。
『それは私です』
「……ライラよ、流石に金属でもない座布団が覇王装備とは、幾ら何でもおかしくないかえ?」
『そう言われましても……ミニマーシャン様がそう仰られますので』
いやいや、流石にこれは……。
「ライラよ、もう少し冷静になると良い。覇王装備は多種多様あるが、共通しておるのは金属という事じゃ。幾らミニマーシャンがそう言ったとしても、疑う必要も『ごちゃごちゃうるせえんだよ!』……へ?」
あ〜あ、菩薩並みに優しいライラちゃんが怒っちゃった。
『黙って聞いてりゃ言いたい放題……この雷々が下らねぇ冗談をぶっ込むとでも思ってたのか!?』
「へ? あ、いや、その」
『腐ってもこの雷々、人様を騙すような汚れた生き方はしてねえんだよ!』
「あ、はい、失礼しました」
『だから陛下よぉ、ちょっとジャンプしな』
「え? え? ひ、ひぃぃ!!」
マーシャン相手にカツアゲを始めた雷々ちゃんは放置して、ミニマーシャンにことの真相を確かめる。
「で、間違いないのね!」
『ぐるぐるぐーる! 座布団のチャック! チャック!』
こ、これぇ!?
「な、何でもありすぎない!? いくら金属だからって、座布団のチャックが覇王装備なの!?」
『ぐるぐーる! 元はカフス! カフス!』
元はって……ああ、鋳潰されたクチか。
『はああ? 女王のクセにこれっぽっち? もっと飛べや夜露死苦ぅ!』
「た、助けてぇぇぇ!」
マーシャンはお尻の毛までむしり取られてるけど、気にしない気にしない。
「次は……箸ね。これは?」
「ボクが見つけたんだ。みんなと同じで、ミニマーシャンが反応したヤツだよ」
これはホントに……箸よね。
「金属製?」
「絶対に違うね」
持ってみるけど……確かに普通の箸だ。
「今度は何で反応をしてるのかしら……ラメが付いてる以外は普通の箸………………ん? ラメ?」
急いで空中端末で検索。
「……ラメだ。これが金属製だわ」
『ぐるぐーる! 元はピアス! ピアス!』
これも鋳潰されたヤツか。ていうか、こんなちっちゃなラメがよく覇王装備化したわね!
「…………箸に付いているキラキラが、伝説の装備品になっちゃうんですか…………」
安売りになっちゃったわね、伝説の装備。
「……となると、残りは……」
「このスケスケの下着ですか。簡単な選択肢ですね」
全員私を見る。
「サーチですね」
「サーチだよね」
『サーチ様ですわね』
「私じゃないわよ」
「……妾じゃよ」
「「『……ん?』」」
「だから、私じゃなくて」
「妾じゃよ。先日買ったばかりの下着じゃったのじゃが……」
「…………マーシャン、この下着を着てるんですか? 普段から?」
「そうじゃよ」
「…………陛下……流石に……これは……」
「な、何じゃ!? 妾が何を着ようと妾の勝手じゃろ!?」
いやあ…………流石に【いやん】や【先っぽ】が丸出しの下着を普段から着るのは……。
『陛下、破廉恥で御座います』
「な、何でじゃ! 妾の好みの何処がおかしいのじゃ!」
「ボク思うんだけどさ、見せる相手もいないのにそういう下着を着ける意味はないんじゃ?」
「はぅあああ!?」
あ。今マーシャンに言葉の刃が突き刺さった。
「ぐ、ぐふっ」
「へ、陛下!? どうしたの!?」
「あんたの言葉の刃がマーシャンの心をみじん切りにしたのよ」
いやあ、あれを言われたらヘコむわ。
「ちゃんと相手のことを考えて発言しなさい」
「う……ご、ごめんなさい……」
結局下着の金具が覇王装備だったらしい。また鋳潰されたヤツみたいだ。
「そ、それでは覇王の宝玉の具現化を始める……グスン」
まだ半泣きのマーシャンが呪文を唱える。
「あ、でもいんふぇるのは大丈夫なの?」
『問題ありません。今は太陽光で十分エネルギーを賄えていますから』
フレアがそういうのなら大丈夫なんだろう。
「うぬぬぬぬ…………くぅぅぅぅぅ…………かあああああああ!」
シュオオオオン!
「で、出来た……のじゃ」
マーシャンの手の平には、少しだけ欠けた状態の青い玉があった。
「この欠け具合だと……あといくつくらいなの?」
「……そうじゃな……あと四つじゃな」
四つか。




