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EP8 ていうか、インフェルノ? いんふぇるの?

「ほうほう、随分集まったのじゃな」


 マツダイラキヨザエモンとの契約が無事に完了した日、いんふぇるのに戻る途中で船内に突然マーシャンが現れた。


「ふむふむ、感心感心。ちゃんと集めてくれているようじゃな、わっはっは」


 ……イラッ。


「みんなー、何かマーシャンの態度が気に入らないから、集めた覇王装備ぜーんぶブラッディー・ロアに渡しちゃわない?」

「「『さんせーい』」」


「ちょちょちょちょっと待てい。冗談じゃ冗談じゃ」


「ふーん。その割には態度がデカいんじゃない?」


「当たり前じゃ、妾は女王じゃぞ!?」


 あ、開き直った。


「ならブラッディー・ロアに高値で売却を」

「「『さんせーい』」」


「申し訳ありませんでした。いつも妾の為に骨を折ってくれてありがとうなのじゃ」


 たく、最初から素直に頭下げないからよ。


「で、覇王装備持っていくの?」


「そうじゃな。あと幾つくらいあるかハッキリせんからの、一度宝玉にしてみようと思う」


「え? 全部集まってなくても大丈夫なの?」


「バラバラになった欠片は均一での、宝玉になれば足りない欠片の分だけ隙間ができる。それを数えれば、あと幾つ足りないのかがわかるのじゃ」


 なるほどねぇ。


「ていうかさ、一つ聞いていい? マーシャンって少し前までアンドロイドの身体だったわよね?」


「そうじゃよ。今でもそうじゃ」


 へ!?


「単に最新のアンドロイドに身体を更新しただけじゃよ。前回の身体はロボットを無理矢理アンドロイドに改造した急造品じゃったろ」


 あ、そういえばそうだったっけ。


「……それにしても、普通にアンドロイドって全くわかんないわね」


「最新の身体じゃからな。今までのようなアンドロイド特有の声も解消されたしの」


「特有の声?」


『こういう声じゃよ』


 あ、なるほど。ボーカロイド的な声ってことか。


「それよりも、じゃ。妾からも聞きたい事がある」


「何?」


「インフェルノはいんふぇるのなのじゃな?」



「………………?」


 一瞬言ってる意味がわからなかった。


「何言ってんのよ。いんふぇるのはいんふぇるのよ」


「む? いんふぇるのなのじゃな?」


 だから、何を言ってんだか。


「ちょっと待っておれ……こりゃ、そこの二人」


『はい?』「ボク達?」


「うむ、其方等じゃ。聞きたい事がある」


「は、はあ……」『何で御座いますか?』


「其方等が現在住んでおる宇宙ステーション、いんふぇるのか? インフェルノか?」


「へ? そんなの決まってるじゃん」

『そうですわ』


「インフェルノだよ」

『いんふぇるのですわ』


「『……あれ?』」


 何じゃそりゃ。


「あ、いんふぇるのか」

『インフェルノですわね』


「『……あれ?』」


 ホントに何じゃそりゃ。


「あ、あれ? どっちだったっけ」

『あまり意識していませんでしたわ』


 そうね。言われてみれば、私もインフェルノといんふぇるの、両方使ってるわ。


『こういう場合は公式サイトで確かめてみれば良いのでは?』


 あ、そうね。確か制御システムのフレアがホームページ作ってたっけ。早速空中端末で検索。


「…………あった。『ようこそ、いんふぇるのへ』ってなってる」


『でしたらいんふぇるのですね』


「待って。『うちゅうすてーしょん』とか『ほーむぺーじ』って……これ、全部ひらがなだわ!」


『お子様にも読みやすいように、という配慮ですわね』


 余計に読みにくいような。ていうか、インフェルノかいんふぇるのかますますわかんないじゃない!


「サーチ、なら公文書だよ。インフェルノを管轄してる省庁に問い合わせて、確かめてみればいいんだよ」


「…………え〜…………」


「イ、イヤなの?」


「……だって……私が省庁に問い合わせるって、『私達の名前は何ですか』って聞くようなもんじゃない……」


「た、確かに」


『でしたら私が問い合わせてみましょうか?』


 え? ライラちゃん、いいの?


『大丈夫ですわ。別に私達自身が名乗らなくても、問い合わせは可能ですから』


 あ、そういえばそうだわね。



『結論としましては……登録名は「インフェルノ」でしたわ』


 そうか、インフェルノか。これで解決ね。


『但し』


 へ?


『駅としての登録名は「いんふぇるの」でしたわ』


 は?


『公式には「インフェルノ」、施設名は「いんふぇるの」といった感じでしょうか』


 めんどくさいことしてくれたな!


「あ、でも待って。確か巨大ロボットの場合は『インフェルノ・ノヴァ』だったよ」


「あ、そうね。ならインフェルノでいいんじゃない?」


『でも戦隊名は駅員戦隊いんふぇるジャーですわね』


「ホンットにややこしいことしてくれてるわね!」


 私が頭をバリバリ掻いていると、今まで黙っていたエイミアが。


「ぶっちゃけ、どっちでも良くないですか?」


 そうなんだけど……!


「ここまで来たらどっちかに決めないと、色々と都合が悪いのよ!」


「……どう都合が悪いんですか?」


 イラッ。


「どーでもいいでしょうが! 途中から口を挟むんじゃないわよ!」

「いひゃい! いひゃい! いひゃい! いひゃみょーーーんんん!!」


「うりゃうりゃ! 口伸ばしの新記録作ってやる!」


「みょーーんんん! みょみょみょーーーんんん!」


『あの、サーチ様』


「うりゃうりゃ……何?」


『こういう場合、本人の意思を参考にしては如何でしょうか?』


「本人の……って、フレアの?」



 というわけで、フレアにお伺いを立てることにした。


『それは勿論、いんふぇるのです』


「え、そうなの?」


『はい。私自身のプログラムにもそう組み込まれていますので』


 あっさり決着した。プログラムに組み込まれてるんなら、それが正解だろう。


「わかったわ。みんな、いんふぇるので統一ね」


「「『はーい』」」


「それにしても……何でひらがなになったの?」


『私に組み込まれた初期の性格に合うようにする為でしょう』


「……初期の性格?」


『はい。今は万人向けにこのスタイルですが、実際の性格は違います』


 ど、どんなヤツ? めっちゃ気になる。


『……実演しましょうか?』


「うん、興味ある」


『そうですか、では……』


 数秒の間をおいて、辺りの雰囲気がピンク色に変わる。


『はぁぁぁい! お・ま・た・せ! みんなのおねえさん、いんふぇるののふれあだよ☆ みんな、げんきだったかなー!?』


 !!?


『それじゃきょうもげんきにうたいましょー! みんな、おおきくくちをあけて、おおきなこえをだしてねー!』


「ストップストップ! もういい、もういいわ!」


 誰だよ、うたのおねえさん的な性格にプログラムしたの!?

いんふぇるのでした。

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