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EP6 ていうか、宇宙ステーション繁盛記?

「……銀行いかなきゃ」


「は?」


「あ、ごめん。今月の諸々の支払い、今日までなのよ。昨日海賊絡みの報酬が入ったからさ」


 そんなことをポツリと呟いた私を見て、紅美は深いため息をついた。


「……何よ」


「何で引き落としにしてないのよ」


「キュアガーディアンズって収入がメチャクチャ不安定だからさ、支払いはお金が入ったときにまとめてってのが普通なのよ。相手もその点はわかってくれてるし」


「でも資源集めや定期的な警備とかで、安定した収入を持ったキュアガーディアンズもいるわよ?」


「へ、マジで? ……と言っても、このパーティでそれを望むのはねえ……」


「あれ、でも収入は多いでしょ、このパーティ?」


「ほぼ宇宙ステーションの維持管理費に消えてるわ。まさかこうもお金がかかるとは」


「……まあ確かに修理費は馬鹿にできないよね。これに関しては支所(うち)も関わりが無いわけじゃ無いから、本部と掛け合って予算に組み込んでもらうわ」


「……だったら、今までのもお願いします」


「はいはい、今までのも母さ……サーチ達が立て替えてたって事で請求しときます」


 よっしゃあ!


「……でもさ、もうちょっと安定した収入があった方がいいんじゃない?」


 紅美は請求書の束に目を通しながら、計算機を叩く。


「……どうやってよ」


「だから宇宙ステーションいんふぇるのをもっと活用すべきよ。お店に入ってもらって家賃収入を増やすとか、自分達で店を始めるとか」


 自分達で店を始めるのはイヤ。前回のインフェルノ・ノヴァグッズで懲りてます。ちなみにだけど、インフェルノ・ノヴァ関連の権利は全部いんふぇるジャーの運営会社に売りました。


「そうねぇ……人を雇って経営したとしても、結局あれやこれやと手間はかかるもんね…………だったら家賃収入かな」


「家賃かぁ……あ」


 いいこと思いついた。


「いんふぇるジャーの運営会社に出店してもらえばいいのよ。この宇宙ステーションを撮影に使ってって触れ込みで」


「あ、いいんじゃない? だったらいんふぇるのをインフェルノ・ノヴァに変型させて、実際に撮影に使ってもらう手も」


 交換条件としてはありかな。


「よし、他にも有名なチェーン店なんかにも声かけてみよ」



 次の日、紅美とライラちゃんを伴って地球に営業に出掛けた。


「運営会社とアポは取れたの?」


「いえ、それ以上の返答が返ってきました」


「へ?」


「えーっとね、出店の商談をしたいって言ったとたんに『ぜひっ』って返ってきたわ」


「……向こうもリアルタイムに検討中だったのね」


 そうみたい。詳しい契約内容もほぼ決まってて、私からの要望とインフェルノ・ノヴァの撮影協力の件を盛り込んでアッサリ決まったから。


「それじゃ、今日は何の用で?」


「ん、運営会社との最終的な打ち合わせ……まあハンコ捺して終わりだけど……と、出店してくれそうなチェーン店との話し合い」


「い、いつの間に!?」


 ふっふっふ、私だってムダに時間を過ごしていたわけじゃないのだ。


「何社か話を持ちかけたんだけどさ、その内の一社から『直接会って話しませんか』って返事があったのよ」


「へええ。母さ……サーチ凄いよ。で、何て会社なの?」


「えっとね、全国的にミノタウロス丼のチェーンをしてるとこ」


「え、吉○家?」


「違う違う。それは牛丼でしょ」


「じゃ、じゃあどこよ?」


「えっとね、ミノタウ家っていうチェーン店」


「……………………?」


 首を傾げる紅美。どうやらマイナーなチェーン店らしい。



「……ここね」


 ミノタウ家の本社を訪ねてみたけど……私達を出迎えたのはマッチョなミノタウロスの看板だった。食欲なくすぞ、これ。


「あ、あの」

「「「いらっしゃいませ!!」」」

「す、すいません」

「「「何名様でございますか!?」」」

「い、いや、ちが」

「「「当店では分煙化を促進しております!」」」

「だから、私達は」

「「「ご注文は!?」」」


 会話になってねええっ! ていうか、店員が何でいちいち唱和するのかな!?


『私達、社長様にアポイントメントがありますの』


「「「社長でございますね」」…………え、注文は社長ですか?」


 違うっ! ウサギみたいに言うなっ。


「えっと、私達は宇宙ステーションいんふぇるのを管理している者で……」


「ああ、社長が言っていた宇宙ステーション出店の話ですね。少々お待ちください」


 一番落ち着いてる店員が奥に消える。店長さんだろうか。


「あの……」


「ん?」


 残された店員が私に話しかけてくる。


「お客様じゃ……ありませんので?」


「そうね、違うわ」


 それを聞いたとたん、全員の営業スマイルが消え。


「何だよ、ムダに愛想振り撒いちまったよ」

「あ〜だるい」

「あ〜疲れる」

「休憩休憩。やってらんない」


 …………このチェーン店、店員教育がなってないからマイナーなんじゃね?



「ああ、どうもどうも」


「「「社長、ご苦労様です!」」」


 うっわ、マッチョオヤジが出てきたよ……ていうかスゲー変わり様だな。さっきまで端末イジってダベってた連中とは思えないわよ。


「はっはっは、お前ら全員減給な」

「「「えええええっ!?」」」

「バカヤロー! お前らの愚痴やサボり具合、しっかりと防犯カメラに映ってんだよ!」

「「「…………すみませんでした」」」


 教育がなってないんじゃなくて、店員全員バカなのね。


「ああ、申し訳ない。恥ずかしいところを見せてしまいましたな」


「……いえ」


 それにしても……私好みのヒゲダンディだわ。じゅるり。


「!? な、何故か寒気が……」

『サーチ様、ヴィー様に報告させて頂きますので』


 ちょちょちょ、待った待った。冗談よ冗談。


「お、おほん! それより社長さん、先日の件なのですが……」


「おお、宇宙ステーションへの出店の件ですな。勿論大丈夫ですとも!」


 めっちゃ乗り気じゃん!


「そ、そうですか! それはありがたい」


「こちらとしても地球だけではなく、月や火星にも出店したいと思っていたところです。その足掛かりにはもってこいですからな」


 確かに。メジャーなチェーン店は、月や火星にも進出している。


「それでは、ぜひ!」

「こちらこそ、是非!」


 固い握手を交わす。


 めきめきめきっ


「あいだだだだだだだだ! ちょちょちょ折れる折れる砕けるぅ!」


「お? あ、これは失礼しました、はっはっは。プロのキュアガーディアンズにしては、力不足ですな」


 はっはっは、じゃねえよ! ていうか、筋肉隆々の大男に力で勝てるか!


「ではよろしくお願いします」

「はい、こちらこそ」


 紅美も握手を交わす。


 めきゃぼきゃばきい!


「きいああああああああああああ!」


 ちょ!? ウチの娘に何すんのよ!!


「おしおキィィィィィック!!」

 ばぎょ!

「ごべっ!?」


「「「しゃ、社長!?」」」


「いい度胸してんじゃない! キュアガーディアンズの力、見せてやるわよ!」


「はっはっは、いいですな、力と力のぶつかり合いは! さあ、かかってきなさい!」


「サーチ!?」

『ここを離れましょう。危険ですわ』


 どがばきめきがぎょごわんめきぼきばきぃ!


「な、何か凄い音がしてるよ!?」

『緊急離脱します。掴まっていて下さい』


 ばきめきどごがんがんがんぐしゃごしゃあ!


「か、母さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」



 半日続いた大乱闘ののち、めでたく話はまとまった。


「や、やるじゃない、あ、あんた」

「お、お前もな、はっはっ、は」


 ……バタ ドサッ

ダブルKO。

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