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EXTRA サーチの目にも涙?

「サーチ、おはようござ」

「しくしくしくしくしくしくしくしく」

「サ、サーチ?」

「しくしくしくしくしくしくしくしく」

「あ、あの〜」

「しくしくしくしくしくしくしくしく」

「す、すいませんでした」

「しくしくしくしくしくしくしくしく」

「サ、サーチ?」

「しくしくしくしくしくしくしくしく」

「……髪の毛をとく道具は?」

「しくしくしくしくしくしくしくしくし」

「……九九では?」

「しくしくしくしくしくしくしくしくさんじゅうろく」

 バリバリバリ! ズドォォォン!

「しびびびびびびびぃ!?」



「い、いきなり何すんのよ!?」


「何すんのよ、じゃありません! 部屋からすすり泣く声がするから、気になって来てみたら……滅茶苦茶余裕があるじゃないですか!」


「よ、余裕なんかないし。悲しみの真っ只中だし」


「悲しみ真っ只中の人が『櫛』とか『三十六』とか答えません!」


 うぐっ!


『エイミア様、落ち着いてくださいませ。サーチ様が悲しんでおられるのは間違いないです』


「そ、それはそうだけど……」


 わーん、ライラちゃんだけだよ、味方なのは!


『ですのでサーチ様、今すぐ私服に着替えて頂けますか?』


「へ?」


『私服に着替え、格納庫へ向かってくださいませ』


 ……?



 さっぱり意味がわからないけど、ライラちゃんに促され、私服に着替えて格納庫に向かう。

 格納庫の扉を開くと……そこには天使がいた。


「もー、サーチ遅いよ」


「こ、紅美!?」


 カジュアルなファッションで身を包んだ紅美は、天使以上の可憐さだった。あー、写真撮りてえ。


「……? サーチ?」

「お、おぢさんといけないことを」

「帰る」

「じょじょ冗談だって」


「……たく。ライラさんに説得されてサーチと買い物行く事にしたんだから、ライラさんに感謝しなさいよ」


 ラ、ライラちゃんが?


「昨日の夜に『どうかサーチ様の心を癒してくださいませんか?』って」


 ライラちゃん……。


「何故かライラさんの背後に般若のエフェクトが見えて、恐怖を覚えたのも事実だけど」


 ラ、ライラちゃん……。


「ま、だけどサーチと買い物してみたかったのは事実だし……だからさ、行こ♪ ね♪」


 はいはいはい、何処であっても御供致します♪



 ニーナさんにお任せすると、突然異空間転移をして火星へ……って、おおい!?


「ニーナさん!? この船、いつの間にワープできるようになったの!?」


『先日の戦いの際、一隻だけ奇跡的にワープ機関が無事だった船がありましたので、収容して(わたし)に移植しました』


 か、火事場ドロボー……。


『微調整が必要ですが近隣へのワープは理屈上(・・・)可能でしたので、今回は試験を兼ねて』


「そうなんだ〜……ていうか、初ワープを私達で試すの止めてもらえる!?」


『大丈夫です。現実として、私達は生きていますから』


 そういうのを結果論って言うんだよ!



 まさかこんなに早く火星に舞い戻ることになるとは。私達は宇宙港内で買い物を楽しむことにした。


「火星には降りないの?」


「降りられないことはないけど、手続きに時間がかかるからね。そんなので時間を潰すのもったいないじゃん」


「……そうね♪」


 まずはブティックにいって服を身繕い、全く同じ格好になる。外見そっくりな私達は、服を同じにしてしまえば最早双子だ。


「うわ、そっくりだな」

「可愛い子達だわ」


 自分で言うのも何だけど、私達の顔面偏差値は高い。だから注目の的だ。


「でもさ、右側の方が胸は小さいよな」

「ああ、小さい小さい」


「…………」

「サーチ、抑えて抑えて」



 ウィンドウショッピングを楽しみながら、お昼ご飯の時間を迎える。


「紅美は何が食べたい?」


「そうねぇ……やっぱり普段は食べられないモノを」


「なら世界三大料理の一角、フランス料理の最高級フルコースを」


「だ、駄目駄目! そんな肩凝る料理は嫌!」


 ん〜……確かに私達には似合わないかな。


「なら世界三大料理の一角、中華料理の満漢全席を」


「そうね……中華料理ならいいかな」


「よっしゃ、行こー♪」


 ……結局、紅美は肩が凝るハメになった。



 それから約束だったお揃いのペンダントを探す。


「……何で骨董市へ?」


「私さ、昔から骨董市にくるの好きだったのよ」


 うう……可愛いアクセサリーショップに行って選ぼうと思ってたのに。


「あ、これいいな♪」


 紅美が見つけたのは、イヤリングだった。


「あれ、ペンダントじゃないの?」


「これがいい。片方ずつ分けて着けようよ」


 それも……いいかな。


「ならこれにしよ♪」


「うんうん、そうしよー♪」


 買ったイヤリングを片方ずつ着け、私達は笑って手を繋いだ。



 幸せな時間は早い。もう夕方になり、いんふぇるのへと戻る時間が近づいてきた。


「……今日はありがとね、紅美」


「いえいえ。私も楽しかったし」


 宇宙港の展望台から夕日を眺める。前世ではできなかった母娘の繋がり。それが今になって叶うなんて……。


「風が気持ちいいね、お母さん」


「そうね…………………………は?」


「あ、言っちゃった。しまったしまった」


 え、お、お母さ、は、え、ええええ!?


「ごめんね、サーチ。私、かなり前から知ってたんだ。サーチがお母さんの生まれ変わりなんだって」


 え、えええ!?


「い、いつから!?」


「ホンニャン母さんと夜中に長話してたでしょ? あの時、こっそり聞いてたんだ」


「ウ、ウソ! 誰もいないのは確認済みだったのに」


「ホンニャン母さんから一通りの手解きは受けてるから。気配を消すのはお手のモノだよ」


 な、何ちゅー教育してんのよ、あのバカ!


「…………ごめんね」


「何が?」


「あんたを遺して死んじゃって……ごめんね」


「あ、それは恨んでない。ホンニャン母さんから、お母さんが何で組織を潰したのか聞いたし」


「…………は?」


「前の世界でホンニャン母さんに聞いた」


 あのバカ……ホイホイと教えてんじゃないわよ。


「ていうかさ、ありがと」


「へ? な、何が?」


「私が組織に利用されないように戦ってくれて……私の為に命まで投げ出してくれて……本当にありがとう」


 ……!!


「最初は『ごめんなさい』って言うつもりだった。だけどサーチと一緒に居たらさ……『ありがとう』の方がいい気がしてきた」


「……ぐす」


「だから、ごめんなさいは言わない。ありがとう、サーチ母さん」


「うえ……うえええええええええええん!!」


「え、サーチ!? ちょっと、泣かないでよ、もー」


「うえええええん! びえええええっ!!」


 ……久しぶりに……大泣きした。紅美の、娘の成長がホントに……嬉しかったから。

サーチ、嬉し泣き。

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