EP15 ていうか、電動合体?
「……しっかり映像に撮られてるし……」
翌日、ニュース番組とネットは大賑わいだった。
『突然現れた巨大ロボットは、火星のギャングの残党が乗る船をビーム砲一撃で薙ぎ倒し……』
『謎の巨大ロボットは突如姿を現しましたが、去るのもあっという間だったそうです……』
『近くの宇宙ステーションから戦いを見ていた方によりますと、ステーション襲撃を企んでいたと思われるギャング達の前に颯爽と現れ……』
「これボクだ! このインタビューに応えたの、ボクだからね!」
ハイハイ。子供かっつーの。
「それにしても、いつの間に撮影されていたんでしょうね」
エイミアが首を傾げる。確かに、あの時間に近くを航行している船はなかったはずだ。
『すみません、私が撮影したモノです』
すると意外な方がゲロッた。
「私がって……ニーナさんが?」
『はい。ブラッディー・ロアへの牽制になるかと思いまして』
なるかなあ。
『サーチ、見る人が見れば何がロボットに変形したのか、すぐにわかりますよ』
「そうかしら? あまり原型は留めてないわよ?」
『いえ、わかります。巨大ロボット研究者が言うのですから、間違いありません』
巨大ロボット研究者っているのかよ!
……ニーナさんが言ってたことはホントだった。
『巨大ロボットの正体が判明!? 近くで営業中の宇宙ステーションか』
『キュアガーディアンズの秘密兵器の可能性』
『地球外生命体の忘れ形見?』
ネットニュースで宇宙ステーションが変身説が報じられると、「巨大ロボット 宇宙ステーション」というワードがあっという間にネット検索数の一位になった。
「ホントだ……元は大学の教授だって人の証言だわ……」
巨大ロボットに詳しいって、何で大学の教授が?
「詳しいってホントなの?」
『一応専門的な事は仰っていらっしゃいます。この教授は「ボールベアリングを用いた巨大関節」が研究テーマらしいので、巨大ロボットに詳しいというのも頷けます』
巨大関節って……確かに巨大ロボット作るなら一番重要なとこよね。
「ていうか、巨大ロボットって需要あるの? そっち系のファン以外に」
『実際に建造される可能性は低いでしょうね』
だよねー。変形中に攻撃されたら目も当てられないし、変形するよりも普通に攻撃したほうが早いし。
『何故巨大ロボットになったのかは、本人に聞いてみるのが一番かと』
聞いてみたわよ。そしたら……。
『趣味です』
の一言で片づけられたよ! ていうか、その理由以外にはあり得ないだろうけどね!
次の日から、宇宙ステーションいんふぇるのは大盛況になった。
「へえ〜、これが巨大ロボットの宇宙ステーションか……」
「お父さん、あっちが腕で、あっちが頭じゃないかな!?」
「うわー、かっけぇ」
大半は子供連れの家族。中には興奮しまくりのオタク軍団もいるけど。
「いらっしゃいませ〜」
「ありがとうございます〜」
「えーっと、いんふぇるのまんじゅうは如何ですかー」
『巨大ロボットカレーも御座いますよ』
で、あまりの盛況ぶりに人手ならぬ機械手も足りなくなり、私達まで引っ張り出されるハメになった。ていうか、いつの間にまんじゅうやらカレーが?
「ねえねえ、あの人達がロボット操縦してたのかな?」
違います。ていうか、ロボット操縦者が自ら巨大ロボットカレーを売らないだろ。
『マスター・サーチ、お客様よりご要望があった「超合金インフェルノ・ノヴァ」が完成しました』
超合金まで作られてるしー!!
「こ、こうなったら自棄だ! 巨大ロボットの超合金はいかがすかー!」
「え、超合金!?」
「オレ欲しい。マジ欲しい」
「お父さん買って買って買ってー!」
「いやいや、お父さんも欲しい」
スゴい反響で、あっという間に長蛇の列。
「はいはい、一人一体までですよー。転売目的の大量購入はお断りですからねー」
いやはや、スゴい売れ行き。今日何回言ったかわかんないけど、あっという間に売り切れた。
「フレア、追加よ! フル稼働で生産して!」
『タペストリー、ストラップ、キーホルダーの生産は完了しました』
ていうか商売する気満々だな!
「つ、つっかれた〜……」
結局一日中引っ張り回らされ、閉店時間を一時間ほどオーバーすることになった。いやはや、スゴいとしか言い様がない。
『お疲れ様です。紅茶は如何ですか?』
「ライラちゃんありがと。ていうか、ライラちゃんも疲れたんじゃない?」
『そうですね、少しボールベアリングの磨耗が激しかったです』
……要は疲れたのね。
「サーチ、もしかしたらボク達、これで食べていけるんじゃない?」
かもしんない……いや、一過性かな。
「ちょっとしたブームになってるだけよ。一ヶ月もしたら忘れられてくわ」
「そんなもんかな」
「ま、ロボット変形中に移動できたのが幸いして、航路に位置を移すこともできたし、前みたいに閑古鳥が鳴くことはないわよ」
……なんて呑気に構えていたが、事態は急転直下で進行していった。
それはあるアニメーターが、お遊びで作ったCGを動画サイトにアップしたのが始まりだった。
『マジかっけぇ』
『続き見たい』
『もっと作ってほしい』
たちまちバズったこのCGをマネた動画が溢れ返り、動画サイトに専用ページが作られるまでになった。それによって更に話題沸騰していき。
『アニメ化望む』
『いや、特撮だな』
『何でもいいから映像化』
……という声が上がり始め。
ついに。
『駅員戦隊いんふぇるジャー、制作決定』
「はあああああああっ!?」
とあるポータルサイトのトップニュースに、朝から大声をあげることになってしまった。
「え、駅員戦隊って……」
「……確かにネタ切れ気味でしたけど……」
予告動画では駅員に扮した俳優達がポーズを決め、背後が五色に爆発していた。
「エ、エキインレッド……」
「エキイングリーンって優先席ですか?」
「エキインブルーにエキインイエロー……た、確かに駅員っぽい格好だけどさ……」
『エキインピンクは女性ですか。やはり定番なのでしょうか』
あ、でも今回はイエローは男だよ……ってどうでもいいか。
『電動合体、インフェルノ・ノヴァ……ですか』
あ、ロボットはまんま流用してるわ。
「サーチ、宇宙ステーションが変形するのに、何故電動合体なんですか?」
知らねえよ。
『いんふぇるジャーとインフェルノ・ノヴァが合体する事により、真の力が解放される……そうです』
合体じゃなくて搭乗じゃね?
『キャッチコピーもそれに因んでますよ』
まさか……。
『インフェルノ・ノヴァと合体したい』
止めれ。
「……もしかしてだけど、その番組の前って……美徳戦士グレートエイミア?」
「いやあああああああああああっ!!」
あ、心的外傷になってた?
何気に抉られるエイミア。




