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EP11 ていうか、ゆるゆる攻略。

 ウィーン……

 ガチャ!


 目の前に現れた作業ロボットは、私達に銃口を向ける。

 が。


 ピッピコピコピコッピロロロッ


 他のロボットが現れて、電子音を羅列させる。


 ガチャ

 ウィーン……


 すると銃口を向けてきた作業ロボットは、何もなかったかのように去っていく。


 ピロロロッ


 電子音を発したロボットも、フヨフヨと飛び去る。


「……あれがロボットの言語なのかしらね……」


 某宇宙戦争に出てくるロボットをイメージしたのは私だけだろうか。



 ソレイユが翻訳してくれた通り、ロボット達は一切手出ししてこなくなった。たまに襲ってくるヤツもいるけど、今みたいに他のロボットに止められる。


「……ホントに何者なのよ、マンマルモって……」


 大きな謎が残った。



 結果としてあまり苦労することもなくサクサク先に進み、廃ステーションの最奥へとあっという間に着いてしまった。


「今までで一番簡単なダンジョンだったかもしれない……」


「ボクはダンジョンの経験があまりないけど、普段はもっと大変なの?」


「ええ。引っ掛かったら即死の(トラップ)は当たり前、さらに嫌がらせとしか思えないタイミングでのモンスターとのエンカウント、時間が経つと変化するダンジョン、それらに見合わない安価なドロップアイテムの数々……」


「ちょ、ちょっと待ってよ。ダンジョンって何のために存在してるの?」


「私達のいた世界では、本物のモンスターを守るためのカムフラージュ用だったわね」


「は?」


「ヴィーがいい例よ。あの娘は今は普通の蛇獣人だけど、実際はメドゥーサだからね」


「メ、メドゥーサ!? あの頭が蛇だらけの!?」


「ええ。ヴィーは頭の蛇さえ隠せばわかんなかったからまだマシだったけど、半蛇人(ナーガ)や人魚なんかはシャレにならなかったわね」


「な、何が?」


「基本的にモンスターに分類された人達の大半は、普通に意思を持っていたの。無差別に人を襲ったりするようなヤツはほんの一部だったわ」


「へ? それじゃモンスターと戦う理由はないじゃん」


「だけど人間にとっては脅威でしかなかった。デカいドラゴンが友好的にすり寄ってきたって、怖いだけじゃない」


「それは……まあ……」


「やがて古人族から魔術を奪って力をつけた人間達は、モンスターを迫害するようになったの」


「なっ!? そ、それってモンスターは悪くないじゃん!」


「その通りよ。だけど人間達は問答無用で狩っていき、もともと数が少なかったモンスター達はあっという間に絶滅寸前まで追い詰められたわ」


「そ、そんな……」


 足元にあった(トラップ)を解除しながら話す。大したヤツではないけど。


「そのモンスターの状況を憂いて立ち上がったのがソレイユ……つまり魔王よ」


「あ、それでソレイユさんのことを魔王呼ばわりしてたんだ」


「そうよ……ていうか、何だと思ってたのよ」


「あはは……ヒドいあだ名だな〜って思ってた」


 あとでソレイユに報告しておくわ。


「……で、立ち上がったソレイユは攻め入る人間を撃退すると、あちこちにダンジョンを作り出した」


「ダンジョンを?」


「そこから意思を持たないモンスターモドキ(・・・)を生み出し、世界中に放ったのよ」


「……あ、なるほど。それでカムフラージュか」


「そういうこと。数を減らしたモンスター達を強力な結界を伴ったダンジョン内に匿い、さらに似たダンジョンを幾つも作ることで、意思のあるモンスターを保護することにしたの」


 モンスター達を匿ったダンジョンが旋風の荒野トルネード・ウェルデネスであり、その他の強力なダンジョンが〝八つの絶望〟ディスペア・オブ・エイトとなったのだ。


「ほへぇ〜……魔王様って大変なんだねぇ……とても偉そうな人には見えなかったんだけど」


 それもしっかりと報告しておくわ。


「ま、そういうわけで、ダンジョン産のモンスターと普通のモンスターは違うの」


「……ふぅん……それじゃダンジョンは攻略されずに、ずっと放りっぱなし?」


「いえ、流石にダンジョンだらけになったら人間がヤバいから、ギルドがある程度はダンジョンを攻略するように懸賞金を出してるわ」


「あ、そのためにダンジョン攻略してるのか」


「まーね。たまーにソレイユが気紛れで強力なドロップアイテム入れといたりするから、それ目当てに潜る冒険者もいるし」


「……そっちの世界ではソレイユさんが支配者なんだね」


「支配者じゃないけど、ソレイユとギルドは裏で繋がってるわよ」


「へっ!?」


「ダンジョンがないと冒険者はおまんまの食い上げでしょ? だから意思のあるモンスターの存在を秘匿する代わりに、攻略用(・・・)のダンジョンを作るっていう取引が成り立ってるの」


「…………」


 ま、世の中そんなもんよ。



 ついにダンジョン……ていうか廃ステーションの中枢にたどり着く。


 ギィィッ


 開かなくなってたドアをこじ開けると、中は真っ暗だった。私がランプを取り出して火を灯す。


「ランプ!? この科学万能な時代にランプ!?」


「うっさいわね! ならあんたは何かいいモノがあるの!?」


「そんなモノ、ほら」


 ナタが空中端末を開いて画面を……ああ、なるほど、バックライトか。


「手間もなく簡単に明るくできるよ」


 確かに。取り入れよう。


「んぎゃひぃ!」


 だけどイラッとしたので一発お見舞いしておく。


「うぐぐ……い、いだい……理不尽だ」


 やかましい。


「それより覇王装備は…………何もないわね」


「ふ、普通にコンピュータルームだね」


 空中端末なんてモノがある時代にコンピュータルームが必要なのかな。


「ん? これってとっくに廃盤になってる。相当古いコンピュータだね」


 リンゴとか窓が全盛の時代に、P○98で頑張ってるようなもんか。


「どれどれ…………ん? んん? 電源は?」


 これって……私が前世で使ってたデスクトップと同じ構造ね。


「電源はここよ」


 パチンッ

 フィーン


 あれ? 電源が入った。


「ス、スゴい。まだ動くんだ」


 五分ほどて完全に起動したので、試しに「覇王装備」と打ってみる。


「……何々……覇王の名を冠した腕輪には膨大なエネルギーが感じられ、最新宇宙ステーションのエネルギー源とされた…………ってことは、このステーションて……」


 太陽発電でもなく核融合でもなく、強力な装備品をエネルギー源にしたのかよ!


「えっと……だが五年ほどでエネルギーが尽き……覇王の名を冠した腕輪も粉々になり……はいい!?」


 腕輪が粉々になったって……マズいじゃん!

壊れたのか。

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