EP9 ていうか、まあるいの。
「「きゃあああ!」」
どずんっ!
爆風に吹っ飛ばされるカタチで穴から落ちてきた私達は、その勢いのまま鉄製のかったい床にお尻をしこたま打った。
「の、のおおおおぅ……」
「うががががが……」
しばらく踞ってから、お互いに涙目で立ち上がる。
「あいたたたた……ナ、ナタ、ケガはない?」
「いてててて……う、うん。たぶんお尻は真っ黒になってるだろうけど」
安心しなさい、私もだから。
「そ、それよりここは? 思わず緊急避難で逃げたけど」
「まずはニーナさんに確認してみたら?」
「あ、そうね。ニーナさん、ニーナさん聞こえる? こっちは敵襲を受けたわ」
『…………ザザ……ザザザ……』
「……ダメね。どうやら電波を遮られているみたいだわ」
「なら……自分達で進むしかないね。ニーナさんに送ってもらったデータは生きてるの?」
「ええ。それはバッチリ」
「ならそれが頼りだよね。はぁ〜あ」
「……何よ」
「いやさ、かなり前のデータなんでしょ? 構造が変わってなきゃいいな〜……って思っただけ」
「それは心配いらないわ」
「何で?」
「すでに構造変わりまくりだから。ここ、データでは上の部屋と繋がっていて、宿直室のはずなんだけど」
宿直室にあって然るべきな布団やベッドはなく、代わりにあるのはガラクタのみ。それも鉄の固まりみたいなモノばかり転がっている。
「……つまり……そのデータはあまり役に立たないってことだね?」
「そういうこと」
ナタは頭を抱えた。
おっかなビックリで徐々に前に進む。
「この角を曲がった先に階段が…………ダメね、塞がれてる」
さっき宿直室に転がってたのと同様の鉄クズが積み上がり、完全に道を塞いでいた。
「うあ……」
「ナタ、大砲で吹っ飛ばせない?」
「できなくはないけど、正直質量がありすぎるよ。全部吹っ飛ばしたときには、どれだけの血液がいるか……」
それはマズい、私が出血多量で死ぬ。
「そういうサーチは? ガンブレードのバズーカモードって言ってたじゃん」
「初めて使ってみたけど、ゴッソリと魔力を持っていかれたわ。これだど二、三発が限度ね」
「……つまり……別のルートを探すしかないか」
「そういうことね」
戻ってすぐの場所にエレベーターがあるので、そこを見てみることにする。
……そこのキミ。何で最初からエレベーターを使わないんだ、と思ったでしょ? エレベーターって一度乗っちゃうと完全な密室になっちゃうから、敵襲が疑われる場所では絶対に避けなくちゃいけないのよ。わかった?
「……あった。でも電源は死んでるみたいね」
ボタンを押してみても何の反応もない。だったら……。
ガギッ ギィィッ
ナイフをエレベーターの扉の溝に差し込み、ムリヤリこじ開ける。
ギギギギギッ
「かなりの間動いてなかったみたいね。これならヒモを登ればイケるかな」
「ヒモかあ。そういうときって、登ってる最中にエレベーターが動き出したりするんだよね」
ありがちね。某ジョーンズさんの洞窟内で転がってくる岩的な。
「大丈夫よ、逆に動いてもらったほうが楽だわ」
「そうだね。なら登ろうか」
ナタが先にヒモを掴んだ。
「えっほ、えっほ」
「ナタ、そこの扉吹っ飛ばして」
「りょーかい」
ナタはサイボーグの腕をバズーカに変化させ、近距離でぶっ放つ。
ずどおおおん!
っけほ。スゴい砂ぼこり……。
「……オッケー。この階はバリケードされてないよ」
「ならそこを進みましょ。データでは小型の宇宙船が格納されてるはずだから」
「そうね、はず、だね」
すでにスクラップになってる可能性も多々あるのだ。
タンッ
ナタが先に降り立って周りを警戒する。そのあとに私が降り、再びデータを確認する。
「こう行ってここを曲がって…………うん、ここはほとんど構われてないわ」
「うん、何もいないみたいだ」
お互いに頷きあい、私達は銃を構えたまま先に進む。曲がり角を順番に警戒しながら曲がり、ホントに少しずつ前へ。
「……何もいないわね」
「でも相手が機械なら何の反応もなくて当然」
そうだったわね。火星の炭鉱ダンジョンもそうだったわ。
「おまけに空気もないから、振動も感じられない……」
私の最大の武器、全身センサーもこの場合は全く使えない。今回は目視でいくしかない。
ジリ……ジリ……
最大限の警戒態勢で少しずつ進んでいく。
チョロッ
視界の端に動くモノが見えた私は、ガンブレードをマシンガンモードにしてぶっ放つ。
ダダダダダダダダッ!
チュ!? チュチュウーーッ!!
「何だ、ネズミか」
「……サーチ、ネズミがいるってことは……」
ナタが言わんとすることはわかる。モンスターが闊歩してる場所にはまずいないネズミがいるっていうことは。
「この階はどうやら安全みたいね」
少しだけ警戒レベルを下げる。ま、例外ってのはいつでもあり得ることだから、油断せずに進むけどね。
「もう少し進行速度を上げるわ。ナタは引き続き後ろをお願い」
「うん」
さっきよりも早い足取りで進む。格納庫が近づくにつれて、何やら微妙な気配を感じるようになってきた。
「……何かいるわね」
「こ、この距離でわかるの!?」
「空気の流れが少し感じられる。たぶん格納庫内には空気が充満してて、漏れ出てきてるんだわ」
「あれ? さっきネズミが平気そうに走り回ってなかった? と言うよりこのブロック自体に空気が充満してるんじゃ」
「……………………さ、さあ、行くわよ!」
いかん。少し感覚が鈍ったかな?
「ここが格納庫ね」
「うん、そうだね。『格納庫』って書いてあるんだから間違いない」
あ、ホントだ。ご丁寧だこと。
「さて……開くかな」
ぐっ ぐっ
「うん、全くビクともしない」
「ならボクがやってみようかな? サイボーグの腕の力はスゴいよ」
ガッ ギギギギギギギギギギッ
「……うん、扉の方がスゴかった」
使えねえ!
「……仕方ない、こういうときはオーソドックスに……」
コンコン
「ノックしちゃうの!?」
「シー。このまま隠れて、誰か出てきたところを……」
「そんな姑息な手段、うまくいくはずが」
ガチャン ギィィッ
「んなアホな!?」
「ほら、早く突っ込むわよ!」
スタートダッシュを決めて少しだけ開いた扉へ。
「よし、間に合った…………!!?」
扉の中には。
「まんまーる!」
「まるまーり!」
「まりまーり!」
な、何やら見覚えのある丸い物体が……!
「あ、あんた達は……マンマルモ!?」
「「「まるまーり!」」」
……超稀少モンスター、マンマルモがいっぱいいた。まるまーり!
まんまーる!




