EP4 ていうか、第四の掟。
「お前だけ来い。他は船に残れ」
船に乗り込んできた兵士達は、私だけを連れていく。
「サーチ!」
「心配しなくても大丈夫よ。それよりも船をお願いね」
「は、はい」
「エイミア」
「はい」
「くれぐれも、船をお願いね」
「! …………気をつけて……」
涙目のエイミアに見送られながら、私は連合軍の船へと連行された。
「覚悟しとけよ。お前は洗いざらい吐くまで出られない運命だ」
「吐くって……何を?」
「あの難破船で何をしていたか、だ」
「何をしていたかって……要救護対象かと思ったから、人がいるか確認してただけよ」
刑事ドラマに出てくるような取調室ってホントにあるのね〜。
「おい、容疑者のくせして態度デカいな」
「容疑者って……何の?」
バアン!
私の向かいに座っていた男が机を叩く。ていうか、自分の手が痛かったんじゃないかな。
「嘘をつくなぁ!」
あ、ちょっぴり涙目。やっぱ痛かったんだ。
「お前らが密輸の片棒を担いでいたのはわかってるんだぞ!」
…………はい?
「……何の?」
「麻薬とか、武器とか、違法なモノに決まっているだろ!」
「ああ、ないない。カケラもない」
「だから! しらばっくれるなあ!」
バアン!
だから痛いでしょ。
「だったら調べてみればいいじゃない。船の隅々まで調べてもらって構わないけど、何にも出てこないわよ」
「……いよ〜し。文字通り隅々まで調べてやるからな」
「あ、船内にいるパーティメンバーに手を出したら反撃されますよ。軍とはいえキュアガーディアンズの第四の掟は適用しますからね?」
「……チィッ」
キュアガーディアンズ第四の掟ってのは、相手が誰であっても理不尽な対応にはそれなりの報復をします、ってヤツ。キュアガーディアンズがバックにいる以上、連合軍であっても手荒なことはできない。
「違法なブツがあったらすぐに拘束するからな。その時は覚えておけよ」
あらあら、三流のザコでも言わないセリフを、軍が言っちゃあマズいっしょ。
「……何も出なかった」
ほれ見ろ。
「なっ!? よく探したんだろうな!?」
「ああ! まっったく違法なモノは出てこなかったよ!」
「たがら言ったでしょー、私達は無関係だって」
「く……!」
「それじゃ私は帰らせてもらうから」
そう言って立ち上がるが。
「待て」
「……何よ」
肩に警棒を当てて私を止めた男が、私の身体を舐めるように眺める。
「容疑者のお前は第四の掟の適用外だな」
「……だから?」
「お前には容疑がかかったままだ。よって身体検査を行い、違法なモノを持っていないか調べる」
ち、そうきたか。
「……確かに適用外だわね。わかったわ、好きに調べればいいでしょ」
男達はニヤニヤしだす。こいつら、私をストリップさせる気満々だな。
「……はい、これで最後。もう何にも着てないわよ?」
女の兵士が私の衣服を調べるが、何も出てこない。さすがに男に服を触られたくなかったので、そこだけは女の兵士が担当してくれた。
「バカな!? 本当に何も出てこないのか!?」
「はい、間違いありません」
ほら見ろっての。
「これでカンペキに容疑は晴れたわよね?」
「あ、ああ」
「だったら服は返してもらうわよ」
今日はビキニアーマー着てなくて正解だったわ。絶対に怪しまれただろうし。
「待ってください」
下着を着けようとする私を制止する女の兵士。何よ。
「……女性ならばもう一ヶ所隠せる場所があります」
「!」
「ああ……そうだな」
男達が揃ってニヤニヤしだす。こ、こいつら……!
「そういうわけですので、調べさせていただきます」
「あのね、そんなの『はいそうですか』なんて受けると思う?」
「ああ、抵抗しました! 取り調べ中に抵抗しました!」
「よおし、公務執行妨害の現行犯だな!」
……やっぱり。それが目当てか。
「……仕方ない。キュアガーディアンズ第四の掟に該当すると判断し」
ゴキッ めきゃあっ
「が…………ああああああああああああっ!!」
手を伸ばしてきた男の腕を掴み、体重をかけて関節を逆に曲げる。
「殲滅します」
「ぐぎゃあ!」
一分もしないうちに男は全員倒した。手加減一切しなかったから、何人かは事切れている。
「あ、貴女、軍に抵抗して勝てると思ってるの!?」
まだ生き残ってる女の兵士がへっぴり腰で強がる。
「……あんたってさあ、異性には好かれるだろうけど、同性からは嫌われてない?」
「う、うるさい!」
図星か。
「つまり、私の一番嫌いなタイプだわね、あんた」
「だ、だから何よ!?」
「別に。殺すのに躊躇する必要ないな、と思って」
「な!?」
ガスッ!
「ぐは!?」
鳩尾に拳が入って屈む。低くなった頭に向かって。
バキィ! ぼきゃ!
丸のこキックが首筋に決まり、首の骨を粉砕する。
「……っ」
女の兵士は白目を剥いて崩れ落ちた。ちーん。
「さーてさて、さっさと脱出しますか」
テレフォンを音声のみで繋ぎ、エイミアに合図を出した。
「……第四の掟、適用!」
バリバリバリバリ! ズドォォォン!
「「「ぎゃあああああ!」」」
「やっとかぁ。いい加減にガマンの限界だよ、ボク!」
ダダダダダダダダッ!!
「ぎゃ!」「がはっ!」「ぐあっ!」
『漸くですわね。これで大掃除が出来ますわ』
ぐしゃ! ぐしゃ! ぐしゃ!
「「ラ、ライラちゃん……」」
『何か? 敵を倒すのでしたら、頭を潰すのが確実ですわよ?』
「「そ、それはそうだけど……」」
『サーチ、船内の兵士は片付きましたよ』
オッケー。
「なら戻るわ。こっちもだいたいは片づいたし」
『わかりました』
テレフォンを切ると、兵士の死体を踏み越えて廊下を駆け出した。
「おまたせ」
艦橋に戻った私をみんなが迎えてくれる。
「大丈夫でしたか!?」
「乱暴されなかった?」
『貞操は無事ですか?』
「大丈夫大丈夫。身体検査で服剥かれただけ」
「「『なら大丈夫ですね』」」
「ちょちょちょっと!? 私、複数の男の前でストリップするハメになったんだけど!?」
「大丈夫でしょ。だってサーチは露出狂ぅげぇふぉ!?」
「誰が露出狂よ!?」
「『……はああ』」
「何よ、そのため息は!?」
『勝手に発射しますね』
私達が言い争っている間にニーナさんが主砲を撃ち、私を拘束した船を撃沈した。
その後、キュアガーディアンズが間に入ってくれて、私達の無実を保証してくれたので、連合軍は私達を解放した。
ただ、一隻船を撃沈したことは関しては、散々言われることになった。
「第四の掟を過大解釈しすぎだ!」
と。
その他の掟は未定。




