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EXTRA ナタと、ライラちゃん

 ボクはナタ。元タヌキ獣人のアサシンだったけど、サーチやヴィーやナイアやリジーのせいでサイボーグにされてしまった可哀想な人なんです……。


「おまけに下着ドロボーにまであっちゃうし……ボクってホントについてないんで……」


 最近大規模なパーティの人員入替があって、仲が良かったリジーやナイアと離れてしまったんです……。


「まあ、エイミアは優しい娘だからいいけど」


「ん? 何ですか、ナタ?」


「あー、何でもない」


 エイミアはボクの前世を知らないらしい。どうやらボクは元々三つ子で、敵に操られて身体を失い、別の世界でネズミになっていた……という数奇すぎる運命だったそうだ。


「ナタ、食べないと大きくなりませんよ?」


「……ボクはサーチみたいに巨乳に憧れはないんだけど」


「ちちち違います! 背丈の事ですよ!」


 確かにボクは背は低い。パーティで一番チビなサーチの次に低いくらいだ。


「別に。ボクはこのくらいの身長がちょうどいいと思ってるから」


「う……で、ですけど! ちゃんと食べないとダメですよ!」


 エイミアは優しくてとっても世話焼き。それが原因で暴走もするけど、殺伐とした生活をしてきたボクには、それがとても心地いい。


「ほらほら、このスープはまだ温かくて美味しいですよ……きゃっ!?」

 つるっ ばちゃああああん!

「うわっちぃぃぃぃぃぃぃ!?」


 前言修正。心地いいけど、被害は甚大だ。



「ふー、熱かった……」


 頭に付いているベーコンを取る。サイボーグ化に伴って灰色になった髪の毛には、スープの具が目立つ。


「仕方ない、シャワーで長そうかな」


『シャワーですね。どうぞ』


 船の制御システムのニーナさんが案内してくれる。ボクにとっては優しいお姉さんみたいな人だ。


「ありがとう、ニーナさん」


『いえいえ。後はライラちゃんに任せてありますので』


 ライラちゃんかあ……あの娘とはまだ打ち解けてないんです……。

 服を脱衣カゴに放り込んでシャワールームに入る。


 ガチャ


『お待ちしておりました、ナタ様』


「うひゃあ!? ラ、ライラちゃん!?」


 ライラちゃんが腕捲りをして待っていた。な、何のつもりだよ!?


『さあさ、ナタ様、お背中をお流ししますわ』


「べべべ別にいいよ! 自分でできるから!」


『そう仰らずに。もうサーチ様とエイミア様は体験済みですわ』


 体験済みって何だよ!?


「ホ、ホントにいいって! 自分のことくらい自分でできるから!」


『そう仰らずに』


「大丈夫だって! 一人で入りたいんだよ!」


『そう仰らずに』


「余計なお世話なんだよ!」


『素直に背中流させないと暴走したくなるんで夜露死苦』


「すいません、よろしくお願いいたします」


 何でこんな可憐なメイドさんが、元ヤンなのかな!?


『承りました。ではお背中を』


 ……正直な話、シャワールームで二人って、メチャクチャ狭いんだけど。


『背中の次は腕を』


 はいはい。


『腕の次は脚を』


 はいはい。


『ついでですのでお腹も失礼致します』


 はいはい。


『つ、次は……胸を』


 はぅあ!?


「ちょ!? く、くすぐったいんだけど!?」


『……ナタ様……形は良いですね……』


 な、何か息づかい荒くない!?


『つ、次は……太ももも』


 ひあ!


『つ、次は……お尻を』


 ひああ!


『つ、次は……女性の秘』


「いやああああああ! 助けてええええ!」


 シャワールームの扉を蹴破って脱走した。



「助けてええええ!」


 ガチャ


「何よ、うっさいわね……ていうか、ナタ、裸で何やってんのよ?」


 サ、サーチ!?


「助けて助けて助けてライライライライライラちゃんが!」


「ちょっと落ち着きなさい。ニーナさん、しばらくライラちゃんに近寄らないように言ってくれる?」


『わかりました』


「……これでライラちゃんは来れないわ。とりあえず服を着てから、事情を話しなさい」


 うう……サーチがとっても頼もしく見える。



「あはははははははははははははははっ!!」


「な、何で笑うのさ!?」


「はははは……けほけほ、そ、そうだったわね、あんたは知らなかったのよね……ぶふ」


 な、何でボクがそこまで笑われるのかな!?


「あはは、ライラちゃんはリファリスのメイドだからね。やっぱり女の子が大好きなのよ」


「女の子が大好きって……え、えええ!?」


「リファリスが両刀使いだから、その影響かもよ」


 ちょっとお!? パーティ内でカンベンしてよ!


「イヤなの?」


「イヤに決まってるでしょ!」


「ならそう言えばいいわよ」


「……はい?」


「大丈夫。ライラちゃんはわかってくれるわよ」



 その後、サーチに言われた通りにライラちゃんに伝えてみると。


『畏まりました。ナタ様には二度とそのような事は致しません』


「……へ?」


『メイドたる者、主人が嫌がるような事は以ての外で御座います。メイドの神に誓いまして、二度とナタ様の嫌がる事は致しません』


 メイドの神様っているの!?


『ナタ様、これからも誠心誠意仕えさせて頂きますね』


「ちょ、ちょっと待って。何でボクに仕えるってパターンになるのかな?」


『……いけませんの?』


「い、いや、その……」


 う〜……ライラちゃんの事が理解できない。根っからのメイドなんだな〜…………ん?


「根っからの……メイド?」


 ……そうか。価値観が違うんだ。ボクは元アサシンだから、依頼を遂行することが全てだった。それと同じで、ライラちゃんはメイドとして仕えることが全てなんだ。

 つまり、ライラちゃんの「仕えさせて下さい」は「友達になって下さい」という意味なんだ。


「……ライラちゃん、仕えさせてって言われ方だとさ、やっぱり抵抗はあるんだよ」


『……はい』


「だからさ、ライラちゃんはボクにとって『極度に世話好きな友達』になってくれないかな?」


『…………極度に……世話焼き』


「…………どうかな?」


『…………畏まりました。私は今日からナタ様の……いえ、ナタちゃんの「極度に世話焼きな友達」にならせて頂きます。それで宜しいですか?』


「うん、友達だったら大歓迎だよ。よろしく、ライラちゃん」


『はい、ナタちゃん』


 ……できればナタちゃんは止めてほしかったけど……ま、いいか。



『はい、ナタちゃん。あーんですわ』


「ちょっ!? ライラちゃん、何かエスカレートしてない!?」


『いーえ、単なる「極度に世話焼き」なだけですわ。はい、あーん』


「だから、ちょっとおお!?」



「……あの二人、何があったの?」


「……さあ……」

明日から新章です。

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