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EP13 ていうか、捜します。

 アンドロイドにも入浴は必要なことだ、というムダ知識を得た私は、このリゾート施設で働いていたというウィリーについて聞き込みを開始した。


「……ていうか、従業員がいないんだけど」


 露天風呂を出てから、浴衣姿で従業員を探して歩いてるのだが……見つからない。


「そういえばフロントにもいなかったよね」

「そういえば一度も会ってませんね」

『……もしかしたら、この施設は従業員の居ないオート施設なのでは?』

「「「早く言え」」」


 とはいえ、どんな最新技術であろうと完全無人化はできないはず。だからメンテナンス担当の従業員を探せばいいのだ。


「というわけで、作業着を着た人を探せばいいわ」


『もしもメンテナンス担当がアンドロイドだったらどうしましょう? 作業着なんて着ませんよ?』


「………………ケースバイケースで」


「要は行き当たりばったりだよねふごふぉ!?」

「余計なこと言ってるヒマがあるなら、ちゃんと探しなさい」


「は、はい……」



 とは言うものの。


「えー、あなたはここの従業員ですか?」


『違います』


「すいません、貴方はこの施設の関係者?」


『違う違う』


「あー、えー、えくすきょーずみー」


『ぼくはちがうよ〜』


『あの、直接メインシステムに問い合わせた方が早いのでは?』


「「「早く言え」」」


 ていうか、エイミアは誰に聞き込みしてたのかしら?


『当該施設を統括するメインシステムに問い合わせを』


 ライラちゃんはそう呟くと、人工皮膚で覆われた目蓋を閉じた。

 余談だけど、ライラちゃんは顔だけは人工皮膚で作られていて、目も口も鼻もある。だから表情は変化するのだ。


『…………過去に在籍した人物を検索……氏名、ビル・ウィリー・ウィリアムズ』


 傍目ではわからないけど、ライラちゃんは今このリゾート施設を統括するコンピュータと、目まぐるしいやり取りを行っているのだ。

 ……やがて。


『……情報提供を感謝致します。これにてアクセスを終了します』


 どうやら終わったようだ。


「どうだった?」


 目を開いたライラちゃんは、ニッコリと微笑み。


『個人情報は公開できないそうですわ』


 結局わかんなかったのかよ!



 その後も従業員を探してみるものの、一人も見つけることはできず。


「…………ここって完全無人化なのかな?」


「そう考えた方が自然ですね。本当に誰も居ませんし」


「ボクはもう疲れたよ。ご飯が食べたいな〜」


 ナタが空腹を訴え出した。確かにお腹空いたなぁ。


「仕方ない、一旦部屋に戻って夕ご飯を食べましょ。それから仕切り直しかな」


「そうしましょう。部屋にご飯を持ってきてもらえばいいですしね」


 ………………ん?


「……ねえ、ライラちゃん。こういうオート施設って、ご飯はどうやって出てくるのかな?」


『天井から下りてきたり、床から追り上がってきたりしますわ』


 うわあ、情緒もクソもあったもんじゃない。


「でもさ、リゾート施設なんだから雰囲気って大切じゃん。そこは従業員を使うんじゃないかな?」


 だよね? だよね?


『その可能性は否定できません。しかしメインシステムと同様に個人情報を理由に口外しない可能性もあるかと』


 そうね、その可能性が高いわね。


「ま、そのときはアメとムチを使いわけて」


「サーチ、拷問はダメですよ!?」


「あのね、リルじゃないんだから」



「ぶあっくしょい!」


「風邪ですの、リルさん?」


「い、いや。何か急に鼻がムズムズして」



 夕ご飯を頼んでから五分後。


 ガラッ


『失礼します。お食事をお持ちしました』


 来たあああああ!!


「エイミア、足を!」

「い、いいんですかあ!?」

「ならボクは手を縛るね!」


『な、何をなさいますの!? あ〜れ〜』


 ご飯を運んできたアンドロイドを手込めにゲフンゲフン、取り押さえる。


「足縛りました!」

「手もオーケーだよ!」

『私が重しになりますわ』


『お、お助けを! 命だけは!』


「別にあんたに危害を加えるつもりはないわ」


「押し倒して縛ってる時点で十分に危害だよねおふぅふぉ!?」


 黙ってなさい!


「で、聞きたいことがあるんだけど」


『はははい! 何なりと!』


「あんたさぁ、このリゾート施設で働いてたウィリーってヤツ知ってる?」


『……ウィリー? もしかしてビルの事ですか?』


「知ってるの? 元軍人なんだけど」


『はい、間違いありません。自分は昔軍に所属していた、とよく言っていました』


 びんごぉっ!


「そいつのことで知ってることを全部話して!」


『え、あ、はい。私が知っている事は……元軍人だという事と、この施設で破廉恥な行為に及んで逮捕された事ですね』


「逮捕歴があるのね! ていうか、ハレンチな行為って……覗き?」


『覗きは勿論、盗撮、露出、痴漢、強制わいせつ未遂』


 外道だなっ!



 アンドロイド従業員さんには十分な口止め料を渡す。スキップしながら帰っていったから、おそらく大丈夫だろう。


「警察に捕まってたんなら、その後の動向もわかるわね」


 この世界では性犯罪者の動向は逐一チェックされているらしい。だから警察には確実にウィリーの情報があるはずだ。


「なら……警察のシステムにハッキング『お任せ下さい』へ!? ニーナさん!?」


 船の中じゃないのにどうして!?


『此処ですよ、此処』


 ここって…………へ?


「ラ、ライラちゃん?」


『わ、私ではありません!』


 必死に否定するライラちゃんだけど、口が勝手に動き出す。


『ご免なさいね。少し口をお借りします』


 口をお借りしますって……ライラちゃんにはひたすら迷惑だと思うよ。


『…………っ! …………っ!』


 ほら、両手で必死に『止めてっ!』ってアピールしてる。


『ではハッキングを始めます……出来ました』


 早いな!


『ビル・ウィリー・ウィリアムズ……………………ありませんね』


「ない? そんなバカな」


『一応何度か逮捕はされているようですが、全て証拠が不十分だったらしく不起訴となっています』


「証拠が不十分って?」


『絶対的なアリバイがあったようです』


 アリバイって……そんなの≪立体幻影≫(ドッペルゲンガー)に決まってんじゃん!


「ていうかさ、ウィリーの経歴調べればさ、軍に所属してたとか≪立体幻影≫(ドッペルゲンガー)使えるとか、わかりそうなもんじゃん?」


『そうなる前に行方を眩ましていたようです。地球や月でも同様の事件の記録が残っています』


 惑星単位で離れてると、警察の連携もないに等しいか。

ズル賢い。

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