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EP2 ていうか、宇宙コロニーへ。

 何とかドタバタを乗り越えて宇宙へと飛び立った。

 けど。


「さて、どこ行こうか」


「「『…………は?』」」


 私の呟きを聞いた全員が目を点にする。そりゃそうか、私でも同じ反応するだろうし。

 ていうか、私なら殴るかも。


『サ、サーチ様、流石に今の御言葉は聞き捨てなりませんわ』


「ライラちゃんの言う通りです! 何の目的もなく飛び立ったのですか!?」


「サーチ、それがホントなら無計画にもほどがあるよ」


 んなもん私だってわかってるわよ!


「……マーシャンからの連絡待ちなのよ」


 私の呟きで、再び動きを止める三人。


『……陛下ですの』

「……マーシャンじゃあね……」

「……陛下かぁ」

「「『なら仕方ない』」」


 これで納得されちゃうマーシャンは、人徳なのか諦めなのか……。


「ホントなら今日の朝七時までには連絡があるはずだったんだけど……」


「無い……んですね?」


「ま、当然っちゃー当然か。何てったってマーシャンだし」


「……サーチ、失礼なこと言うけど、それだけ信用できないことがわかってる陛下の言を信じて、宇宙に飛び立ったの? なら無計画すぎるっていう言葉をボクは取り消せないよ?」


「言いたいことはわかるわ。ナタ、これを見て」


 私は操舵席の側に無造作に置いていた紙を見せる。


「へ? ナニナニ…………は、はあ? 借金の一覧表?」


『借金ですの? 確かナバナとリファリス様からの報酬で、かなり貯金が出来たのでは?』


「まあね。でもマーシャンが私達名義で大量にツケてやがってね」


「あ、ホントだ。ツケた張本人は陛下だけど、請求先はボク達になってる」


「で、仕方ないから判明してるだけ払ったんだけど……たった三日で破産しかけて」


「は、破産!?」


「で、法的に私達に支払いが来ないように手続きした上で、速攻で捕縛したマーシャンをリファリスに預けて、私達は火星を脱出したのよ」


「べ、別に脱出する必要は無かったのでは?」


「…………いつの世にも闇金ってのがいるのよ」


「闇金って……まさか陛下、そんなヤバいとこからも借金を!?」


「…………法的根拠もクソもないからね、あの手の連中は」


 実際に私達がしばらく暮らしてたアジトには、結構な人数の借金取りが押しかけていたらしい。


「ヴィー達に助けてもらえば……」


「ヴィー達も破産寸前だって」


 エイミアが考えつくようなことは、私だって考えてるわよ。


「ま、リファリスやナバナさんだけじゃなく、キュアガーディアンズからも圧力がかかってるはずだから、借金の件はほぼ解決なんだけど……」


『そのような状態で火星に居れば、何かしらの騒ぎが起こるのは必至ですね』


 そういうこと。


「それにブラッド・マーズ・ファミリーの残党の件もあるし」


 ナバナさんの話だと、ブラッド・マーズ・ファミリーの創始者とブラッディー・ロアの幹部が手を組んで、何やら企んでいるらしい。


「そういうわけだから、これ以上火星に残るのはめんどくさかったのよ」


「そう……ですね。ならどうしましょう?」


「だから……さっきの『どこ行こうか』っていう私の呟きに戻るのよ」


「「『……成程』」」



 それから話し合いはしたモノの、どこに行くのか当てもないので。


『取り敢えずは一番近いコロニーに向かいませんか?』


 ……というライラちゃんの無難な提案にのっかり、一番近いコロニーへ向かうことになった。


『地球と火星の間には大小二十七のコロニーがあり、現在定住化しているモノは十一を数えます』


 ほとんどは火星移住の際に作られた前線基地だったそうで、現在は大半は使われていないらしい。


『火星までの交通の中継点としてそれなりに(・・・・・)繁栄しているコロニーもありますが、ほとんどはキュアガーディアンズや各国の駐在員とその家族が滞在している場所がほとんどです』


 空き宇宙コロニーなんて宇宙海賊の絶好のアジトだ。それを防ぐためにも軍の駐留も必要となり、五ヶ所ほどは軍の基地となっている。


「……ていうことは、十一ヶ所ある有人コロニーのうち、五ヶ所は入れないわね」


『はい。更に言えば三ヶ所は各国の共同管理になっていますので、一般の船は近づけません』


「……となると、実際に寄ることができるコロニーは三ヶ所か……」


『そのうちの一つはキュアガーディアンズの派出所です』


「派出所ってことは、住んでるのは駐在員と家族のみ?」


『その通りです。ですので実際に人が住んでいる大規模コロニーは二つだけ、という事になります』


 片方は少し前までエイミア達が滞在してたはずね。


「だったらもう片方の……大きいヤツに行ってみましょうか」


『第二十一コロニーですね。わかりました』


 ライラちゃんが端末を操作し、航路図を画面に出す。


「……流石に距離があるなあ。ニーナさん、あとはお任せしてもいいかな?」


『わかりました。私の方でやっておきます』


 操舵席を離れると、ライラちゃんを連れてリビングへ向かう。


 プシューッ


 自動ドアが開く音が響き、エイミアとナタがこちらに注目した。


「エイミア、ナタ、会議するから集まって」


「「はーい」」


 リビングルームで各々に過ごしていた二人を集め、中央のテーブルに座る。その後ろにライラちゃんが控えて……ちょっと待て。


「ライラちゃん、何で私の後ろに? 座ってくれていいのよ」


『いえ、私はメイドとして働いているのが日常ですから。気になさらないで下さい』


「いやいや、気にするって。仲間にメイドやらせるなんておかしいでしょ」


 私の言葉を聞いたライラちゃんは、準備中のティーポットを置いて。


『そうなりますと、私は椅子ではなく地面に座りますが?』


「何で地面なのよ!?」


『それはその、このような』


 …………ヤンキー座りかよっ!


「両極端だな!」


『はい。どちらかになります』


「っ…………ならメイドフォルムでいいわ」


『はい、私としましてもその方が有り難く存じます』


 そう言ってイソイソとお茶の準備を進めるライラちゃん。


「……サーチ、多分ですけど、ライラちゃんがメイドの仕事をこなすのは、サーチが暗殺を行うのと同じベクトルなんですよ」


「めっっちゃくちゃかけ離れたベクトルじゃね?」


「えっとですね、仕事の内容ではなく、仕事を行う姿勢……と言いますか」


「…………ああ、つまりは仕事=生き甲斐みたいな感じかな? だったらボクもわかるよ」


 仕事が生き甲斐……ワーカーホリックばっかだな。


「ボクもターゲットに照準を合わせる瞬間がたまらなくて……うふ、うふふふふ」


「……それは違うなぁ」

『私もそう思いますわ』

舞台は宇宙コロニーに移ります。

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