表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
917/1883

EXTRA サーチと、サーシャ・マーシャと 3

「……わざわざ違う世界に来てまで生物の改造を行ってるってことは」


「おそらく科学者が元々居た世界では、遺伝子操作や生物の改造が禁忌とされていたのじゃろ。何処でもよくある話じゃが、タガの外れた科学者の知識欲は止まる事は無いからの」


 いわゆるマッドサイエンティストってヤツね。


「そりゃ知識欲か何か知らないけど、タガでも外れないと作れないでしょうよ、モンスターなんて」


 この世界のモンスターって、異様に人型のモンスターが多い。たぶん人間の遺伝子をベースに他の動物を組み合わせたりして、モンスターを作り出したのだろう。


「さて、これで魔神についてはわかったじゃろ。これで全てではないが、先を語るには今度は覇王の話をせねばなるまい」


 今度は……覇王か。


「科学者……魔神によって生物は増えていき、何も居なかった世界は活気に溢れていった。じゃがその中で人間は絶滅の危機に陥っていたのじゃ」


「な、何でいきなり絶滅の危機?」


「簡単な事じゃ。頭脳は同じでも身体能力に差があれば、勝敗は明らかじゃろ?」


 あ、そうか。人間と獣人なら、どう考えても身体能力は獣人に分がある。


「……あ、でも、人間には魔術が」


「その辺りは暗黒大陸で古人族の話を聞いておるじゃろ。つまり、古人族こそが原初の人間。つまり魔神によって作られた最初の人間なのじゃよ」


「え? じゃ、じゃあ、今の人間って?」


「その話は先じゃ。順を追って話そうぞ」


 あ、はいはい。


「魔神は力の弱い人間の為に、空中に無尽蔵に漂っていた魔素を力に変える術……つまり魔術を開発し、人間にだけ使えるようにした。これによって人間は勢力を盛り返し、世界に均衡が生まれたのじゃ」


「それが……暗黒大陸での神話? ゴールドサンの書物に書かれていた」


「ほう、あれを読んでいたか。ならば話は早いの」


 多少の違いはあるけど、マーシャンの話とは一致してるわね。


「……ていうか、覇王は?」


「じゃから〜……順を追って話すと言うておるっ」


 あ、はいはい、ごめんなさい。


「たく……せっかちじゃのう……さて、後に古人族と呼ばれるようになった人間の中には、獣人との戦いを嫌って暗黒大陸を出る者達も居った」


「……新大陸ね」


「そうじゃ。同じように人間との戦いに嫌気がさした獣人達も新大陸に渡り、新しい国を作った」


「……古人族と獣人がうまく共存してたのも、暗黒大陸での血深泥の戦いを知っていたから、てことか」


「うむ。お互いにぶつかる事が無いよう、ある程度の距離感を保っておったのじゃな……じゃが」


 マーシャンは深い深いため息を吐いた。


「それら全てを揺るがす、魔神ですらも想像し得なかった事態が起こるのじゃ」


「…………〝知識の創成〟(アカデミア)?」


「そうじゃ。よくわかったのう」


 今までの話を聞いてれば、〝知識の創成〟(アカデミア)の存在って異質すぎるし。


「……あの似非神の元となったのは、古人族の少年じゃった。どちらかと言えば落ちこぼれでの、周りからは酷く苛められておったようじゃ」


「お、落ちこぼれが神様にまで上り詰めちゃうわけ?」


「そんな少年じゃったが、一つだけ幸運な事があった。それが……魔神に目をかけられるようになった事じゃ」


 魔神自らっすか。どえらい幸運ね。


「魔神自身も元の世界で苛められていたようでな、苛められっ子を放っておけなかったようじゃ」


 さいですか。


「じゃが、その少年は普通の苛められっ子では無かった。苛めてきた者達に異常なまでの憎悪を抱き、復讐する事だけを目標に生きておったのじゃ」


「…………」


「そして少年は力を得る絶好の機会を与えられる。魔神のお気に入りとなった少年は、神命の宝玉(コトノハ・オーブ)に触れる事すら許されるようになった」


「あかんやん」


「その通りじゃな。魔神は絶対に触れさせてはならぬ者に触れさせてしまった。その結果として魔神は消え、〝知識の創成〟(アカデミア)が誕生した」


「あ〜あ」


「じゃが魔神も黙って消されたわけでは無かった。己の最後の力を振り絞り、神命の宝玉(コトノハ・オーブ)に叫んだのじゃ。この者に宝玉を使わせてはならぬ、と」


「…………」


「それを阻止しようとする〝知識の創成〟(アカデミア)とのぶつかり合いによって、神命の宝玉(コトノハ・オーブ)は四つに分かれた。それが後に美徳、大罪、魔神、覇王の宝玉と呼ばれる事になる」


「美徳と大罪はさらに変化してなかった?」


「うむ。経緯はわからぬが、美徳は七つの武器防具に、大罪は七冠の魔狼(ディアボロス)に変化したの」


「なら覇王と魔神の宝玉は?」


「覇王はわかるじゃろ。美徳と同様に武器防具として分割しておったよ」


 ああ、そういえば新大陸や暗黒大陸に、覇王の何チャラっていう防具があったっけ。


「そうだ。暗黒大陸でいくつか覇王装備を手に入れて、魔法の袋(アイテムバッグ)に突っ込んだまんまだったわ」


「何? ちょっと見せてみよ」


「あ、あとでね。いろいろ入れすぎて大変なことになってるから」


「む、そうか。必ずじゃぞ」


 ヤベヤベ。ホントにどこに何があるかわかんないからね。


「じゃ、じゃあ魔神の宝玉は?」


「魔神の宝玉よな……それが一番厄介なのじゃ」


「厄介って。細かくバラバラになってるとか?」


「その方がまだマシじゃ。何せ、形すら無いのじゃからの」


「形すら……ない?」


「うむ。魔神は最後の瞬間、己の宝玉が形に残らない事を願った。それを聞き入れた神命の宝玉(コトノハ・オーブ)は、魔神の宝玉をスキルとして残した(・・・・・・・・・)のじゃ」


 スキルとしてって……まさか!?


「スキルの≪万有法則≫(コトノハ)自体が魔神の宝玉なのじゃよ」


 うわあ……。


「そ、それって…………どうしようもなくね?」


「何がじゃ?」


「か、形がないモノを集めることはできないでしょ!?」


「何を言っておる。形が無いのじゃから、どのようにも出来ようが。美徳、大罪、覇王の宝玉を集めてから≪万有法則≫(コトノハ)神命の宝玉(コトノハ・オーブ)の再生を願えばいい話じゃろ」


「そ、それで何とかなるの?」


「何とかするのじゃ。ほぼ全てのスキルを再現出来るのじゃから、何かしら手は有ろう」


 い、行き当たりばったりっていうんじゃね、それ。


「ていうか、覇王装備はまだ全部集まってないのよね?」


「うむ、そうじゃな」


「それに完全版≪万有法則≫(コトノハ)もまだなのよね?」


「うむ」


「…………なら完成するのはまだまだ先の話なんじゃない?」


「そうでもないぞ。妾も覇王装備はそれなりに集めておるし、サーチも持っておるのじゃろ?」


 え、ええ、まあ。


「それに完全版≪万有法則≫(コトノハ)の行方も判明したしの」

説明回、続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ