EP14 ていうか、さよなら総統。
ちゅどどどどどおおおおおおん!
「「「うぎゃあああああああっ!」」」
ライラちゃんの攻撃で次々に飛んでいく人影。エイミアこん棒恐るべし。
「……何て感心してる場合じゃなかった。早く殺っちゃわないと……」
これだけの騒ぎが起きているのだ、総統は絶対に逃げる。そうなったらマジで大変なことになってしまう。
「急がないと……ライラちゃん、あとは任せたわよ!」
再び走り出した。
総統の部屋に向かう途中にも、何人もの勇敢な兵士達が立ちはだかる。
「この先は通さ」ダダダダダダダダ!
「大人しく縛につけ」ダダダダダダダダ!
「命懸けで貴様を」ダダダダダダダダ!
いろんな人達が出てきたけど、全員有無を言わさずにガンブレードのマシンガンモードで蜂の巣にする。
「お、俺達は、せ、台詞すら言わせて、も、もらえないのかよ……ぐふっ」
ごめんなさい。恨むなら総統を恨んで。
「兵士の気概はスゴいけど、それに腕が伴っているとは言えない。となると、足止めにされているか……」
ライラちゃんが調べてくれた総統宅の構造だと、緊急時の避難に使えるのは屋上の高速ヘリコプターと地下の秘密通路かな。一階でドンパチやってる以上、普通に陸路で脱出はしないだろうし。
「よし。ライラちゃん、聞こえる?」
『はい、聞こえております』
「ライラちゃんって遠距離に攻撃できる?」
『大丈夫で御座います』
「ならさ、屋上にあるヘリコプターを破壊しといて」
『畏まりました』
背後で何かを振り回す音と「いやああああっ!」というエイミアの悲鳴が聞こえたけど、聞こえなかった振りをする。
『……今エイミア様を屋上に放り投げました』
ちゅどおおおおおおおおおん!
「うん。今着弾したのがわかったわ」
哀れなエイミアに幸あらんことを。
「ていうか、エイミア投げちゃったら武器がないんじゃないの?」
『ご心配無く。人間は幾らでも有りますので』
『う、うわ! 何しやがる! 離せぇ!』
『雷々流人器術一の奥義、人間武器化・大剣』
『や、止めてくれ! 止めてくれえええ!』
ああ、誰でも武器化はできるわけか。
『ぶぐぅふぉ!?』
『あらあら、もう使えなくなってしまいました。ぽい』
ドサッ
『さて、次に私の武器になるに相応しい実力者はいらっしゃいますかしら?』
『『『ひ、ひいいいっ!』』』
……戦う兵士にとっては、ライラちゃんの所業は悪夢そのモノだろうな……。
「ていうか、エイミアにも連絡しないと……エイミア、エイミア!?」
『…………びえ?』
泣いてたか。
「今屋上には敵はいる?」
『びえっ』
いないのね。
「だったら来るヤツ全員ぶっ飛ばして。総統が来たら確実に息の根を止めて」
『びえっ!』
よし、これで屋上からの避難ルートは塞いだ。
「ここまでの事態になってるんだから、自分の部屋でのうのうと寛いでいる、なんてことはあり得ない」
だとしたら残る避難ルートは地下通路……か。
「……閣下、大丈夫です。まだ気付かれていません」
「そうか、ご苦労。侵入者の動向は?」
「確認されている侵入者は二名。そのうち一名はリフター中将の次席副官である事が確認されています」
「もう一人については?」
「不明です。おそらくですが、キュアガーディアンズではないかと」
「リフターの小娘と小汚ない傭兵どもが手を組んでおったか……忌々しい、実に忌々しい」
「まずは脱出を。その後にリフター中将を処断すればいいのですから」
「そうだな。小汚ない傭兵どもも徹底的に追求してやる」
「あらら、小汚ない傭兵だなんて、ずいぶんな言い様じゃない」
「!? 誰だ!」
「誰って、小汚ない傭兵に決まってるじゃない」
ドスドス!
「うが!」「がはあっ!」
キッチンから拝借した包丁が護衛の喉に突き刺さる。
「はろはろ〜♪ 会うのは二度目だけど覚えてる?」
「な、何だと?」
『以前に公園を散策中に言葉を交わしております』
「そ、そうか」
記憶係のアンドロイドに教えられているけど、あまりピンとこないみたい。ま、別にいいけど。
「私はサーチ。パーティ始まりの団のリーダーよ」
『警告、警告。相手は〝闇撫〟と称されるアサシンの可能性が大。繰り返します、警告、警告』
「な……ま、まさか!?」
「そのまさか。一応私が〝闇撫〟よ」
まん丸い顔がみるみる蒼白に変わっていく。
「ワ、ワシを殺すのか!? そうなんだな!」
「……ていうかさ、アサシンである私がここにいる理由、あんたの暗殺以外にある?」
「ひ、ひぃぃぃ! こ、殺せ! あの女を殺せええ!」
腰が抜けたらしい総統の指示で、護衛が銃を……。
ヒュヒュッ ドスドスドス!
「「「ぐああっ!」」」
手にする前に、首筋に包丁が突き立った。
ドサドサァッ
「……さて、あとはアンドロイドとあんただけしか残ってないけど……どうする?」
「…………っ! ア、アンドロイドならお前も戦えるだろうが! 行け、行けえ!」
『私は記憶専用のアンドロイドです。申し訳ございませんが、ご命令を履行できる程の戦闘力は持ち合わせておりません』
「な、ならば〝闇撫〟諸とも自爆しろ! 命令だ、早くやれぇ!」
自爆しろって……。
「そこのアンドロイドさん。あんた達の祖であるサーシャ・マーシャはコイツらが捕らえているのよ?」
『!?』
ま、厳密に言えばリファリスが借金の取り立てのためにマーシャンを捕まえてるんだけど。
『どういう事ですか、閣下?』
「し、知らん! ワシではない! あの女が、リフター中将が勝手にやったのだ!」
「あ、サーシャ・マーシャは今はリフター中将に保護されているから。五体満足だそうよ」
精神的には追い詰められてるだろうけど。
「ま、でも公式には『我々西マージニアがサーシャ・マーシャを捕らえている!』ってなってたわね」
「ち、違う! 関係ない! ワシは関係ない! 部下が勝手にやったことだ!」
「でもさ、国の重要な事項だから、総統の裁断が必要なんじゃない?」
アンドロイドを見る限り、どうやらその通りなようだ。
『閣下、私を抜きで話を進めている事があるとは気付いていましたが……まさか陛下に手を出そうとは……!』
「ち、違う! あいつの言っている事は出鱈目だ! ワシが正しいんだ! ワシの命令を聞いていればいいのだ!」
『……アンドロイドの基本規律第四条一項、陛下を第一に考え、全てにおいて優先すべし。これを機に閣下、私は退職させていただきます』
「そんな!?」
『では〝闇撫〟、遠慮無くどうぞ』
「はーい」
ズバンッ
「ぎゃああああああああああ…………がくっ」




