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EP11 ていうか、久々のあの人。

「こうなったらリファリスの屋敷に行くしかないのでは?」


 街の中を歩きながら、エイミアがつぶやく。


「リファリスの家に? 本人はいないわよ?」


「かもしれませんが、前の世界と同様にリファリス親衛隊の皆さんはいらっしゃいますよね?」


 リファリス親衛隊って……あーあー、リファリス命のメイド達ね。確かにリファリスと一緒にこっちの世界にいそうだわ。


「確かに秘密の連絡手段を持ってる可能性があるわね」


「ですよね! 名案だと思いませんか!」


「念話水晶の件がなければ、素直に誉めてあげるんだけど」


「ふぇぇぇ……」


 いつもより大きいお尻を押さえて怯えるエイミア。少し叩きすぎたかしら。


「ま、思いついたらすぐに実行すべき。リファリスの家へ行ってみましょう!」


「はい!」



 リファリスの家自体は事前に住所を調べていたので、すぐに見つかった。

 が。


「エイミア、ストップ」

「え? ぅわっぷ」


 リファリスの家の門が見えたとたん、エイミアを近くの路地裏に引っ張り込む。


「ど、どうしたんですか!?」


「……見張られてる」


「え!?」


 この二件先の家から、常にリファリスの家の門に向けられてる視線を感じた。


「リ、リファリスくらいの重要人物でしたら、監視が付いていてもおかしくないのでは?」


「ま、それはそうなんだけどね。リファリスの対抗勢力だとしたらシャレになんないでしょ? 念には念を入れた方がいいから」


「…………わかりました。サーチの事ですから、普通に入ろうって訳じゃ無さそうですね」


「無論、忍び込むに決まってるじゃない」



 服を着替えて軽く変装し、門の前を歩いていく。


「……やっぱ視線をガンガン感じるわ。あまりうまい監視役じゃないわね」


 プロなら相手に視線を感じさせるようなことはない。


「それじゃ打ち合わせ通りに?」


「ええ。そのまま通りすぎるわ」


 私はエイミアとそのままリファリスの家の門を素通りする。


「…………あ、視線が外れた。私達は単なる通行人と認識されたわね」


「それじゃあ死角に入ったところで?」


「ええ、壁を飛び越える」


 角を曲がって完全に視線を感じなくなったところで、私達は一気に壁を飛び越えた。


 すたんっ


 私が華麗に降り立ち。


 ずるっ べちゃん!


 エイミアが壁に足を引っ掛け、顔から着地する。


「ちょっとエイミア! もう少し静かにして!」


「…………」


「ちょっと!? エイミア、エイミア!? ……信じられない、目を回してる」


 揺さぶって起こそうとするけど、白目を剥いたまま反応がない。仕方ないので。


 きゅっ

「はああああああん! な、何をすふがふが」

「バカッ! 声が大きい!」


 急に口を塞がれてジタバタするエイミアだけど、しばらくすると落ち着いたのか、大人しくなった。


「今は忍び込んでる途中なの! お願いだから静かにして!」


 コクコクと頷くのを確認してから、エイミアを解放する。


「ぷはあ……ご、ごめんなさい」


「いいわよ」


 慣れてるし。


「それより、手筈通りに」


「あ、そうでしたね。≪電糸網≫(スタンネット)


 エイミアが発生させた電気の微弱な網が、リファリスの家の内部に広がっていく。


「……一階に七人、二階に四人、三階に二人。そのうち一階の三人と二階の一人は武器を携帯しています」


「性別は?」


「一階の一人を除いて全員女性です。その一人は玄関に近い小屋に居ますので、おそらく衛兵かと」


 ならそのまま侵入しても問題なさそうね。


「一番人が少ないのは?」


「三階の一番大きな部屋にいる一人です」


 一番大きな部屋は間違いなくリファリスの部屋。そこにいるのなら、掃除をしているメイドに違いない。


「ならその部屋に侵入するわよ、探知機(エイミア)


「……今、変な言い方しましたよね?」



 壁を素早く登って三階の窓を破る。室内に侵入すると、内側から鍵を掛ける。


「……よし。とりあえず気づかれてないわね」


 ロープを取り出して垂らし、エイミアに合図する。不器用ながらもエイミアは素早く登り、誰にも気づかれずに侵入成功。


「よしよしよし。エイミアにしては上出来よ」


「誉めてませんよね!?」


 エイミアの反応は無視して廊下へ。


「エイミア、どっち?」


「右です。角から三つ目の部屋」


 足音もなく進む私と、パタパタと歩くエイミア。もう何も言うまい。


 コンコン


 部屋の前に立つと、エイミアは普通にノックした……って、えええ!?


『……はい?』


「リファリスの友達のエイミぶごふぇ!」


 こんの…………! 何のために忍び込んだと思って……!


『あ、あの〜?』


 こ、こうなったら仕方ない! 私はエイミアを引き摺ってドアを蹴破った。


「おらおら、命が惜しければ言うことを聞きやがれ!」


『サ、サーチ様!?』


 ドアの倒れた先にいたのは、マーシャンに似たタイプのアンドロイドだった。ていうか、私の名前を知ってる?


「………………あんたは……誰?」


『覚えていらっしゃいませんか……て、前の世界とは随分姿が変わってしまいました』


「……えっと?」


 アンドロイドは私に向かって深々と頭を下げる。


『暗黒大陸では命を助けていただき、誠に有り難う御座いました』


 ………………?


『わかりませんか? ライラで御座います』


 ラ、ライラ? ライライライラ?


『覚えていらっしゃいませんか? アーラン監獄で一度は死んだ私を、お知り合いの死霊魔術士(ネクロマンサー)を介して復活させて頂きましたが』


 アーラン監獄………………あああっ!?


「あのときのゾンビちゃん!?」


『はい。流石にゾンビちゃんは御勘弁を』


「ああ、ごめんごめん……そっかー、ライラちゃんもこの世界に……って、記憶あるの?」


『はい。リファリス様と同じ経緯で御座いますので、一緒にいた私やエリザ姉様は記憶が御座います』


「……なら他のリファリス親衛隊は……」


『……残念ながら……』


「そっか。でもライラちゃんになら協力を仰げるってことね?」


『はい。リファリス様よりサーチ様には全面的に協力するよう申し付けられております。何なりと仰って下さい』


 何なりと? なら。


「手頃な価格で泊まれる温泉宿を探して」


『畏まりました』


 そう言って空中端末を開く。


『…………はい、予約が取れました』


 ………………は?


『西マージニア郊外の高級宿、一泊の予約取れました』


「ね、値段は!?」


『半額で』


 ウッソだー!?


「な、ならライラちゃん、私に合うブラを都合できる?」


 そりゃムリだ。エイミアはすでに特注品だから。


『畏まりました………………はい、エイミア様のサイズでしたら黒、白、ベージュがご用意できます』


「な、何で私のバストサイズを!?」


『見ればわかりますので』


 ス、スゲえ。万能だ。

私ですら忘れていたライラ登場。

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