EP7 ていうか、やっと試運転。
リジーもフテ腐れて寝てしまった。ま、変な自信をつけちゃうよりはマシなんだけど。
ていうか、私の新武器の試運転、いつになったらできるのよ。
「エイミアもリジーもダメだねぇ」
ケタケタ笑うナタ。完全に面白がってるわね。
「……お願い、ナタ。もうあんたしか残ってないのよ」
「いいよ〜。残念ながらボクはあの二人みたいに、新たなスキルを開発してないよ?」
「もう新スキルはお腹いっぱいです、ハイ」
「だよね〜! しかも両方ともあのオチだと、ただツラいだけだよね〜!」
全くだよ。エイミアみたいにお蔵入りしちゃうのはもっといただけないけど。
「……ま、時間をかければ使えるようになるかもしんないから、ボチボチと様子を見るかな。それよりナタ、あんた火器には詳しいわよね?」
「とーぜん♪ コレクションする程度には♪」
「なら……これもわかる?」
「ガンブレードだけど、ちょっと変わったヤツだね」
「変わってる?」
「うん。普通は刃の部分は内蔵式で、飛び出しナイフみたいに引っ込められるんだ。銃身と一体型ってのは初めて見るね」
正直何でこういうデザインにしたか、理解に苦しむ。
「銃自体はサイ・ガンを採用してるのか。これ自体はいい構造なんだけどなあ……」
さいですか。ナタのつぶやきは段々とマニアックな方向へ向かってる。
「それにしてもデカいなあ。サイ・ガンだけならここまで大きくなくても…………ん?」
ナタは虫メガネを取り出すと、妙に大きい本体を念入りに調べていく。
「……これは……ある程度サイキックが溜まると開く構造なんだ……。サーチ、サイキックをありったけガンブレードに集中させて」
「え? あ、はい」
集中させるって……魔力……もといサイキックを溜められるっての?
キュィィィン……
「ん? どんどん力が……?」
「サーチ、そのままそのまま!」
「あ、ハイハイ」
さらに魔力を込めると、ガンブレードに変化が。
ガチッ ウィーン
「やっぱり。もう一つ機能があったんだ」
手甲剣の下側が開き、砲門が三つ飛び出してきた。これがあったから妙に大きかったのか。
「……何これ?」
「そのまんま。たぶん極太のビームでも放てるんだと思うよ」
超必殺技、スーパーコンボ、最後の切り札的な?
「ま、せっかくだし、一発ブッ放してみたら?」
……そうね。魔力も溜まっちゃってるし、このままにもしとけないし。
「それじゃあ……あの山に向かって」
遥か遠くに見える山を標的に、力を開放させる。
「いくわよ〜……発射!!」
その瞬間。
ズドオオオオオオオンンッ!!
「きゃっ!?」「うわっ!?」
轟音と共に吹っ飛ばされた私は、ナタをクッションにする形で転がる。
「イ、イタタタタ……」
「サ、サーチ、重い重い!」
「あ、ごめんなさい……っよっと」
スタンッ
身体のバネだけで飛び起きてから、ナタに手を貸してやる。
「な、何だったの、今の。撃ったっていうより、爆発したって感じだったわよ?」
「……そうだね。サイキックを凝縮させて弾けさせてたよ」
再び私のガンブレードを調べ始める。
「でも不思議だよね。あれだけの爆発を起こせるのに、あんなにも溜め時間が必要となると……」
今度は手甲剣と銃身を綿密に調べている。
「……そういえば、ガンブレードの銃身の割には細いなぁ。もうちょっと太くすれば、もっと威力が上がるはずなのに……」
再び研究者モードに入るナタ。こういう状態だと何を言ってもムダだろうから、大人しく終わるのを待つことにした。いつまでかかるのやら。
……一時間。
「いやいや、非常に興味深い造りだ。ガンブレードにこんな発想があっただなんて」
ふぁぁ……終わったかな?
「わかったの?」
「へ? 何が?」
「だから、このガンブレードのこと」
「ああ、そのことね。ならだいぶ前にわかってたよ」
はああっ!?
「な、なら一時間も何を悩んでたのよ!?」
「ああ、それは詳しい構造を頭の中で再現してたんだよ。右手で似たようなガンブレードを再現できないか、と思って」
そう言うとナタはサイボーグ化した腕を変形させ、私のガンブレードと似たモノを作り出す。
「うん、これでほぼ同じはず。ありがとうサーチ。面白いガンブレードだったよ」
いえいえ、どういたしまして。そのまま去っていくナタを見送り……って、ちょい待ち!
「ちょっと! あんた一人だけわかったままって私は困るんだけど!」
「あはは、冗談冗談……この辺りかな」
ナタは手頃な石を持つと、上空へ投げる。
「じゃあ、ホントの使い方を再現するね!」
ヒュ〜……ザグンッ!
落ちてくる石に手甲剣を突き刺す。
そして。
ズドオオオンッ!!
溜まった魔力が爆発し、手甲剣に刺さっていた石を粉々にする。
「……っていうわけ。わかった?」
「わかるか!」
「ええ〜……理解力に乏しいなあ」
やかましい。
「じゃあ解説するよ。このガンブレードは普段は普通のガンブレードなんだ。だけどサイキックを満タンにすると、機能が変わるんだ」
満タンにすると機能が?
「満タン状態の場合、ガンブレードの銃身から発射されるのは弾丸じゃなく……」
ナタが銃身を上に向ける。
ヴイイッ!
すると銃身から糸状の細い魔力……もといサイキックが溢れ出した。
「な、何それ!?」
「相手を拘束するサイキックの糸だよ。手甲剣を突き刺して銃を放つと、敵の体内にこの糸が広がって動きを封じるんだ」
…………ああ、そういうことか。私もナタと同じように魔力を満タンに溜め、近くの岩に手甲剣を突き刺す。銃を放つイメージをすると、銃身から何かが生えていく感覚が伝わる。
「……発射!」
ズドオオンッ!!
岩は粉々になって吹き飛ぶ。
「そういうことだよ、サーチ。この手甲剣の形状は、サイキックの爆発を敵に確実に当てるためのモノなんだよ」
手甲剣を突き刺して、銃身を密着させてから糸を体内に伸ばして相手を拘束。そのタイミングで魔力爆発を起こし、確実に仕止める……か。
「はああ……まさにファイターのためのガンブレードよね。手甲剣の刀身を犠牲にしてまで銃身をくっつけたのは、相手を確実に拘束するためか」
「このサイキックの爆発、別に相手を拘束しなくてもダメージは与えられるけどね。相手をより確実に仕止めるために、こういうオーダーメイドにしたんだろうね」
私なら使いこなせると思うけど……まさかナバナさん、そこまで理解して私にこのガンブレードを?
「……っていうかこのガンブレード、マニアックよね」
「そうだね。それは否定できないね」
めちゃくちゃクセのある武器だった。




