EP4 ていうか、またまた新武器。
返品完了のお知らせを聞き流しつつ、何かいい武器はないか、と端末を操作していると。
「サーチ姉、サーチ姉!」
「ん〜?」
「サーチ姉、サーチ姉!」
「何よ〜」
「サーチ姉、サーチ姉ぶぐぉ!?」
「うっさいわね! さっさと用件を言いなさいよ!」
「うぐぐ……や、やっぱりサーチ姉機嫌悪い……」
お腹を押さえながら私を涙目でにらむリジー。知るかってーの。
「……サーチ、もしもお手透きなら、訓練にお付き合い願いたいのですが……」
リジーを哀れみの目で見ながら、私に近づいてくるエイミア。ていうか、訓練?
「珍しいわね。あんたから訓練を申し出るなんて」
前は私が強制的にやらせていたのに。
「改めて自分の大振りを改善したいと思って」
ムリね。
私を始めとして、リル、リジー、エリザ、ナイア、そして数々の有志達がエイミアの大振りを改善しようと立ち向かい、見事に敗退していったのだから。
「ていうかさ、こん棒振り回してるようなパワーファイターが、小回りを求めること自体が変なんだけど」
「え〜……それを言われちゃうと……」
「ていうか、他の武器は試そうと思わないの? だいたいさ、何で釘こん棒なの?」
「……釘こん棒を勧めたのはサーチですよ。武器買うお金が無いからって、近くの木の枝を斬って渡してきたんですから」
そ、そだっけ?
「お、おほん! ま、まあ、この際だから違う武器を試してみましょうか!」
誤魔化しと息抜きを交えて、エイミアを外へと連れ出した。
リジー? まだお腹押さえて呻いてたけど知らぬ。
「さて、それじゃオーソドックスな剣から始めてみましょうか」
以前に盗賊から奪って仕舞いっぱなしになっていた安物の剣を渡す。
「は、はい」
「元貴族なんだから、剣の基礎くらいは習ってるわよね? ほら、かかってらっしゃい」
「ははははい! では行きます!」
エイミアはカタカタと身体を揺らして構えた。ていうか、カタカタ震えながらも揺れる胸って……。
「てやあっ!」
がぎぃん!
お?
「えい! やあ! たああっ!」
がぃん! ぎんぎんぎん!
へえ……なかなかの太刀筋じゃん。
「何よ、こんだけ剣を使いこなせるなら、最初から剣使えばいいじゃない」
「そうなんですけど……あ!?」
ずしゅん! くるくるくる……どすっ!
「うわ危な!?」
「すすすすいません! 剣や槍を使ってると、何故か一分以内に武器をすっ飛ばしちゃうんです」
怖いな!
「……もしかしてそれで釘こん棒?」
「打撃武器ならすっ飛ばさないんです」
謎なクセだなっ。
「……なら他の打撃武器は?」
「他のって言われても……メイスやハンマーとか?」
「重いヤツじゃなくても、軽量の打撃武器もあるわよ。トンファーとか、ヌンチャクとか……って、エイミアにはムリか」
「何で無理なんですか?」
「ん〜……結果が見え見えだから」
「見え見えって……やってみなければわかりませんよ?」
…………ま、いいか。万が一にも使いこなすかもしれないし。
「なら、ほら。私が遊び半分で買ったヌンチャクだけど」
「は、はい! では……あたたたたたたたたっ!」
ひゅひゅひゅひゅっ!
「お、お!? い、意外と上手いじゃん!」
「たまにサーチが振り回してるのを見てましたから!」
これは意外と適性が……。
ぱかぁん!
「あぎゃ!」
…………ないか。後頭部にヌンチャクの直撃を受けたエイミアは、半泣きで踞る。
「……やっぱ釘こん棒が一番みたいね……」
「は、はい……びええええっ」
ま、いきなりヌンチャクはレベルが高すぎたのかもしんない。
「はあっ! たあっ!」
がぎん! どぎん!
「太刀筋はいいけど、攻撃してからの間が開きすぎよ!」
「は、はい!」
く、釘こん棒の一撃一撃は……やっぱ重い! 手甲剣だけじゃ凌ぎ切れないので、両小手の空想刃を伸ばして対応する。
が。
がぎっ! びきっ
「ん? 何か妙な音が……?」
ぶおんっ
うわ、ヤバッ! エイミアの強烈な一撃が迫っていたので、つい異常を感じた小手で防御してしまい……。
ずがぁん! ばきぃ! ばらばら……
「あ!? あああああああああ!」
こ、小手が!? ブレードが!
「すすすすいません! こ、粉々に……!」
「…………はぁ、仕方ないわ。これで壊れるってことは、もうガタがきてたってことでしょうよ」
ため息を吐きつつも、さっき見かけだった武器の専門店で「ブレード」と検索する。
「……ああ、あるある。新しいの買えばいい………………いいっ!?」
一十百千万十万百万一千万…………億ぅ!?
「それはそうだろう。ブレードは元々個人個人で微調整が必要な武器だからな」
ナバナさんに相談してみたところ、あれで適正価格らしい。軍で余ってるのがあったら譲ってもらおうと思ってたんだけど……。
「格好悪い、高い、使いにくいと不人気な理由が勢揃いの武器だからな」
……カッコ悪くはないと思うけど……。
「小手からの刃と手甲剣、どちらをよく使うのだ?」
「そうですね〜……やっぱ手甲剣かな」
「そうか……ならば違う武器で良ければ譲ってやるぞ」
そう言ってナバナさんが取り出したのは、ごっつい小手に手甲剣が付いたのだった。
「……これは?」
「ブレードと同じく不人気武器でな、ガンブレードと言う」
銃剣?
「銃なんてないじゃないですか」
「手甲剣のサイドに銃口が付いているだろう?」
え……あ、ホントだ。ていうか、両サイドにある銃口が刃を塞いでるんですけど?
「これだと先端ぐらいでしか斬れませんよ、これ」
「これを以前使っていたファイターは『刃がこれだけあれば、人を殺すのには十分だ』って言ってたな」
……ま、確かに。
「でも何でこんなにごっついわけ? 重くて使いにくそうなんですけど?」
「持ってみろ」
言われて持ってみると……あ、意外と軽い。
「ブレードのレベルが高い者には軽くなるそうだ」
どういう仕掛け!?
「何でもいい、装着してみろ」
……仕方ない。ごっつい外見は趣味じゃないんだけど。
ガチャ
ん? 意外にもフィット感がある。
「この銃は……」
「サイ・ガンと要領は同じだ」
サイ・ガンって……ああ、私が使ってるリボルバーと同じか。魔力を込めて発射してみる。
ダン!
お、いい感じ。
ダダダダダダダダダダダダ!
マシンガン仕様にもできる。
ダン! ダダダダダン!
両方とも使える。
「うん、意外と使いやすい」
あとは手甲剣の斬れ味!
ズバンッ!
……うん。斬れる幅は狭いけど、斬れ味は問題なし。
「いいですね、これ」
「そうか、良かった良かった。では代金を」
「くれるんじゃないの!?」
「違う、ガンブレードではなく」
ナバナさんは私の後ろを指差し。
「お前が試し撃ちやら試し斬りでボロボロにした私のテントの代金だ」
大変申し訳ありませんでした。
今度は大丈夫かな?




