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EP1 ていうか、圧倒的勝利?

 西マージニアが宣戦布告することによって始まった火星統一戦争の初戦は、結局一度も東マージニア軍自体がぶつかることはなかった。



「はああああっ! 電撃≪鬼殺≫(バーサーク)!!」


 バリバリバリ! ズガァァン!


「「「ぐわあっ!」」」


「どうしたんですか!? 私一人に対して怖じ気付いたんですか!」


「こ、こいつ化け物だああ!」


「逃がしませんよ! ≪電糸網≫(スタンネット)


 ビリリリッ バリィ!


「あがががっ!?」



 とあるキュアガーディアンズパーティによって。



「甘い。遅い。下手っぴ」

 ブン! ブン! ブン!

「はあ、はあ、はあ、ク、クソがあ!」


「気が済んだ? なら呪われろ……と思われ」

 ザンッ

「がはああっ!?」


「ついでに後ろも呪われろ……と思われ。≪呪われ斬≫」

 ズババババッ!

「「「うがああっ!?」」」



 獅子奮迅すぎる活躍によって。



「次はマシンガン撃っちゃうよ〜」

 ダダダダダダダダダダダダ!!

「ぎゃ!」「ぐお!」「がふっ!」


「ちょっとー、そんなに呆気なく死なないでくれるー? ボク、全然張り合いがないんだけどさ」


「む、無茶いうな……ぐふっ」


「あ、君は元気だね。だったら……」

 がぶっ

「えっ」

 ごくごくごくごくごくごくごくごく

「あ…………ぁ…………」


「……ふーぅ。あんまり美味くなかったけど……ごちそうさまでした♪」


「ひ、ひぃぃ! きゅ、吸血鬼だあああ!」


「違うわよ。ブラッダーよ。ま、君も」

 ズドオオン!

「ぎゃああああ!」

「死になさいな」



 けちょんけちょんに叩きのめされた上に。



「何故だ! 何故我が軍が圧されている!?」


「こちら側が数の上では圧倒的なのだぞ!」


「し、しかし! 敵側のキュアガーディアンズの強さが桁違いで……!」


「そんな話は聞きたくもないわぁ! さっさと捻り潰せぇ!」


「クソ……折角リフターの小娘から軍の主導権を奪えたのに……!」


「……だから負けたんじゃね?」


「な……!? だ、誰だ!」


 ……ていうか、さっきから後ろにいたんだけど。私が堂々とここまで入ってこれてる時点で、警備態勢に不備がありすぎ。


「はいはーい、そのキュアガーディアンズのリーダーが、役立たず司令官の首をいただきに参上しました〜♪」


「な、何を! 敵だ、出合え、出合えー!」


 うっわ、生で聞くと感動するわ、出合え系。


「ていうか、あんまり出てこないわよ。結構殺っちゃったし」


 出合え系の掛け声で出てきたのは結局十人程度だった。


「な、何故これだけの人数!?」


「だから、聞いてなかったの? ほとんど殺っちゃったわよ」


「な……!?」


「ええい、数ではこちらが有利だ! 斬れ! 斬り捨てえええいごぶっ!?」


「はい、テンプレなセリフだけは言わせてあげたから♪」


 背中から刺さった手甲剣は、サクッと心臓まで達し。


「…………ぁぁ」


 貴族っぽい男は白目を剥いて倒れる。


「な、き、貴様ぁぁぎゃぶ!」


 隣にいた男にはキレイにハイキックを決め。


「う、うわ、うわあああああああこふっ」


 ただうるさいだけの男の肺を空想刃(エアブレード)が貫通する。

 五秒ほどで敵軍の重要人物は全滅した。


「さーて。守るべき人達はみんな死んじゃったけど……まだ殺る?」



 上層部も一人残らず斬殺され、残った兵士達はほうほうの体で逃げていった。



「……ていうかさ」


 東マージニア軍本陣。ていうか、私だけなんだけど。


「確かに先鋒でいってくれって依頼だったわよね。けど」


 闇夜に浮かぶ東マージニア軍のかがり火。それは私達だけ。


「先鋒、私達……以上! って、それはないんじゃない?」


 空中端末越しのナバナさんは、まっったく悪びれることなく。


『とはいえ、余裕だったろう? 〝腐敗〟がいない西マージニア軍など、あの程度のモノだ』


「かもしれないけど! 五千対四はヒドすぎるわよ! ご飯も食べずに十五時間走り回ったわよ!」


「サーチ、お代わりください」

「同じく。そろそろ焼けた、と思われ」

「ボクも。全然足りないよ」


『……力が有り余っているように見えるが?』


「私の問題よ、わ・た・し! この三人みたいに体力お化けじゃありませんから!」


 元々『素早さ』極振りのステータスの私は、どうしても『力』や『体力』に不安がある。こういう長丁場の場合、その影響は顕著に表れるのだ。


「おまけによく食うのよ、こいつら。さらに……」

 がぶっ ごくごく

「勝手に血ぃ吸うなああああ! ……体力諸とも血を奪ってくヤツもいるから」


 たっぷり血を吸ってご満悦のナタは、再び豚肉の串焼きを口にしていた。


『……目の下にクマができているぞ?』


「そりゃそうよ! どっかの誰かさんが散々コキ使ってくれるからっ!」


 おまけにこいつらの世話、私がするんだからね!


「わかったわかった。明日は私が前線に出る。お前達は後方へと下がるがいい」


 よっしゃ、休暇ゲット!


『だが数日後にはシナリオ通り(・・・・・・)再び戦いがある。その時には更に頑張ってもらうからな』


「……明日で決着つけちゃってよ」


「う〜む……明日からの戦闘は、お前達のような一騎当千のモノがいないからな。そう簡単には……」


 一応シナリオ通り(・・・・・・)に進めるとなると、早い決着が必要だからねえ……。


「ねえ、サーチ姉」


「ん?」


「一騎当千の人、いるよ」


「え!? マジで!?」


「いるよ。サーチ姉の鳩尾に連続でパンチを決めた強者が」


 え? 私の鳩尾にって………………あ。


『……ん?』


 いたわ、目の前に。



 ……次の日。


 ワアアアアア!!


 どかっ! ばがっ! ごしゃあ!

「うわああ! つ、つええ、あのチビぶべっ!?」

「誰がチビじゃゴラアアアアア!!」

「な、何だこのチビぐぼぁ!?」

「チビチビ言うんじゃねえよゴラアアアアア!」


 いやはや、簡単なことでした。敵軍に「チビって言ってやると、落ち込んで戦意喪失」って偽情報ブッ込んでやったら……いやあ、勝手に自滅していく。


「ほとんどナバナさんだけで殲滅してますね」

「私達が明日出る必要もないと思われ」

「え〜……撃ち足りないなぁ……」


 ナタ以外はこの結果に満足のようでした。よかったよかった。


「あ、敵軍が全滅しましたね」

「あれ、こっちに走ってくると思われ」

「……スゴくイヤな予感がするんだけど」


 ……奇遇ね、私もよ。ここは隠れましょう。



「ゴラアアアアア! 噂流したのはお前等だろが、グゥオルァアアアアアア!!」


 ……やべ。バレてる。

ナバナさん無双。

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