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第十一話 ていうか、やっとダンジョン本番。

「これが……獄炎谷(フレイムキャニオン)……」


 バタバタな騒動から半日後。

 マーシャンとオシャチさんをリルが説教し、朝から息が荒い私と顔が青タンだらけのエイミアが微妙に距離を空けてて、それをリルがつっこんだり……といった小騒動があったがそこは割合します。

 深く聞かないでよ? 聞いてきたら三途の川へゴーアウェイするよ?


「のうサーチ。さっきから気になっておったのじゃが、エイミアの青ぐぶっ」


 ……早速一人ゴーアウェイされました。


「姐さんに何を……!」

「何か?」

「あ、いや、だから……」

「な・に・か?」

「…………いえ……あっしの独り言っす……」

「それじゃあ行くわよ」


 元は「谷のあちらこちらから炎が噴き上げ侵入することも困難な灼熱地獄」だったはずなんだけど……今や「あちこちの窪地が水没したただの谷」になっちゃってるのよね。


「……やっぱ水溜まりにしかモンスターいないな」


 この辺りには獄炎谷(フレイムキャニオン)が炎を噴き上げる要因となっている「炎熱石」と言われる鉱石がひっじょーにたくさん含まれている。ていうか、ほぼ炎熱石である。

 ……つまり水系のモンスターには、メチャクチャ住みづらい環境なわけで……一応水系のモンスターにも水陸両用なんてのはいるけど……その辺のモンスターは軒並み(・・・)炎熱石の熱にやられて息絶えていた。

 生き残った水系モンスターは、窪地の水溜まりで生き残っているようだ。

 必然的に水溜まりを避ければモンスターに襲われる心配はない。


「おかげで楽に炎系と水系の素材が集まるわ」


 少し前に起きた獄炎谷(フレイムキャニオン)の水没によって死んだ炎系のモンスターの死体もゴロゴロ転がってる。こりゃボロ儲けだわ。

 しばらく死んでいるモンスターの討伐証明部位やら素材になるとこを本で調べながら集めた。

 ……なんせ船一隻沈めちゃったわけだしね……出費がハンパなかったのよ……。



「……この洞窟が獄炎谷(フレイムキャニオン)本当のダンジョン(・・・・・・・・)だ」


 リルが指し示す先に巨大な洞窟が口を開けていた。よく誤解されるけど、獄炎谷(フレイムキャニオン)自体はダンジョンではない。その奥にたまたまダンジョンができただけだ。

 獄炎谷(フレイムキャニオン)“八つの絶望”ディスペア・オブ・エイトの一つに数えられている理由も、ダンジョンそのものの難しさよりも獄炎谷(フレイムキャニオン)の影響が強い。

 ……つまり炎が消えちゃってる現状、さほど難しいダンジョンではない。炎への対策で冒険者はみんな頭を痛めていたのだから。


「……やっぱり水没してるわね〜」


 少し階段を下っただけでもう水面。こりゃかなり水没してるわね。


「さあて。マーシャン、出番よ!」


「わ、わひゃっひゃ……」


 あ、さっきの一撃でアゴ外れたまんまだったか。


 ばしんっ!


「ひゃぐ!」

「戻った?」

「お、お主は……もうちょっと老人を労らんか!」

「……一晩中誰かさんとハッスルしてた人が言うセリフ?」

「……はっする? せりふ?」


 あ、しまった。リル、メモるな!


「なんでもない! マーシャン!」

「わかったわかった……≪水中呼吸≫」


 以前かけてもらった時と同じように淡い霧が私達を包む。


「じゃあ行く……どうしたのよ二人とも」


 ……エイミアとリルがなぜか及び腰になっていた。


「サーチ……ホントに大丈夫なんです『ドンッ』きゃい!」


 どぼーん!


 習うより慣れろってね。


「ぶはっ! い、いきなり何するんですか!」


「息できるでしょ?」


「え……? ぶくぶく……ホントです! 息ができます!」


「言われた通りら濡れたらマズいものは私の魔法の袋(アイテムバッグ)に入れたわね?」


「あ……」


 ……期待を裏切らない子ね。


「……何が濡れちゃったの?」


「し、下着……」


 ……帰りノーブラノーパンね。


「じゃあ次はリルよ!」


「お、おう!」


 ……返事は勇ましいけど……へっぴり腰……。


「大丈夫?」


「だ、大丈夫だ! サーチ押すなよ! 絶対押すなよ!」


「はいはい」


「すー、はー、すー、はー……よし、私は大丈夫私は大丈夫……」


 ……。


「よし! まずは足から……ニャッ!? ちょ、ちょっと待って」


 …………。


「……こういう場合は少ーしづつ身体を慣らしていけば……ニャッ!? 冷た!」


 …………ぶちっ


「後ろが詰まってんのよ! さっさとしなさーい!!」


「えっ!? にゃ〜〜〜!?」


 どっぼおん!


 ついイラっとした私は、リルをボディスラムで水に叩き込んだ。


「た、助けてニャッ! 溺れる溺れるニャニャニャニャッー!」


 おーおー、パニクってるパニクってる。


「リル落ち着いて下さい! 息できますから!」


「え? ……すーはーすーはーぶくぶくぶく……ホントだ息ができる……ニャッ! でも足つかニャいニャ! 足つかニャいニャー!」


「大丈夫です! 私に掴まっててくださいね」


 ……リルは今回戦力にならないわね。


「じゃあ私達も行きましょうか」


「うむ、行くとするかの」


「じゃあ、あっしも人魚に戻りやすので!」


 くるんっどろんっ


「お先に失礼しやす!」


 じゃぶんっ


 おお、水飛沫が少ない! さすが人魚!

 ていうか、高飛び込みじゃないんだからどうでもいいんだけどね。

 私もオシャチさんを追って飛び込む。

 そしてマーシャンも続いて飛び込んだ。



 ゴポゴポ……


(道はこっちで合ってる?)

(うんうんうん)


 ……水の中で冷や汗かくって器用なことするわね、リル……。


(エイミア、リルをお願いね……あと≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)は禁止よ!)


(わ、わかりました)


 口パクと身ぶり手ぶりでも会話できるものね。


「ここから少し先にモンスターがいやす! お気をつけて!」


 おいでなすったわね!


(私とオシャチさんで前衛! マーシャンは援護をお願い! エイミアは……)


 ガクブルなリルが目に入る。


(……リルを守りつつ待機で)

(わかりました!)


 ≪偽物≫(イミテーション)でリングブレードを作って待ち構える。

 オシャチさんはどこから取り出したのか三ツ又の矛を掲げている。


「……来やす!」


 オシャチさんの掛け声と同時に現れたのは……。


 ギャオオオ!


(に、人魚!?)


 私が先制してリングブレードで二匹の頸動脈を切断する。


「こいつらはあっしらとは違う! 人魚の巣で造り出される人魚モドキ(・・・)でさあ!」


 人魚モドキ!?


(確かに……オシャチの部下と違って意思が感じられんのう)


 マーシャンが加減した≪雷光弾≫(エレキバレット)で人魚モドキの足を止める。

 ていうか、なんで人魚の巣に出てくる人魚モドキがこんな場所に出るのよ!?

水中の戦闘って難しいです。

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