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閑話 ビキニアーマー紀行 1 大切なこと

ちょっと息抜き。

何年か先のさーちゃんのお話です。

このシリーズもたまーにアップします。

 その店は、大陸中央の強大な都市国家ハギフィールドにある。

 過去に存在した国家の遺跡を土台として建設された都市で、風光明媚な観光都市としても知られる。

 そんな都市のはずれに大陸最大のスラム街と言われるウェイロードスラムがある。

 C級冒険者ですらも入ることを止められる、と言われる凶悪な街の中央。

 そこに“剛壁”という二つ名のついた伝説級の腕前の男が槌を握る防具屋があった。


 アップリーズ防具店。

 自他共に認めるビキニアーマー専門店だった。



 カランカラン♪


 あー……♪

 ここが♪

 ビキニアーマー愛好家の聖地と言われる……♪


「「「「いらっしゃい」」」」


 かなり……いや、とてつもなく凶悪な人相の人達が店番をしていた。

 全員が世紀末にヒャッハーしてそうなモヒカンさんたちだ。

 ……うわ。 モヒカン頭の右側に≪ビキニは世界を救う≫てタトゥーがある。

 全員だ……すごいと言えばすごいけど……。


「おい、姉ちゃんよ」


「? 私?」


「そうだよ」


 うわ……なんかポケットに手を突っ込んで迫ってきた。

 ……殺るか。

 手に魔力を集中する。

 モヒカン頭が私の間合いに入り……。

 ポケットから何かを……。

 ……。

 ……。

 ……名刺?


「俺がアップリーズ防具店バイトリーダーのラートっす! そのビキニアーマーめちゃくちゃキマってるっす! よろしくっす!」


「…は…、はあ……」


「バイトのフペードっす!」

「バイトのザイヤっす!」

「バイトのズローバーっす!」


 な、何? この名前?

 世紀末でヒャッハーなスタイルにこれじゃあどう考えても……。


「ひでぶー」


「? ナンスか?」


「あべしー」


「?? 新しい呪文か何かっすか?」


 ……違った。



 ここの店長さんなら必ず作れるはず。

 というか、ここしかない。 どこの防具屋で聞いても「不可能だ」と言われ。

「できるとしたらアップリーズしかない」と言われ続けた。

 そして……そして……ついに。

 私はここに立っている。


「あのー……店長さんいらっしゃいます?」


「店長っすか? 少々お待ちくださいっす」


 バイトリーダーのラート君が呼びにいってくれた。

 何で語尾に「っす」をつけるのかな?

 まあ、どうでもいいけど。


「ヘッド、お呼びでーす!」



 ヘッドって……。


「おーーーう」


 ……あれ?バイトヒャッハーズが並んでる……。


「「「「おつかれーーーっす」」」」


 うわ!一斉に頭さげたよ! なんでこんなに綺麗に揃うのよ!

 あ、奥から誰か……。


「ふぅーい。 何か呼んだかい?」


 ……。

 ……。

 いたって普通のおっさんよね。

 この人がヘッドで店長で“剛壁”なの?



「君かい? 用事があるってのは?」


「えーと……あなたが……」


「アップリーズだ。 君はここが初めてなんだね」


「……わかるの?」


「うん。 初めての子はみんな同じ反応するからね」


 ……そりゃそうでしょ。

 バイトがあのメンツなら店長は世紀末覇者が出てくるイメージじゃない。

 ほんっとに普通の村人Aが出てこればねー…。


「ここ……ビキニアーマー専門店なんですよね?」


「専門店……てわけじゃないけど…」


 専門店じゃない!?

 ……確かに普通の鎧や盾も陳列されてるけ…ど…。

 なんか、微妙にショック……。


「オーダーメイドはよく受けるよ」


「……あ、あー……作ってはくれるんだ」


「うちは防具は基本的にオーダーメイドなんだ。 特に肌に密着するタイプのものは量産品では微調整ができないからね」


 あ、なるほど。 それでか。


 たまにマニアックな防具屋なんかがビキニアーマーを売っている。

 ただ採寸は個人差が大きい。 ほぼ、一品物になる。

 当然、あまり防御力が無い割に高額になる。まず売れない。

 それと、ビキニアーマーみたいに肌に密着するタイプの防具は、特に職人の腕によって完成度が左右される。

 ただでさえ需要の少ないビキニアーマー。 それを伝説級に腕のいい職人がオーダーメイドで作ってくれるのだ。

 世界中から注文がくれば……。


「他の防具も作りたいんだけどビキニアーマーばっかり注文がはいってね……」


 こうなる。

 結果、専門店になっちゃう訳ね。



「ああ、ごめん。 話がそれたね。 何をご希望だい?」


「ビキニアーマーです!」


「……だろうね。 すでに着てるわけだし」


 私の胸のあたりをジーッと眺める店長さん。 H。


「……しかし……かなり出来のいいビキニアーマーみたいだけど……何が不満なんだい?」


 やはりわかるんだ。

 このビキニアーマーはゴールドサン公国一の職人オレジーズによる一品物だ。

 どうにか拝み倒して作ってもらったんだ。 物が違う。

 ただ。

 どうしても。

 気になって仕方がないことがあったのだ。


「お願いします。 お金は払います。 だから、このビキニアーマーと同等の強度で……」


 胸がしっかり揺れる(・・・・・・・・・)ビキニアーマーを作ってほしい。


 それが私のオーダーだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルと話数に惹かれて読み始めました。 テンポ良く読めるので、良いと思います。 しかし、14才でAカップないの? ちょっと絶望的では無いだろうか!
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