表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
898/1883

EP24 ていうか、泣き虫司令官。

「あ、改めて失礼をした」


『ごめんなさいね。あたしもこういう性格だからさ』


 幾度か衝突はあったけれど、〝常勝〟と〝不敗〟の二人はようやくあいさつを交わすことができた。


「そう。ようやくあいさつ。あれだけの時間があって、よ・う・や・く……あいさつ」


『ごめんごめん。この娘さー、妙にからかい甲斐があるからさー』


 ピクッとナバナさんが反応する。が。


 ぽかっ!

「あひゃ!?」


「いちいち反応しない。で、その度に私の鳩尾をド突かない。わかった!?」


「わ、わかった……わかった…………うわああああああああん!!」


 へっ!?


『あーあ』

「泣かせてもうたな」


 な、泣くって……あの「ぽかっ!」で!? 叩いたってほど強く叩いてないわよ!?


「うわああああああああん! ええええええええええええんん!」


「よしよし、悪いお姉ちゃんですねー」

「人間として最低と思われ」

「やり過ぎだよねー」


「そ、そこまで言われるようなこと!?」


 戸惑う私の肩を、エリザがポンッと叩く。


「あの容姿やさかいな。泣かせた方が悪くなるんはしゃあないやろ」


「で、でも!」


「実際にあれがあるんで、アサシンも下手に手ェ出せへんって言うしな」


 そうね。暗殺したら教科書に実名を載せられて、末代まで祟られるレベルの話だもんね。


『あの娘の痛みへの耐性の無さは異常だからね』


 痛みへの耐性?


「ウチも経験あるんや。リファリス様からからかわれた事を慰めるつもりで肩をポンッって叩いただけで、手がつけられない程に大泣きされたん。小一時間吊し上げ状態になったしな」


『さっきも言ったけどさ、あの容姿だから、泣かれたら敵わないわよ』


 便利な容姿だな!



 それからエリザの言う通り、小一時間ぎゃあぎゃあと泣き続けた。


「……ひぐ、ひぐ……すう、すう……」


「……あ、あれ? お眠?」


「泣き終わると眠くなり、また小一時間待たされるんや」


 泣き疲れて寝ちゃうのかよ!


「ああ、そうや。無理矢理起こすとまた泣かれて、同じ事の繰り返しになるで」


 うぐっ。起こそうとしてたけど、思い留まる。


「…………エリザ、あんたの苦労がよーくわかるわ」


「……流石にウチでもリファリス様に抗議したさかいな」


 そうね。リファリスのからかいが原因だもんね。


「リファリス、余計なことをしないでよ」


『はいはい』


 今度からはエイミアの電撃で意識を刈り取る程度にしておこう。



「む……うにゅ……まだ眠たい……」


 寝起きも悪いのか。


「ほら、さっさと起きなさい。リファリスがお待ちかねよ」


 当のリファリスはテレフォン越しに、エリザと今後のことを話し合っている。


「うにゅ〜、あにゅ〜」


 エイミアが掛けてあげた毛布を掴んで離さない。


「あーもう、起きろっての」


「むぅぅ……あむあむ」


「あむあむじゃない! 起きろっつってんの!」


「あむぅー、むぅぅ」


「この…………! 起・き・ろおおおおぉぉぉぉっ!!」


「はきゃ!?」


 私の怒声に反応し、飛び起きる。そして。


 つるっ こてん


 毛布に縺れて倒れる。


「痛!?」


「え。ま、まさか」


「ぅぅぅ……うわああああああああん!」


 まだだぁーっ!


「あ、無理矢理起こしたらアカン。目ェ覚めた直後は極端にドジッ子になるんや」


 何よ、その寝起きだけの限定解除!!


「泣き終わるんに小一時間、寝るのも小一時間、寝起きで小一時間。こんだけ待たんと正常には戻らへんで」


 合計で約三時間。一回泣かせて回復させるまで、何てムダな時間がかかるんだろう。


「…………エリザ、できれば早く言ってほしかったわ」


「大丈夫や。ナバナ嬢ちゃんとの付き合い始めでは、誰もが通る道やさかいな」


 うん。やっぱ一撃KOで対処しよう。



 夕方になってナバナさんはようやく通常に戻った。


「済まなかったな」


「…………頼んますよ、ナバナさん……」


「いや、本当に申し訳ない。私も何とかならないかと訓練を申し出ているのだが、誰からも断られてな」


 そりゃそうだ。訓練中に泣かせちゃったら、それだけで半日潰れるしな。


「謝らなくていいんですよ! 悪いのはサーチなんですから!」

「その通りだと思われ。サーチ姉は極悪人だと思われ」

「…………」


 イラッ。


 どかばきめきぐきどがあ!

「「ぎゃああああ!」」

 どさどさっ


 ……たく。


「で、ナタ。あんたはナバナさん寄りは止めたんだ?」


「容姿に一瞬でも騙されただけ、ボクは未熟だってことだよ。くやしいなぁ」


 ……いまだに騙されたまんまのエイミアとリジーは、もっと未熟だってことね。


「いや、真に申し訳ない。以後気を付けるとしよう」


「以後気を付けるって……大丈夫なの?」


『大丈夫じゃないよー。あたしも百回はその言葉聞いたし』

「私もです。周りにもたらされる不幸を考えてくださいね」


 リファリスとエリザからつっこみが入る。おいおい、また泣くぞ。


「そう言うな。私も陰ながら努力はしているのだ」


 ウソつけ!


「リファリス、エリザ! その言い方は酷くありませんか!?」

「こんな可憐な少女に投げ掛ける言葉ではないと思われ!」


 おいおい、まだ騙されてるよ、この二人。


『酷い? この心臓に毛が生えた女がか?』

「二人とも、〝常勝〟の異名は伊達じゃないんやで」


「……つまり、精神的には打たれ強いってこと?」


『精神的に弱いヤツじゃ、司令官なんてやってられないわよ』


 そりゃそうか。


「その通りだ。司令官は兵士全員の命を背負う。生半可な精神力では耐えられんよ」


 なるほどねぇ。だったら言葉でボコボコにする分には問題ないってか。


「駄目ですよ! こんな小さい身体(・・・・・)でそんな無理をさせてはいけません!」

「そーだそーだ。ちっちゃな子(・・・・・・)は敬うべきであーる」


 あ。


「………………何だと?」


「「へ?」」


「今…………小さい、とか、ちっちゃな、とか、聞こえたが?」


「え」「あ」


「…………誰が…………誰が小さくてちっちゃなチビじゃゴラアアアアアアア!!」

「「ぎゃ、ぎゃああああああああ!」」

 ぼすっ! げしっ! ごすっ!

「ぐふっ!」「げふぅ!」「おぐふぉ!?」「げふぁあ!」


 うっわ、えげつな。鳩尾に集中砲火かよ。


「精神的には強いんやけど、キレるかキレへんかは別問題やな」


 ていうか、万国共通で「チビ」には耐えられないのね。


「チビとか考えてんじゃねえよゴラアアアアアアア!!」


「ぐふぅおうえ!?」


 な、何で私の考えてることがわかるのよ……がくっ。

閑話を挟んで新章です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ