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EP21 ていうか、エリザと談話。

「な、何であんたが捕まってるのよ!」

「な、何でサーチんが捕まえる側にいんねん!」


 私とエリザの叫びがハモり、狭い尋問部屋に響く。いきなりの展開に、案内してくれた兵士も目を丸くする。


「あ、あの……?」


「あ、こいつは私の友達なのよ。だから……十分ほど二人にしてくれないかな?」


「そ、それは……」

「そんな事ができるはずないだろうが!」


 戸惑う兵士にいきり立つ拷問係。ま、そりゃそうか。


「ちゃんとあとで閣下に話は通しておくから」


「いや、しかし」

「そもそも貴様は何なのだ! この女の友達だというのなら、貴様にも尋問せねばならんな!」


 そう言って拳を振り上げ。


 ボグッ!

「きゃふ!?」


 エリザの顔面に裏拳を当てた。それを見た瞬間に私は動き。


 ガッ! ゴスッ!


「ぶべっ!」


 拷問係が宙に舞い、コンクリートの床に叩きつけられる。


「な、何をなさ……うっ」


「最後まで話を聞きなさい」


 喉元に手甲剣を突きつけられ、兵士は動きを止める。


「が、がは……き、貴様、オレに手を上げてタダで済むと……!」


「私が友達だって言ってる相手に、目の前で暴力振るって生きてられると思った?」


 兵士に向けられていた手甲剣は、拷問係の背中へと移動し……。


 グジュッ

「うぐ!? ぐあああああああああっ!」


「あんたの背中に少しだけ手甲剣が刺さったわ。まだ序の口だけど」


 ズブブッ

「あ、あがが! がああああああああああああ!」


「ほーらほら、どんどん手甲剣が入っていくわよ。数ミリ先には大事な神経と太い動脈も。斬っちゃったらどうなるかしらね?」


 少しだけ刃先を動かして、神経だけを……。


 プツンッ

「あ゛!? ひぎゃああああああああ!」


「あーあ、神経が切れちゃった。相当痛いわねー。それに右手の感覚は無くなっちゃうわねー」


 さらに動かして、動脈を断ち斬ろうとしたとき。


「止めぃや、サーチん!」


「……エリザ。何であんたが止めるの?」


 大量に鼻血を垂らしながらも、私を見る眼力は凄まじかった。


「これ以上はマズいやろ。サーチんは東マージニアの人間なんやろ?」


「いえ、雇われてるだけよ。本職はキュアガーディアンズ」


「そっか。でも依頼主に牙剥くんはマズいやろ。その辺で矛納めたれ」


「……あんたね、そんなヒドい状態で言われたって、説得力のカケラもないわよ?」


「なーに言うてんねん。こんなんリファリス様の為なら、どうって事ないわ」


 リファリス? リファリス・リフター…………ま、まさか!?


「リファリスが〝不敗〟!?」


「そや。何や、今まで気がつかなんだんかい」


 そっか、リフターってリファリスの名字だったわね……。


「……ちなみにだけど、リファリスもエリザも前の世界の事は……」


「覚えてるで。でもサーチん、ここで話すんは少々マズいんとちゃうか?」


 あ、そうね。腰を抜かした兵士もいるし、半泣き状態の拷問係もいるし。


「別にいいわよ。だって」

 ザクッ! バシュ!

「ぐ…………っ…………」


「元々生かすつもりはなかったから」


 目の光を失った拷問係を見て、兵士は近くに立てかけてあった銃に手を伸ばし。


 ドグゥ!

「ごあっ!」


 私のミドルキックを脇腹にくらい、そのまま踞った。


「はいはい、あんたはエリザに手出ししなかったから、抵抗さえしなければ命までは取らないわ」


「ぐ、ぐぼぉ……」


「あーあ、もう少し加減せんとあかんて。その兄ちゃん、間違いなく内臓破裂しとるで」


 へ? そんなに強く蹴ったつもりは……あら。


「この血の量は…………しまった、手遅れね」


 口から大量の血を吐いたあと、兵士は動かなくなった。


「……あーあ、どないすんねん」


「どないすねんも何も、こうなったらどうしようもないわよ……ほら、ポーション」


「ポーションって……こっちの世界にもあるん?」


「前の世界でため込んでたヤツ。まだまだあるから遠慮は無しよ」


「するつもりないわ。痛くてかなわんから、早う頼むわ」


 エリザの頭からポーションをぶっかけて、拘束を解いた。


「……あれ? サーチん、そのポーションって一番安いヤツやな?」


「そうよ。十本で銅貨三枚の投げ売りの」


「そ、その割によう効くな。もう痛ないで」


「うん。何故か最近ポーションの効きがいいのよ。これも≪道具上手≫の影響かしらね」


「? 何のこっちゃ?」


「何でもないわ……さて、それよりも」


 死体が二つ転がってるけど、それを気にしなければナイショ話には最高の場所だ。


「あんた達は最初から火星に?」


「……いきなりやなぁ。まあええけど……そや。ウチもリファリス様も、気が付いたら世界が一変してたわ。これってサーチんが関わってるんやろ?」


「不本意ながらね。厳密に言うと犯人は〝知識の創成〟(アカデミア)よ」


「まーたあの似非神かいな……ええ加減にしてほしいわ」


「それで、最初からこの国に?」


「そや。何かした記憶もないのに、リファリス様は〝不敗〟とか言われてはるし……最初は訳わからなんだわ」


「でしょうねー。私は宇宙空間で船の中だったわ」


「宇宙……船どうやって操作したんや?」


「そのときは何故かマーシャンがメインコンピュータだったのよ」


「…………はあ?」


「だから、船自体がマーシャンだったのよ。だから勝手に航行してくれたのよ」


「あ、あれ? ならウチらが捕まえたマーシャンは誰なん?」


「それが今のマーシャン……ていうか! 何でマーシャン捕まえたのよ!」


「え? 何がマズいんや?」


「マズいに決まってるでしょ! 西マージニアはマーシャンを人質に取ったって大騒ぎよ!」


「人質って……当たり前やないか」


「はあ!? 人質が当たり前だっていうの!?」


「いや、そうやで。マーシャン放っておいたらまた逃げるやん」


「逃げるって………………逃げる?」


「そうや。マーシャンのヤツ、リファリス様の借金踏み倒して逃げてるんやで」


「借金!? いつ!」


「少し前やな。あれ、アンドロイドの集団亡命の時や」


 はああっ!?


「あのときは国家予算規模のお金持たせたのよ! それでも足りなかったっての!?」


「国家予算規模? マーシャンはスッカンピーや言うてたで」


 ウソつけえええっ!


「いい? 私達はこの額をマーシャンに持たせたのよ?」


 私は計算機に実際の金額を打ってみせる。


「何や何や…………んん? 一、十、百…………一千万、億、十億……ちょ、兆越えかいな!?」


「そうよ! これで足りない方がおかしいでしょうが!」


「……そやな。これは本人に聞いてみなあかんわ」



 こうして私達とリファリス軍は、内々に休戦を決めたのだった。

またマーシャンかっ!

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