EP15 ていうか、新体制始動。
無事に合流した私達は、ホントに久々の再会を果たしたわけなんだけど、リルのイタズラのせいで感動のシーンは単なるお笑いシーンとなってしまった。
「では行ってきます」
「みんな気をつけてね。相手はファーファだから、どんな手を使ってくるかわからないわよ」
「それはサーチ達にも言える事です。正面からぶつかる側も十分危険ですよ」
当初の打ち合わせ通り、リーダーの私とエイミア・リジー・ナタの四人が構成員の始まりの団チームと、新リーダーのヴィー・ナイア・エカテル・リルの四人が構成員の船の底抜きチームに分かれ。
「私達が最前線でファーファ達を引き付けるから」
「必ずマーシャンを救出してみせます」
陽動での敵の引き付け役を私達が担い、別動隊としてマーシャン救出をヴィー達が行う手筈だ。本来なら再会を祝して一杯飲んだり温泉行ったり温泉行ったり温泉行ったりするんだけど、マーシャンの命に関わる以上は急がないといけない。
「じゃあね」
「また再会しましょう」
私はヴィーとギュッと抱き合い、別れを惜しむ。
「気をつけなさいよ」
「サーチもですわ」
ナイアとも抱き合って別れを惜しむ。
「……ホントに登場シーンが少なめね」
「この段階で言う事ですか!?」
エカテルはお笑いの対象にして別れの寂しさを和ませる。
「バーカバーカ」
「にゃーにゃにゃーにゃ」
「ターニャまで私をバカにしだした!?」
リルはターニャちゃんにまでバカにされ、おもいっきり肩を落とす。
そんな寂しさとお笑いが漂うなかで、ヴィー達は旅立っていった……。
「……さーて! しんみりするのもここまで。今日から新体制なんだから、お互いに自己紹介といきましょう」
まずは……私から。
「みんな知ってるでしょうけど、リーダーを務めるサーチです。ポジション的には前衛から後衛までこなすオールラウンダーです」
「へ? サーチが後衛を?」
「最近銃を使い始めてさ」
「じゅう?」
「……あとで説明してあげるから。はい、次はエイミアね」
「あ、はい。ナタは初めまして、ですね。私はエイミア・ドノヴァン。職業はエレキマスターと言うらしいです。釘こん棒と≪蓄電池≫が武器です」
エレキマスターというのは「雷系に特化したサイキッカー」ということらしい。
「ちなみにエイミアは……」
「にゅ!?」
「パーティで一番頬っぺたが伸びます」
「みょーーーーんんん!!」
「あっはははははっ!」
ナタにはツボだったらしく、笑い転げてている。半泣きで電気を帯び始めたエイミアににらまれ、私は手を離す。
ぱちんっ
「みょ!? サ、サーチィィィィ!!」
バリバリバリバリ! ずどぉぉぉぉん!!
「あぎゃあああああ! こ、この展開も久しぶり……ね…………がくっ」
気を取り直して再開。
「次は……リジーね」
「うい。吾が輩はリジーである。名前はまだない」
「……リジーでしょ?」
「趣味は呪われアイテムの収集であーる」
「……磨くのも趣味ですよね」
「ポジションは前衛であります! バシバシと敵を葬るであります!」
「私も前衛で敵を葬るであります!」
「エ、エイミア姉! 私の番だと思われ!」
「ごめんなさい……サーチ、リジーの喋り方が前より変なんですけど?」
「エイミア姉に変人扱いされた!?」
「…………リジー、私に変人扱いされるのが、そんなにショックなの?」
「変人に変人扱いされるのが一番ショックしびびびびびびびびびぃぃ!?」
……ま、この二人はいつもこんな感じか。
黒焦げになったリジーを介抱してから、最後はナタ。
「は、初めまして、エイミア……さん。ボクはナタといいます」
「呼び捨てでいいですよ〜」
「そ、そう? ならエイミアって呼ぶね」
「なら私はナタりんで呼びます」
「いや、それはちょっと」
「うふふ、続きをどうぞ」
「…………ボ、ボクは銃が得意で」
「……えーっと?」
「あ、銃を知ら……ない?」
あ、そっか。この世界では、銃を知らないことのほうが不自然なんだ。
「エイミア、こういうの」
ズギュウン!
「きゃ!?」
「火薬や魔力を爆発させて、弾丸を飛ばすのよ」
「へ、へえ…………?」
いまいちわかってないみたいね。
「要はね、長距離武器だよ」
「……自動で発射する弓矢みたいな?」
「そういう認識でいいよ……って、エイミアって時代遅れ?」
「時代遅れ!? ちょっと酷くないですか!?」
いや、この世界では十分に時代遅れになっちゃうのよ。
「……もしかしてリジーもわからない?」
「わかる。大砲みたいなモノもある」
あ、そっか。リジーは暗黒大陸で私が大砲使ってたの知ってるし。
「た、たいほう?」
「……エイミアってアナログ? もしかしてテレフォンも知らない?」
「わ、わかりますよ! 念話水晶みたいなモノですよね!?」
「ね、ねんわすいしょう?」
あかん。この二人、会話が成立しないわ。
「ナタ、前も言った通り私達は……」
「あ、そうだったね。異世界からの生まれ変わりだったね。なら知識に違いがあっても仕方ないか」
「そうそう。ただエイミアがこの世界について何も学んでないのも事実だけど」
その証拠に、ヴィーやナイアはかなり理解してるし。
「そ、そんな事はありませんよ! 私だってちゃんと学んでます!」
「ちなみにだけど、誰から?」
「リルからです」
不安しかないんだけど!?
「ならエイミア、宇宙船ってわかるー?」
おお、ナタからの挑戦状。
「わ、わかりますよ! 宇宙船ってのは……」
「宇宙船ってのは?」
「……おっきい鳥の腹の中に入って飛ぶんですよね!?」
何よそれ!? 原始人が突然現代文化に触れた、みたいな反応!?
「お、おっきい鳥…………ぶ……あはははははははははは!!」
あ〜あ、完全にナタのツボに入っちゃった。
「…………」
で、完全にエイミアの逆鱗に触れちゃった。
「あはははははははははは! お、おっきい鳥……ぶはははははははは!」
……バリ……
「……リジー、逃げるわよ」
「うい」
「あーはははははははは! うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
バリバリバリ……
「……ナタ……」
「はははははははは……はい?」
「笑いすぎでえええええええすっ!!」
ずどどぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!
「ぴぎゃああああああああああっ!!」
……哀れなり、ナタ。それもエイミアと仲間になるための洗礼であろう。
エイミアは書いてて楽しい。




