EP21 ていうか、いきなりだな!?
「とりあえずマーシャンと合流しましょうか」
撤収しながら切り出す。
「まあしゃん?」
「私達の仲間。原初のアンドロイドって言えばいいかしら?」
「ま、まさか女王ですか!! ス、スゴい人が仲間にいるんですね!」
つい最近パーティを財政難に追い込んだ、大バカクソ野郎ですが。
「うわあ、楽しみだなあ! ボク、そんな有名人と仲間になれるんだぁ……」
……過度な期待はしない方が……。
「ま、とにかく東マージニアに向かいましょ。カイト、何も荷物はないの?」
「何もないよ。村にあった私物もアイテムポケットで送っちゃったし」
「ならまずは西マージニア国に戻って、電車の時間を見てみましょ」
「西マージニアに戻るという事は……また船ですの!?」
ナイアが蒼白になる。
「あんただけ飛んで帰ってもいいけど?」
「……そうさせてもらいますわ。ホウキよりもスピードが出せましてよ?」
そう言ってサイ・ハンマーに跨がる。
「ならワタクシはこのまま発ちますわ。先に戻って電車の時間を調べておきます」
「よろしくね〜」
そのままナイアは飛び立っていった。
「……い〜な〜、フライヤー。ボクも飛んでみたいな〜」
「そういえばあんたは職業は何なの?」
「ボク? 元はブラスター、今はブラッダーだよ」
ブラスター? ブラッダー?
「ブラスターは所謂ガンナーですね。ブラッダーと言うのは、サイキックの代わりに己の血液をエネルギーに変えて戦う職業です。一般的なサイボーグですね」
「つまり、サイボーグは全員ブラッダー?」
「そうなります。ファイターと同じく、サイキックを使わない職業ですね」
ま、サイキックの必要性ないわな。
「ガンナーもサイキックを使うの?」
「使えますよ」
……何でファイターになっちゃったんだろ、私。カイトじゃないけど、空を飛んでみたいもんだわ。
「あ、そうだ。ナイアに言い忘れてた」
「どうしたの?」
「月魔術だっけ? あまり人前で使うなって」
「え?」
「フライヤーは飛行することに特化した職業だから、風系のサイキック以外は使えないんだ」
え、そうなの?
「……確かにそうなっています。これは迂闊でした」
「……まあいいわ。あとで連絡しときましょ」
このとき、連絡をすぐにするべきだった……と後悔することになる。
借りた船で湖を渡る。歩くよりも何倍も早く移動できるのはありがたい。
「……サーチ姉、来た時より船が快調?」
「何故か、ね。こんなにスイスイ動いたっけ?」
湖面を眺めていたヴィーが、何かに気づいたように手を叩く。
「サーチ、この船も道具に分類されるのでは?」
「道具って…………あ、まさか≪道具上手≫!?」
道具って言うにはデカすぎない!?
「≪道具上手≫は船や自動車にも適用されるみたいですよ」
ヴィーは空中端末で検索している。最近検索魔と化してるわね〜。
「サーチ、前方から船! たぶん、西マージニアの警察だよ!」
警察!? イヤな予感しかしないわね。
「……リジー、ヴィー、一応いつでも戦えるようにだけはしてて」
「「了解」」
「警察から通信! えっとね……テ・イ・セ・ン・セ・ヨ・シ・ナ・ケ・レ・バ・ハッ・ポ・ウ・ス・ル……だって」
「停船しなきゃ発砲するぅ!? いきなりね……カイト、まだ≪化かし騙し≫は使える?」
「もう使えないよ。ボクはサイボーグになったんだよ?」
やっぱそうか。
「ならリジー、カイトを見えなくして。で、カイトは一番高い場所で待機」
「……撃つの?」
「私が名前を呼んだら撃って。場合によっては全員射殺しちゃって構わないから」
「りょーかい♪」
……嬉しそうね。
表面上はおとなしく従って停船する。すると私達の船に横付けした警察は、フル装備で私達の船に乗り込んできた。
「全員武器を湖に捨てろ!」
……はい?
「何なのよ、いきなり」
「全員武器を湖に捨てろ! じゃないと射殺する!」
「……ちょっと、理由くらい言ってくれてもいいんじゃない?」
「従うのか、従わないのか!?」
これは……何を言ってもムダか。
「カイト!」
ダダダダダダン!
「ぐふぁ!?」「ぎゃ!」「がはっ!」
ドサドサッ
カイトの銃撃が正確に全員にヒットする。お見事。
カチャ
私も銃を取り出すと、警察の船へ飛び移る。
……ガチャ
ドアを開くと、操舵室に三人くらい気配を感じた。この人数なら……!
ダンダンダン!
「ぎゃあ!」「うぐぁ!」
「手を挙げろ! じゃないと撃つわよ!」
「も、もう撃ってるじゃねえか……がくっ」
必死のつっこみありがとう。
「な、お、お前は!?」
「ちょーっとやり方が強引すぎやしない?」
「テ、テロリストが何を言うか!」
「誰がテロリストだってのよ?」
「お、お前らだ!」
「だから、誰がテロリストって言われることをしたってのよ?」
「お、お前達が中央政務局を爆破したのだろうが!」
「……は?」
「しらばっくれるな!」
「いやいや、しらばっくれるも何も、私達は昨日まで炭鉱にいたのよ?」
「……何?」
「何だったら船の運航記録を調べてもらってもいいわよ」
私に言われた通りに運航記録を調べて、警察官はがく然としていた。
「ま、間違いない。炭鉱から動いた形跡はない」
「記録を改ざんしているのでは?」
「いや、レンタルシップだからそれは不可能だ」
包帯を巻いた警察官達がガヤガヤと議論している。
「カイト、急所は外したんだ?」
「わざわざ殺す必要ないでしょ」
「確かにそうなんだけどね……あんたは嬉々として撃ち殺すと思ってたわ」
「サ、サーチはボクを何だと思ってるの!?」
私達の会話を聞いていた警察官の一人が、私達を凝視する。
「……今、カイトと言わなかったか?」
「言ったわよ。この子がカイト」
「ま、まさか暗殺者のカイト!?」
げ。
「あ、あんた有名だったの?」
「し、知らないよ!」
「……不味いですね。検索したら普通にヒットしました」
これは……ファーファが意図的に情報を流していたんだな。万が一歯向かわれた場合でも、身動きが取れないように。
「こ、この子はカイトじゃないわ。サーシャよ、サーシャ」
「はあ?」
「この子はカイト・サーシャって名前で、私達が勝手にカイトって呼んでただけ」
「ウソつけぇぇ! オレ達を撃ったの、そいつだろ!」
やっぱムリがあるかああ!
「ボ、ボクは違いますよ。だいたいサイボーグだし」
「ん? サイボーグ?」
「そういえば……カイトは狸獣人だったな」
「そうか、ならば違うな。申し訳なかった」
「いえ、大丈夫です」
結局運航記録が決め手となり、私達は無罪放免となった。撃っちゃった件に関しては、警察側の早とちりとヴィーの聖術でケガが完治したこともあり、今回は見逃してもらえた。
「いやはや、カイト……じゃなくてサーシャがサイボーグになってたおかげよね」
「そうだねそうだね! あんな強引にサイボーグ手術されるなんて、誰も思わないしね!」
「ま、いいじゃない。お前には立派な右腕があるじゃないか」
「うるさいっっ!」
本気で怒られた。
間一髪。




