EP19 ていうか、加入しての洗礼
「よっしゃあ! 無事に脱出!」
鉄屑と化したラスボスロボットの隣を通り抜け、私達は地上へと生還した。
と、同時に。
……ずずずぅぅぅん!
「あ、爆発だ」
ずずずずずずずずずず…………!
炭鉱ダンジョンはモノの見事に崩れ去っていく。
「律儀に仕掛けていってくださったのですね。どうやらあのロボットが破壊されたら、連動して爆発するようになっていたようですが」
ルーデルが倒したと聞いてから五分も経たず。速攻で脱出して正解だったわ。
「僅かなタイムラグが無ければ、ワタクシ達は土の中でしたわよ……何故ロボットの破壊と同時に爆破しなかったのでしょうね?」
「あ、それは対落盤装甲の影響だよ」
対落盤装甲?
「サーチ……だっけ? あなたが散々炸裂弾を投げてたのに、一度も崩落しなかったでしょ?」
「そうね。少しくらいは崩れるかな〜って思ってたんだけど」
「それがまさに対落盤装甲のおかげなんだよ。壁の表面に透明な装甲を張り巡らせることによって、落盤を防いでいるんだ。ただ設置費がシャレにならないから、普通はやらないけど」
「……何でここだけ?」
「最重要レアメタルが出ていたから」
「出ていたって……過去形ってことは、もう尽きてるの?」
「ボク達が洗脳される前にはね。閉鎖も検討されてたよ」
なるほどねー。対落盤装甲しちゃってたから、ずっと残ったままになってたのか。
「……はぁ。どうでもよくなった穴を埋めちゃうついでに、私達を処分する気だったのか」
「ボク達も含めてね……あー、命が助かったら、何か腹立ってきた」
「何に?」
「そりゃファーファに決まってる。数少ないタヌキ獣人を酷使したあげく、自分以外抹殺しようとするなんて……」
…………。
「ねえ、こう言っちゃあ何だけど」
「ん?」
「もう少し怒ってもよくない? 数が少なくなってたんなら、タヌキ獣人同士の絆も強かったんでしょ?」
「そうだね、強かったよ。だけどそれ以上にプライドが強かった」
「プライド?」
「ボク達の祖先が行った裏切り行為は、決して許されることじゃない。それはボク達も痛感してたから、今の自分達の境遇を甘んじて受け入れている」
ずいぶんとまあ、ストイックだこと。
「だけどそれ以上にボク達は仕事に対する誇りがある。暗殺なんて日の光を見ることがない生業だけど」
っ!
「だから仕事に殉じて命を落としても、それは仕方ないこと。ボク達はそう思ってる」
……。
「ボク以外のみんなも同じ。例え洗脳されていたのだとしても、暗殺という仕事の中で死ぬことになった。誉れとは思っても、恥とは思わない」
「…………なら何でファーファを許せないの?」
「それは簡単、ボク達を裏切ったから。ボク達はこういう境遇であるが故に、裏切り行為を絶対に許さない」
……そっか。
「わかった。あんたの復讐、私達も協力しようじゃない」
「ちょっと待って。これはサーチ達には関係ないよ」
「大ありよ。ねえ、みんな?」
「そうですね。私達を嵌めてくれましたし」
「随分と虚仮にしてくださいましたし」
「この恨み、命を頂戴して晴らさせていただきます……と思われ」
「はい、全会一致。というわけで、あんたが何を言おうがムダよ」
「何回も言うけど、ボクの意見は!?」
「多数決は民主主義の基本であります」
「だから、ボクはまだ仲間になったわけじゃ」
「一蓮托生であります」
「だから……!」
あーもー、めんどくさいわね。
「同じ暗殺者同士、仲良くしましょーよー」
「……っ……こ、この人、道理が通じないのかな!?」
「サーチですし」
「サーチですから」
「サーチ姉だから」
「諦めてるし!」
まだゴネるか。なら。
「ならギブアンドテイクでいきましょ」
「ギブアンドテイク?」
「あんたはファーファを殺したい。でも一人でブラッディーロアに相対するのは無謀すぎる。違う?」
「そ、それは、まあ……」
「一方、私達。やっぱりファーファを殺したいけど、手の内を知らないし人手も足りない。だからギブアンドテイク」
「……つまり、ファーファを殺すのに手を組まないかってこと?」
「そう解釈してもらっていい。今回のあんたの企みがどれだけ厳しいモノか、暗殺に携わっていたあんたならわかるでしょ?」
「…………」
カイトはしばらく天を仰ぐと、一度頷いてから。
「…………わかった。お願いします、助けてください」
「はーい、パーティ加入決定!」
「「「わー、パチパチパチ」」」
「ちょちょちょちょいちょいちょい! 何で協力関係からパーティ加入に飛ぶ!?」
「えー、パーティに入るんでしょ?」
「だ・か・ら! 話が飛びすぎだって!」
「ちなみにパーティに加入すると、キュアガーディアンズにも加入になります。つまり、ガーディアンズの支援が受けられます」
「う……」
「暗殺稼業のあんたなら、デカい組織の有無がどれだけ大きいことか、よくわかるわよね?」
「うう……むむむ……」
まだ悩むか。
「サーチ姉、ここは私が」
リジー?
「パーティに加入すれば、美味しいサーチ姉の血が飲み放題ぶぐふぉ!?」
「何を言い出すのよ、あんたは!?」
「入ります」
「って、入るんかい!」
「サーチの血、美味かったDESU☆」
「DESU☆じゃねえよ。ホントにDeathしてお星様にしてやろうか」
「じょ、冗談です」
たく。
「でもボクには何もデメリットはないけど、あなた達にはかなりのデメリットになるよ?」
「何で?」
「だって、ボクの顔はファーファに知られちゃってるわけだから、生きていると知られれば……」
「知られなければいいんでしょ? なら手はいくらでもあるわよ」
「はい?」
一旦街に戻り、ホテルに泊まる。
「ナイア、リジーと一緒に髪染め買ってきて。あとは適当に衣服も」
「わかりましたわ」
「らじゃあ」
二人が出ていったあとで……お楽しみターイム♪
「ヴィー、協力して。まずは素材を磨かないとね」
「そうですね。かなり長い間、入浴していないようですし」
「へ? な、なな何を?」
「ふっふっふ、仲間になったヤツはみんな通る道よ」
「な、何をするんです?」
「何って……裸の付き合い♪ ほら、剥いちゃえ〜!!」
「はいはい」
「え、ちょ、ま、い、いや、いやああああ!」
どぼおおん!
「ぶはっ!?」
ごしごしごしごしごしごしごしごし
「ちょ、じ、自分で洗え……ま、そこは……!」
「「…………」」
「な、何ですか、あんぐりして」
……ここまでやっといて何だけど……。
「……ヴィー、少し加減した方がいいわね」
「そうですね、逆に目立ちますね」
「???」
まさか、ここまで化けるとは……某アイドルのセンター張れるくらいになっちゃった。
「何より私よりデカいのがムカつく」
「サーチ、声に出てますよ」
めっちゃ美少女でした。




