EP16 ていうか、ですよね……
「サーチ、ロボットアームを傷口に」
「ほいほい」
「痛い痛い痛いいい!!」
「では……創造されし腕よ、新しき道しるべとなるべし。接続」
ジジジッ
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「……筋肉繊維クリア、骨身クリア、神経回路クリア」
「い゛だい゛い゛だい゛だいい゛だい!」
ジジジジジジ……
「……結合完了。最後に施術で生じた傷を治療します。≪完全回復≫」
パアアア……
「痛い痛い痛…………ふ、ふううう」
「もう痛くありませんね? 動くかどうか試してください」
ヴィーに言われてタヌキ娘はロボットアームに意識を集中する。
ウィィィィ
「て、手がぐるぐる回る!?」
ウィン ウィィィィン
「つ、掴める。感覚もある」
「触覚はありますけど、痛みとして強く感じる事はありません。ですからロボットアームで敵の攻撃を防ぐような事もできます」
「へええ」
「また、ロボットアームが損傷したとしても、血中の鉄分を取り込んで自動修復します」
「へええっ!」
「あなたは種族がサイボーグへと変更されました……サーチ、これで術式は完了です」
「ありがとヴィー……どう、その腕は? 以前よりよく動くくらいでしょ?」
「うん! スゴいです!」
良かった良かった、一件落着。
「じゃ、私達はこれで」
「うん、バイバーーイ…………何てわけあるかぁぁぁぁぁぁ!」
ダダダダダダダダダ!
「うひゃあい! あ、危ないわね!」
う、うわ。あのロボットアーム、銃が内蔵されてるの!?
「ボクの腕を勝手に付け替えて、はいサヨナラ!? それで済むわけないだろがぁぁぁぁぁぁ!」
ズドオン! ズドオン!
「な……! まさか大砲まで」
ドガアアアアン!
「あひゃああああ! ていうか、何で私だけえええ!?」
「元凶はあんただろがああ!」
キュイイ! ボフン!
「うわっぷ!? ネ、ネットまで発射できるの!?」
う、動けないい!
「ちょっと! ヴィー、ナイア、リジー、助けてよ!」
動こうとしているナイアとリジーを、ヴィーが制止した。
「サーチ、もう大丈夫ですから」
「何がよ!? あのタヌキ娘、私に銃口を向け………………あ、あれ?」
「きゅうう……」
ぶ、ぶっ倒れてる?
「貧血を起こしたんですよ。その銃弾の原料も血液の鉄分なんです」
……な、なるほど。あんだけバンバン撃ちまくれば、貧血にもなるわよね……。
「……輸血した方がよくない?」
「その方がいいかもしれません。かなりの血液が失われたはずですから」
タヌキ娘が目を回してから一時間。まだ目を覚ます気配はない。
「それにしても、どうしますの、この娘」
どうしますの、って言われても……。
「サーチ姉、傷モノにしちゃった責任は取るべき」
「傷モノって……私が悪いわけ!?」
「そういう意味ではなく、私達の連帯責任と思われ」
連帯責任……か。
「……そうね……」
「そうですね」
「ワタクシ達で面倒を見るしかありませんわね」
なら、連れていくしかないか。
「当分の間は私の仲間として……ていうか、リジー。大丈夫なの?」
「何が?」
「タヌキよ、タヌキ。あんたの大っ嫌いなタヌキ娘なのよ?」
「……? もう狸ではないと思われ」
へ?
「あ、そうですね。狸獣人ではなく、もうサイボーグですから」
……あ、言われてみれば、タヌキ獣人の特徴が無くなってる。
「サイボーグになるのって、完全な種族変更なのね……」
「そうです。そうなんです……!」
へ?
「ボク、完全に狸獣人じゃなくなっちゃったんです……!」
あ、あら? いつの間に起きてたのやら。
「どうしてくれるんですか、これ……!」
ジャキッ
ジャキッておい、何かミサイルの形に……!
「木っ端微塵に……して……はぅ」
はう?
「だ、駄目ですよ! ただでさえ血液が不足しているのに、こんなに嵩張るモノを作っちゃ……!」
「あ〜〜う〜〜」
……こいつ、バカだ。
「血〜〜血〜〜が〜〜足〜り〜な〜い〜」
そう言って私を見て。
シュン
へ!? き、消えた!?
「いっただきまーす♪」
は、背後に……!
カプッ
「いてっ!」
ちゅー……
「え、ちょ、ま、お前!」
ち、血を吸って……!
「何をしとんじゃおんどりゃああああああ!!」
べごしぃ!
「はぐっ!?」
キレイにアッパーカットがアゴに極まり、そのまま吹っ飛んで……。
シュン
カプッ
「んな!?」
「あー美味し。あー生き返る」
アッパーカットした右手に噛みつき、再び血を吸い始めた。
「ちょ、この!」
ばごし!
「へぶっ! まだまだ!」
カプッ ちゅー……
「こ、こらあ!」
どごっ!
「ぎゃぶ! ま、まだまだ!」
カプッ ちゅー……
し、しつこい……!
「ヴィー、これどういうこと!?」
「えーっとですね、サイボーグは自らの血液で身体を再構成できるが、その反動で常に血液が不足しがち。故に他者からの血液を採取し、自らの血液の代用とする事ができる……そうです」
じゃあ何、こいつって人造ドラキュラ!?
「吸う血液の量は微量である為、吸われた側に健康的被害はない……そうです」
肉体的健康には良くても、精神的健康には害悪だよ!
「ふはぁ……満腹満腹」
「ちょっと、微量でいいって割に、結構吸われた気がするんだけど?」
「微量……のはずです」
「さあ、これでミサイルいけます! これで木っ端微塵にはぎゃ!?」
「木っ端微塵にするな! ていうか、私の血で物騒なもん作るんじゃない!」
ハイキックでタヌキ娘は再び昏倒した。
「……じゃあ、あんたしか残ってないの?」
「はい。ボク以外は全員……」
元タヌキ娘が落ち着くのを待ってから、詳しい事情を聞いた。その際に狸獣人達の戦力を聞いた際に。
「……何人殺したか覚えてる?」
と聞かれ、倒した人数を伝えた際の答えが……これだった。
「ボク達は獣人達から爪弾きにされて、表の世界に居られなくなりました。だから裏社会で暗殺者集団として生きてきたんです。だけど段々と数も減っていって……」
でしょうね。裏社会は厳しいから。
「そんなボク達のリーダーとなったのが、ファーファだったんです……」
「ファーファも狸獣人だったんだ……」
「はい。ファーファはボク達を活用する事によって、裏社会をのし上がっていきました」
で、ついに血の四姉妹の一角にまで成り上がったのか。
「だけどファーファは段々と変わっていきました。一族のためにのし上がるんじゃなく、自分のために一族を使うように……」
ありがちねー。
「段々と反発するようになった一族に対してファーファが行ったのが……」
「……洗脳……ってことか」
元タヌキ娘は……って、名前聞いてなかったわ。
「ごめん、今さらなんだけど……名前は?」
「あれ、言ってなかったっけ。ボクはカイト。カイト・サーシャだよ」
……………………ん?
「……ちょっとごめんね」
むにゅ
「きゃあ! い、いきなり何だよ!」
……女……だよね?
あらら、カイトは女?




