EP13 ていうか、二丁拳銃?
再びダンジョン攻略を始める。
「フォーメーションを変えません?」
「……ナイア?」
「前衛にワタクシも参加しますわ」
「ナイアもって……じゃあ後衛は?」
「後衛は要りません」
……はい?
「昨日までの戦いでわかりました。あのロボット達は背後から襲う事はできません」
……はい?
「おそらくそのように設定されているのですわ。じゃないと後ろから撃てませんわ」
後ろからって…………そう言われてみれば。
「撃ってくるのは、必ず敵の後ろでしたね……」
「普通でしたら、あのような金属の壁にウロウロされては、邪魔で撃つに撃てないでしょう」
それでも後ろからしか撃ってこないのだから、ナイアの説の裏付けになる。
「ロボットの動向にさえ気をつけておけば、背後に注意を払わなくていいと」
「そうですわ」
「なら不意打ち狙いの狸は、私が必ず見つける」
リジーが断言してみせる。その目には確固たる決意が見られた。
「……大丈夫なのね?」
「うい」
「任せてもいいのね?」
「任せて」
「……わかったわ」
私はリジーの肩に手を置き。
「リジーは今日は待機」
「えええええ」
「冗談冗談。タヌキの気配を察知できるのね?」
「うい。狸の≪化かし騙し≫の独特な魔力の波長を覚えた。だから大丈夫」
……よし。
「わかったわ。今日からリジーにはトイレ掃除全般任せる」
「えええええ」
だから冗談だって。
実際に何度か戦ってみて、ナイアの言っていることが正しいことが証明された。ロボット達は私達の背後に回ろうとしないのだ。
「前からしか攻撃してこないってわかってれば、これほど楽なことはないわね」
背後はリジーが気にしてくれてればいいんだから。
「ロボットとの戦いにも慣れてきました。パターンがありますね」
「ま、自分で考えて動いてるわけじゃないしね」
この炭鉱ダンジョンは普通のダンジョンと比べて、階層というモノがない。つまり変化がないわけで。
「階層が変わるとモンスターもガラリと変わるのが普通だから、ずっと一緒なのはありがたいわ」
つまりワンパターンな動きしかしないロボット達しか襲撃してこないのだ。こりゃ私達には有利だわ。
「罠もパターンがあるみたいだし……よし、この際は進むスピードをさらにあげるわよ。ただし、油断はしないように。リジーみたいな失敗はダメよ」
「サーチ姉ぇぇぇ」
リジーの情けない声に、全員が笑った。
と、そのとき。
「……! サーチ姉、私の後ろ。今三人くらいいる」
ナイス、リジー!
ダダダダダダダダダダダダ!
「「「ぐあああっ!」」」
何もいないはずの空間にマシンガンをブッ放すと、空中から血が吹き出す。やがてタヌキ達が姿を現し、そのまま倒れて絶命した。
「……お見事ですわ」
「見事もクソもないわ。マシンガンなんだから撃てば当たるわよ……チェ、弾切れだ」
一番の弱点は弾の消費量がハンパないこと。無用の長物と化したマシンガンを魔法の袋に放り込み、ため息をついた。
「弱りましたね。マシンガンみたいな武器は、見えない敵には有効ですし」
相手の武器が銃じゃなければ、直接斬りかかれるんだけどな。
「……サーチ姉、狸から弾をいただいたら?」
「ダメダメ、弾のサイズが違う」
「なら狸の銃をそのまま使えばいいのでは?」
「これは単発式だから、マシンガンみたいなわけにはいかないわ」
……でも貰っとこう。売ればなかなかの値段になるし。タヌキ達が持っているモノを剥ぎ取る。
「手伝いましょうか?」
「大丈夫大丈夫。金目のモノだけだから…………ん?」
そんな中、見たことがない銃を発見した。
「これは……小さい銃ですわね」
弾が入っても二〜三発くらい。リボルバー式のデリンジャー銃だ。
「これは……ちょっと使えないかな」
リボルバーを外して装填できる弾数を確かめ…………あれ?
「あ、穴が無い?」
「はい?」
「た、弾を入れる穴がないのよ。その代わりに魔石が詰めてある」
「……見せてもらっても?」
ヴィーが手に取る。リボルバーを戻して構えてみる。
「……どうすれば撃てるんですか?」
「引き金を引けば撃てるわ」
ばぁん!
「きゃっ!?」
ヴィーが引き金を引くと、青白い光が砲身から放たれた。撃った本人は唖然としている。
「な、何ですか、今の」
「何ですかって……銃を撃ったのよ」
ヴィーから銃を受け取り、リボルバーを外すが……あれ? 弾が減ってない。
「……わかりましたわ。その銃、魔石に魔力を充填して、魔力を放つのですわ」
弾がめり込んだ壁を見ていたナイアが呟く。
「魔力を?」
「ええ。現代技術とワタクシ達の魔術が交わった結果、生まれたモノでしょう。今使っているサイキックライトと理屈は同じですわ」
サイキックライトってのは……要は魔力充填式の懐中電灯だ。
「なるほど。魔力が尽きない限り、永遠に撃ち続けられる銃ってことね」
「……ワタクシも試してみますわ」
ナイアに貸す。壁に銃身を向け、引き金を引く。
ばぁん!
「きゃ!? す、凄い反動ですわね」
一発撃っただけで手が痺れたらしく、ナイアは銃を落とした。
「これは……ワタクシには無理ですわ」
ヴィーとナイアは一発の威力がスゴいが、その分反動がキツいみたいだ。
「サーチ姉、私もいい?」
「いいわよ」
今度はリジーが撃ってみる。が。
カチッ
「あれ?」
カチッカチッ
「……撃てない」
「あ、そうか。呪われアイテムじゃないわ」
リジーは呪われアイテム限定だったわ。
「……返す」
リジーはつまらなそうに私に銃を投げた。撃ってみたかったのかよ。
「……なら今度は私が……」
たぶんヴィー達は魔力配分を間違えたのではないだろうか。威力はそんなにいらないから、殺傷能力を最小限に絞り込んで撃てば……。
「……これくらいかな。えい」
ダン!
お、いい感じ。反動もない。
「サーチと相性がいいみたいですわね」
……相性がいいって言われても……しょせん単発のリボルバーじゃ、弾数は限られ……ん?
「……そうか。魔力が弾なんだから、弾数は気にしなくても……」
マシンガンのイメージで引き金を引く。
ダン! ダン! ダン!
よし、いけそう。これをもっと早いイメージで!
ダダダダダダダダダ!
「……よし! これ、マシンガンみたいに使えるわ!」
魔力を絞って撃てば、かなりの弾数が撃てる。案外便利ね、これ!
「これ私が貰うわ! あ、もう一丁ある。もしかして両手でマシンガンいけるんじゃない!?」
ダダダダダダダダダダダダダダダ!
「うわゎ、これメッチャいいわ! あははははは!」
ダダダダダダダダダダン! ダダダダダダ!
「あははははは! それそれそれそれー!」
「「「……」」」
結局魔力が尽きるまで撃ち続けた私のせいで、今日は少ししか進めなかった。ごめんなさい。
小型リボルバー式のマシンガン。反則です。




